第一章 箱庭世界(2)
結局、軽くシャワーを浴びたり朝食を取ったりなどで、ヘキサが本格的に行動を開始した頃には、起きてから三時間ほどが経過していた。
がやがやとした活気のある街並み。剣とか杖とか弓とか鎧とか。現実だったら速攻で警察に通報される格好をした人々で、ドゥナ・ファムは賑わっている。
マリーゴールドの職員が言うには、いまが一年でもっともドゥナ・ファムが活気に満ちているらしい。それというのもこの時期が、ヘキサのような新規者の『補充』が行なわれる時期だからである。
普段、第0界層であるドゥナ・ファムにはあまり人はいないのだが、彼ら新規者目当てで多くのプレイヤーが集まっているというわけである。
周囲に目をやれば、自分と同じような格好――つまり、初心者装備を身に纏ったプレイヤーの姿がチラホラとあった。彼らが目指す場所は自分と同じようだった。
人の流れに沿うように歩くこと十分。遠くのほうに目的の建物が見えた。
ヘキサの視界に飛び込んできたのは、周りの建築物よりも大きな白い円形の建物だった。入り口の両扉の上には、天秤を象ったレリーフが彫られている。
ここはヘキサたちプレイヤー――探索者の支援施設、マリーゴールド。秩序を表す天秤は、マリーゴールドのシンボルである。
他のプレイヤーに続いて中に入る。どことなく市役所に似た雰囲気の広い室内には、たくさんのプレイヤーの姿があった。
円形の内部は四階構成になっていて、人々が螺旋階段を行き来している。建物の中央部分は吹き抜け構造で、天窓から差し込む陽光が、フロアを明るく照らしている。
マリーゴールドでは、レベルアップ。ドロップ品の鑑定と換金。クエスト。などの、迷宮を攻略する上で必要な事柄を一手に担っている。
どうやらタイミングがよかったようだ。思っていたよりも空いている列に安堵すると、後ろに並んで自分の番を待った。
「ユニオンにようこそ」
程なくしてカウンターの前に立ったヘキサを迎えたのは、支給された濃紺色の制服を纏った受付嬢だった。豊かな金髪を揺らしながら目を細めて柔和な笑顔を作っている。
【識別】スキルが反応して、金髪の受付嬢に緑色のカーソルが重なった。
ファンシーではこのマーカーの色によって、その動的オブジェクトの属性が一目で分かるようになっている。緑はNPCで青はプレイヤー。黒はモンスターを表しているのだ。そしてあと二色、紫と赤があるのだが”幸い”にもヘキサは、どちらのカーソルにもまだ一度も遭遇したことがなかった。
「システムブックをこちらに翳してください」
受付嬢に言われたとおりヘキサは、システムブックを取り出すと、机の上に置かれた金属板の上に翳した。金属板から発せられた光が、”本”の表面をなぞるように上から下に走った。
「――はい。確認しました。アカウントD000154、ヘキサ様ですね」
手元の画面に視線を落とした受付嬢が言った。
いまのは”本”を使用した探索者の個人識別である。マリーゴールドではこのように身分証明書として使われているのだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「えっと、生命循環と換金をお願いします」
「承りました。少々お待ちください」
と、受付嬢は画面を操作し、机の上に細長い棒状のモノを置いた。六角形のそれは金属製のようで、端のほうに『28』と書かれたタグがつけられている。
「こちらをどうぞ。場所は三階の28番になります」
システムブックを消し、金属棒を受け取る。ありがとう、と受付嬢にお礼を言うと、彼は踵を返して受付を後にした。
螺旋階段を上り三階に着くと、周りを見回して28の個室を探す。
三階には等間隔に扉が並んでいた。扉には番号のプレートが打ちつけられていて、その下には六角形の穴が開いている。
ヘキサは目的の個室を見つけると、六角形の穴に金属棒を差し込んで回した。カチリ、と小さく音が鳴り、扉が自動で開く。
中に入るとまず、椅子に座る濃紺色の制服を纏った女性の姿が目に入った。彼女の前には丸いテーブルがあり、その上には透明な水晶球があった。
「いっらっしゃーい。ほら、座って」
赤いショートヘアの女性はそう言うと、対面の椅子に座るようにヘキサを促した。さきほどの受付嬢とは違い、やたらフレンドリーな職員だ。
促されて一歩足を踏み出すと、扉が勝手に閉まる。
同時に個室に組み込まれている付加魔法が発動した。透視と盗聴を遮り、探索者の個人情報の流出を防ぐための結界である。
これでこの部屋は、外部からは完全に隔離されたことになる。
レベル、ステータスやスキルなどの情報は、プレイヤーにとっての生命線。その情報はときに生死にも直結しかねい。
それ故に決して情報が他人に知られないように、三階の個室すべてに結界が組み込まれているのだ。
「その……よろしくお願いします」
椅子に腰を下ろすと、小さく頭を下げる。
「ふふっ。そんなに緊張しなくても大丈夫だから」
未だに慣れていないのか。若干、緊張した様子のヘキサに、ショートヘアの女性はクスクスと笑いを洩らした。
「はい。それじゃあ、指輪を見せて」
言われて女性に左手の中指の指輪を見せた。彼女は彼の左手を掴むと、前のめりになって指輪を覗き込んだ。鉛色の指輪には黒い石が嵌められている。よく見ると黒い石の内部に、なにやらキラキラとした輝きがあるのがわかる。
その輝きを見た女性は唇を尖らせた。
「うーん。成り立てにしては、そこそこ溜まってるわね。……君、しばらくここに来てなかったでしょう」
「うっ。……あの、はい。そうです」
ひんやりと女性の手の感触に、どもりながらもなんとか言葉を返す。
しばらく――といっても、三日くらいなのだが、確かに狩りで疲れて後回しにしていたのは事実である。
「もうっ。駄目よ。面倒でもちゃんと小まめに循環させないと。特に貴方みたいな初心者は、するしないが生死をわけるときだってあるんだからね」
「はい。すみませんでした」
ジト目で見られて素直に反省する。
「わかればよろしい。……じゃ、ちゃっちゃとやって、終わらせちゃいましょうか」
言って、片手をヘキサの左手に添えたまま、もう片手を水晶球の上に乗せた女性は、集中するように目を閉じた。
ヘキサの身体に変化が生じたのはその直後だった。左手の指輪を通して自分の身体に、”熱”が流れ込んでくるのが知覚できる。
指輪から流れ込んでくる”熱”は、身体の中を循環すると自身の血肉となり、黒髪の少年をより強靭な存在に変換する。
この世界のすべては生命子により構成され、あらゆるモノは生命子に還元される。プレイヤーの分身のアバターもまた、生命子による構成体である。
いまヘキサが吸収した”熱”は、指輪に溜めた彼が倒したモンスターの生命子である。プレイヤーは倒したモンスターの生命子を吸収することで、自身の限界値を上げていくのだ。
彼らが生命子を『経験値』と呼ぶのはそのためだ。そして、生命循環とは指輪に溜めた生命子を自身に転換し、吸収させる作業のことである。
「ほい。終わりっと。……あ、レベルが2も上がってる」
生命循環を終えて、水晶球を一瞥した女性が言った。
仄かに光る水晶球には、ヘキサのアバター情報を映し出されている。そこに表示されているレベルが、7から9に上がっていた。
「おめでとう。でも、これからはちゃんと溜めずにこようね」
再び忠告されてヘキサは、多少気まずそうに頬を掻いた。
ファンシーにおけるレベルとは一言で述べるならば、内在する生命子の量である。
ある一定基準の経験値――生命子を吸収することでレベルアップする仕組みになっていて、当然、高レベルになるほど次のレベルまでに要求される経験値が増えていく。
ヘキサはまだ初心者なのでレベルが上がり易いのだが、それでも一気に2も上がるということは、それだけ生命子を溜めていたということだ。
「……気をつけます」
「うん。そうしなさい。では、これ生命循環は終了ね。そうそう。ステータスポイントは忘れずに振っておくんだよ」
「わかりました。それじゃ、また」
またねー、と手をひらひらとさせる職員に礼を言い、ヘキサは部屋から退出した。
背後で閉まる扉を見やり、次いで首を巡らして辺りを見回した。周囲に人の姿がないのを確認すると、壁に背中を預けて再びシステムブックを取り出す。
”本”を捲り、アバター情報の頁を開くと、空中にウインドを展開する。
画面にはプレイヤーの名前とレベル。各ステータスのパラメータ値が表示されている。
ステータスウインドの情報から、5ポイントがステータスに割り振られずに残っていることがわかった。
ファンシーは、ネットゲームでは典型的なスキル制とレベル制の併用型で、レベルが上がると生命子の最大値が上昇し、それとは別にステータスポイントを得られる。
レベルアップにつき得られるポイントは5。プレイヤーはそのステータスポイントを、体力・筋力・敏捷・知力・精密のどれかに振り分けて自身を強化していくのだ。
黒髪の少年は幾ばくかの黙考の後に、3ポイントを筋力に割き、残りのポイントを敏捷に割り振った。素早くポイントを振り分けると”本”を消し、今度は換金のために螺旋階段を目指して歩き出した。
換金所のある二階に着くと、三階と同じように等間隔に並ぶ扉が目に入った。二階には迷宮探索で手に入れたアイテムを鑑定・換金する施設が揃っている。
違うのは並ぶ扉とは別に、簡易的な換金を行なってくれるカウンターがあることだ。
レアアイテムや他の人に見られたくない取引の際には個室――三階と同様の仕組みが施されている――を、換金さえできればいい場合は、このカウンターを利用するのである。
「どうも。換金お願いします」
両開き窓の中にはこれまた、整った容姿をした職員がいた。
ヘキサは職員の女性に挨拶すると、予めシステムブックから取り出していたカードをまとめて実体化させた。
小ぶりの爪と牙。それよりも大きな牙に斑色の毛皮。それと白いケースだ。ケースの中には濁った色をした小さな石のようなモノがたくさん入っていた。
魔石である。魔石とは生命子の結晶。内部に蓄える元素の混合率により価値が異なり、純度が高いほど輝きと透明度が増し、内包されている力も大きくなる。
倒したモンスターが消滅するときに、ときどきその場に残すドロップ品だ。爪や牙、毛皮もモンスターから入手した素材アイテムである。女性は提示されたアイテムを回収すると、自分の横に表示させたウインドで価格を算出する。
これらのアイテムは換金所だけではなく、プレイヤー同士での売買も可能である。換金所は相場の平均額で計算してしまうので、価値の高いアイテムはプレイヤーと売買したほうが高値で売れる場合が多い。ちなみに街で店を構えるNPCとも取引は可能である。
まあ、初心者であるヘキサはそんな価値のあるアイテムを持っているわけではないので、こうして換金所でまとめて売ってしまっているわけだが。
そんなわけでカウンターに置かれた銅貨を特に文句なく受け取ると、いつものように礼を述べる。これでマリーゴールドですべきことはすべてした。
後は馴染みの店で消耗品を購入して、今日の狩りに出発するだけである。よし、と自分に気合を入れて、ヘキサはマリーゴールドを後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
千界迷宮1層『常世の森』は、その名前のとおり大半が鬱蒼と茂る森と見晴らしのいい草原の界層である。
探索者になりたての初心者がはじめに踏み入る界層のためか、攻撃的のモンスターは少なめで、こちらから手を出さない限りは安全な非攻撃的のモンスターが多く配置されている。
とはいっても、ホーンベアのような凶暴なモンスターもいるので、あくまでも他の界層に比べたら少ないくらいの認識のほうがいいだろう。
「……見つけた」
大きな樹から顔を覗かせて、様子を伺っていたヘキサが小さくつぶやいた。
彼の視線の先には、ずんぐりとした体を丸めて、鋭い爪で樹の根元を掘り返しているモンスターの姿があった。
額から角を生やした熊。ホーンベアである。【識別】スキルにより角熊に黒いカーソルが重なり、頭上に緑色のHPバーが出現。さらに『情報解析+0』の追加効果により、ホーンベアの詳細情報が記述されたウインドが右横に表示される。
換金して得たリラでポーションなどの消耗品を買い揃えたヘキサは、当初の予定通りその足で千界迷宮の探索にきていた。
ヘキサの視界にいるホーンベアは一体のみ。【索敵】スキルに引っかかる敵影も他には存在していない。念のために視線を左右にやり、他のモンスターの気配がないかを確かめ、彼は背中の大剣の柄を右手で掴んだ。
昨日まではクルシスというモンスターの子供を主に狩っていたのだが、今日はリベンジの意味も含めて、ホーンベアの生息地でレベル上げをするつもりでいた。
角熊は地面を掻き分けるのに夢中で、まだこちらに気がついていないようだ。いまが先制のチャンスである。
黒髪の少年は深呼吸し――大剣を抜いて、樹の影から飛び出した。
「<衝波>ッ!」
【方術】スキル、<衝波>。【片手剣】スキルの熟練度が10になって習得した、初歩的な外力術式である。
上段から振り下ろした大剣から放たれた、赤い衝撃波が無防備なホーンベアの横っ面に命中した。不意を突かれた角熊は、ギャウッ!? と甲高く叫ぶと大きく体勢を崩して、樹の幹にその巨体を打ちつけた。巨木が揺れて、無数の木の葉が散る。
HPバーを二割ほど減少させたホーンベアが体勢を立て直すより早く肉薄すると、間髪要れずに大剣を薙ぎ払う。
肉厚の刃が角熊を切り裂き、傷口から流れる血が刀身を赤く濡らす。肉を裂く金属の感触に悶え苦しみ、やたらめったらに爪を振り回すが、黒髪の少年にはカスりもしなかった。
右からの一撃を大剣の刀身で防ぎ、次の下からの掬い上げるような攻撃を、焦らずに軽い身振りでかわす。こちらとて昨日のような疲労困憊ではないのだ。気合も十分。こんな大振りの攻撃に当たってやるわけにはいかない。
相手の行動を見て、的確に一撃を叩き込む。大剣による重い攻撃を浴び、目に見えてホーンベアの動きが遅くなる。誰の目から見ても息も絶え絶えで、口からは大量の唾液が流れ落ち、地面にボタボタと音を立てて垂れている。
「これでどうだっ!」
身体を駒のように回転させる。遠心力が加わり破壊力を増した一撃が、腕を振り上げた角熊の胴体に深々と食い込んだ。
ぐぐっと削られるHPバーが警戒色の黄色を飛び越え、危険域を示す赤色に変化し――だが、ホーンベアは倒れなかった。見れば後、数ドットのところでHP減少は止まっていた。
怒りに満ちる濁った瞳で黒髪の少年を見下ろし、最後の悪足掻きとばかりに腕を振り下ろした。爪の軌跡の先には、ヘキサの頭部があった。まともに喰らえばただではすまない。下手をすれば致命傷になりかねない事態を前に、ヘキサは逆に一歩前に踏み出した。
「――あああああっ!!」
気合一閃。渾身の力で身体を捻り、ホーンベアの胴体に食い込んだ刀身を振り抜いた。
吹き上がる鮮血にホーンベアの断末魔が重なった。頭部を粉砕せんとする一撃は狙いを逸らし、ヘキサの頬に浅い爪跡を残すに留まり、角熊の巨体が地面に崩れ落ちる。
今度こそHPバーを失い末端から光の粒子に変換されるモンスターの亡骸を見やり、ヘキサは詰めていた息をぷはぁっと吐き出した。
最後の交差は危なかった。紙一重のタイミングで退けたが、一歩間違っていたらどうなっていたことか。やっぱり、まだまだのようだ。
しかし、それでも昨日に比べたら安定している。体調が万全とはいえ、最初の<衝波>以外に、方術なしでいけるとは思わなかった。
ホーンベアの動きを事前に把握できていたというのもあるが、やはりレベルアップによる基本性能の向上は大きいようだ。
こんなことならサボらずマリーゴールドに行けばよかったと反省する。などと、油断したのがいけなかった。
ガサリと葉の擦れ合う音がした。一瞬遅れて【索敵】に映る敵影が二つ。背後の物音に振り返ったヘキサが見たモノは、こちらに向かって突進してくる二体のホーンベアだった。
どうやらいま倒したホーンベアの断末魔に引き寄せられたらしい。今度はこちらが奇襲される番だった。
角に串刺しにされなかったのは偶然に近かった。反射的に自分の身体の前に翳した刀身の腹が、奇跡的に一本角による突進を受け止めたのだ。
火花が飛び散り、金属同士がぶつかったような炸裂音が、森の中に響いた。なんとか串刺しは避けたものの、突進による速度と体重差まではどうにもできなかった。
大きく後方に吹っ飛ばされ、背中から樹に叩きつけられた。肺の中の空気が吐き出され、口からかはっと声が漏れた。自身のHPバーが僅かに減少するのが見えた。
衝撃で息が詰まり、身動きがとれない。しかも、最悪なことに堪えきれずに柄から手を放してしまった。揺らぐ視界には、もう一体の角熊が突っ込んでくるのが映った。
四足で地面を蹴りながら突進してくるホーンベアの角が、ヘキサの胸を貫く――その刹那、彼は反射的に<息吹>を発動させた。
【体術】スキルの熟練度を上昇させてはじめに覚えた内力術式。<息吹>による効果で、身体に力が戻る。
咄嗟に屈む。一瞬前までヘキサがいたところを角が通過し、樹の幹に根元まで突き刺さった。突き刺さった角が抜けないのか、ホーンベアがジタバタと暴れている。
そのまま地面に手をつき、前転の要領でホーンベアの懐から抜け出すと、跳躍して地面に転がった大剣に手を伸ばした。
ヘキサを跳ね飛ばしたほうの角熊がその動きに反応するが、<息吹>により身体能力が向上している彼のほうが早かった。
柄を掴むのと同時に剣を振り抜く。空気を震わせ発生した衝撃波が、傍まで近づいていたホーンベアに直撃した。
怯んだ隙を逃さず追撃の刀身を叩き込む。そこでようやく樹から角を抜いたホーンベアが、怒りの咆哮を上げてヘキサに襲い掛かった。
ヘキサは振られた腕の軌道を読むと、直前で身体を反転させた。唸りを上げる爪は黒髪の先端を削り、彼の背後にいた角熊の顔面を切り裂いた。
同士討ちするモンスターから距離を取り大剣を構える。
いける。方術を駆使して戦えば、複数を相手にしても引けをとらない。ホーンベア二体を同時に相手しながら、ヘキサは内心でそう判断した。
現在ヘキサが使用可能な方術は、<衝波>と<息吹>の二つ。
生命子を衝撃波として放出する<衝波>と、生命子を活性化させ身体能力を強化する<息吹>は、外力系と内力系それぞれの方術の最も基本的な技である。
角熊の咆哮が森に響く。大剣による攻撃でHPを全損させて絶命した二体のモンスターが、生命子の光に変換される。その場には魔石と牙がドロップされている。
「ふう。これならまだまだいけるな」
<息吹>による活性化の余韻に身を引き締め、大剣を背中の鞘に戻すヘキサ。
飲み干したポーションの空き瓶を放り捨て、自分のHPが全快するのを確認すると、ヘキサは次の獲物を求めて森を徘徊した。