41_ごめんやって携帯するから
実家のお昼を食べながら、ウーリーさんの報告を聞く。
せっかく地元に戻ってきていたから、研修課の「東〇進プロジェクト」とカリキュラム課から配布した「算数ワークブック」の進捗確認をお願いしていた。
「そんなご飯時に仕事の話したらんでもええやないの。まずは食べなさいんか」
「そうやでアビ。すぐ仕事するんやから。ウーリーさんかわいそうやん」『かわいそう~』
母からの一言に、それもそうやと思いなおす。気づいたら日本人、というよりもブラック教員の癖が出てきてしまっているみたいだった。
今日のお昼ご飯も小さい頃からよく食べていた、油でいためたタイ米のような米に、これまた野菜や魚で煮込まれたソースがかかっている大皿。
もちろんソースには、油とスパイス、塩分たっぷり。
母と父、ウーリーさん、私、姉のンダイアワ、甥っ子たちで囲んでいる。
さすがにお客さんであるウーリーさんにはスプーンを渡しているが、家族は手で食べる。
「ウーリーさん、うちのアビがお世話になってます~うちの子大丈夫なんやろか。ポルタブルちゃんと携帯してます?」
「いえいえ、こちらこそです。アビさんの仕事ぶりは見てて勉強させてもらうばかりで。ただポルタブルは携帯されることの方が少ないですね。」
「ほおらやっぱり。言うたやろ、こんだけ連絡こんのはポルタブル持ち歩いてないって」
「ハッハッハッ」
もう勘弁してくれ。お父さんわろてる場合ちゃうねん。自分でも困ってる。
でも、ウーリーさんが楽しそうにしてくれていてよかった。
ウーリーさんの実家は、ジャム共和国の中でも一番首都から遠いらしく、なかなか帰ることができないらしい。
こんな実家でよければなんぼでも来て、ゆったり過ごしてほしい。
食後に濃ゆいカフェを飲みながら、さっき聞きたかった「東〇進プロジェクト」と「算数ワークブック」の状況を聞く。
いざ聞いてみると、やっぱり難しいものがあった。
「東〇進プロジェクト」は、街のみが対象になっていて肝心の農村部まで、魔道具が普及してないのだとか。
配られてないのかと思いきや、農村部の教員の伝達力に難があるらしく研修が一部でしか行われてないそうだ。
「算数ワークブック」の活用状況も厳しかった。調査結果では5割だが、実際に見学しに行ってみると、2割の教員しか活用していなかった。
なんで使わへんねん、と思ったが使い方が分からないそう。もっと徹底した研修が必要だった。
明日はミニンシパル校でも聞き込みやな。
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ウーリーさんに私の地元を紹介するべく、絶品ヨーグルトの店ハディジャのところに来た。
「アビ~!帰ってくるんやったら、連絡しいやー!」
「アビッ!!!」「アビ~!!!」
奥からハディジャの双子の娘ンダイアスとアストゥが飛びついてくる。
「ごめんやん、準備でバタバタやってん。この方はウーリーさん」
「はじめまして~ハディジャですー。アビがお世話になってます~。」
お手製ヨーグルトを手渡しながら、また私のポルタブル不携帯の話をしている。
相変わらずハディジャのヨーグルトは「牧〇の朝」でおいしい。




