46_なにが言いたいねん
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あんなことがあった夜だからこそ、居酒屋TOKYOに来た。小野田くんも一緒にいる。
「本当にこんなことになるなんて驚きでしたね。」
私は返す言葉が思いつかない。今回の騒動の被害者は、全て私が最近かかわった人たちだったからだ。
「3人の子どもたちが見つかって本当に…よかった。」
今でも震えが止まっていなかった。その間も小野田くんは、大丈夫ですよと声をかけてくれていた。
というか、私が必死になって探している時から励まし続けてくれて、涙ながらに小野田くんについて行くと始めの2人を見つけることができた。
見つけて安心した私を見て、小野田くんは急にどこかに行ってしまった。ここに子どもたちがいるのにどうして。
小野田くんが連れてきたのは、近くの公園で遊んでいたミニシパル校のジョング先生の末息子さんだった。
そんなことを思い出していると、彼は急に話し始めた。
「僕小さい頃、孤児院で育っているんですよ。名前は与えられませんでした。
その頃から、雑用、荷運び、夜の市場で皿を洗って働いていたんです。言葉を習う機会がなくって、魔法労働が必要でした。仕事終わりの夜の広場が僕にとっての癒しでした。今日はそれを思い出して。」
私が生まれた国は幸せに見えて、それほどまでに途上国だった。
だから教育が追い付いていない。だから農村部の教育の質をあげないといけないと思っている。
小野田くんの過去に言葉が出ないままでいた。私は知っていた、この国の孤児院のひどい状況を。
そこにいる子たちは毎日働き、お金になる魔法のみを孤児院で習い、また働く。
そこから抜け出した小野田くんの苦労は計り知れない。だからこそ、
「今日見つかった3人の子どもたちの共通点はわかりますよね?」
小野田くんは、聞こえなかったかのように話す。
「古い新聞の切れ端を見つけたんです。 シン王国で労働者を募っていると書かれていました。給料がいいことは知っていたんです。
国境の夜は冷たかった。向こうで魔法を使う機会は一気に増えました。工場で朝から夜まで同じ魔法を繰り返していました。
この国に戻ってこれて、僕幸せです。ジャム共和国で使われる魔法は桁違いです。」
小野田くんがなにを言いたいのか、わかるようでわからない時間が続く。
「この魔法は絶対に伸ばしていかなくてはいけないと思います。もっとずっと未来のレベルになるまで。
アビさんたち賢聖の皆さんが、この国で1番魔法のすごさを感じているんじゃないんですか?
ジョールさんは、きっとわかっていると思います。」




