38_それにしても圧がすごいねん
小野田くんは、ポルタブルの開発が順調ということを残して帰っていった。
私はシーさんに「就学前教育(幼稚園や保育園での教育)」についての相談を始める。これは医療・保健分野との連携が欠かせなかった。
未就学児とは、小学校に通う前の子どものこと。未就園児は、園に通う前の子どものこと。
この「未就園児」の把握をしているのが、病院や保健所を対象とした保健省だった。
ジャム共和国の中には多くの貧困層がいて、病院だけでは把握しきれていない。
家庭保育されている子に対して、保健ボランティアが巡回している状況。しかし、そこの連携がうまくいかず支援の手が伸びていなかった。
「ありがとうございます。事情はよくわかりました。全国の病院経営のことにかかりきりで、産後支援まで手がいってなかったんです。
でも、小学校の教育のために何で未就園児を把握・支援するんですか?」
「小学校に入る前から発達や生活習慣、学力に差があると、入学後に学びにくさが広がるんです。
ただでさえ公用語はタルタール語。早期の支援で、学校に通うことを普通にしないと子どもたちはどんどん学ぶ場を奪われていくんです。」
これに加えて日本でも医療・保健分野と連携して行われる「特別支援教育」についても説明。
保健省の理解が得られたことで教育省に話しやすくなった。一気に安心する。
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―― 教育省合同庁舎の大会議室
「~~~ということなので、今後は下記の図の内容に段階的に力を入れてまいります。」
①保健省と提携した「就学前教育」と「特別支援教育」の充実
②教員・教科研修の実施
③少人数学級化
④教員養成校の質向上
緑のワイバーン族ギラシー大臣の威圧感が今日もすごい。もちろん今回もすさまじい握手で右手がまだ痛む。
「よくわかった!1つ質問がある!予算は確保したと言っても、全国規模で施設の確保や効果が見込まれているなのかね!」
「ギラシー大臣、施設については下記の図をご覧ください。」
・足りない教室は軽素材教室活用→植物魔法と土魔法で短期建設(資格保有教師のみ実施)
・教室建設ガイドラインを確定(設計図、素材、耐久基準、魔法使用ログの義務化)
「効果の見込みについては、拠点校で測定し計画を提示します。
短期で示せる指標は就学率、出席率、基礎学力の改善率です。その結果を見てからの導入ということでしょうか?」
「ふむ!耐久基準の明示を行い、定期点検を義務化しなさい!そして、就学率と学力に改善が示されるなら全国展開を支持しよう!」
他の参加者からも、特別支援学級に対象となる子どもの基準や研修の持続性、教員の時間確保とカリキュラムとの整合性について質問があり、1つ1つ説明していった。
やっぱりここのいいところは、何事も実行ありきで課題を考えてくれること。
拠点校での調査後の全国導入にはなったが、なんとか納得してもらえたようだった。




