30_地元ってやっぱええよなあ
甥っ子姪っ子から盛大な歓迎というか襲撃を受けた私は、落ちるように家に向かう。
「たっだいまああああああ!!!!!」
甥っ子たち顔負けのスライディング着地になった私は、まだまだ小学校で働ける。こういう遊び心が大切なんよな。と納得させていると
『『おかえり、アビ!』』
兄のマイサとその奥さんの文さん、姉のンダイアワからハグで出迎えてもらった。ンダイアワの旦那さんは、シン王国に出張らしい。
落ちる前には、きれいに離れていった甥っ子たちも、ちゃっかり後ろからハグ。
「しばらくぶりやな~元気しとったんか!」
兄のマイサは、私と同じ不死鳥族。文さんは、青の八咫烏族。ンダイアワは、父譲りのコカトリス族。
やっぱり結婚するとなると、似た種族になっちゃうんよな~。日常会話や民族同士の文化の壁は、ここでも影響してくる。
「今日帰ってくる言うてたのに、ずいぶん遅いやん~。待ちきれんくて、マイサの家来てもうたわ。」
なんか姉が年々母に似てくるのは、気のせいやろか。
「ごめんごめん、ハディジャの家行っててん。みんな元気にしてたわ」
「ほなよかった。あんた、お腹へってんの?晩御飯できてんで」
ンダイアワと文さんは、マイサと付き合う前からの友達だったせいか、自分の家かのように過ごしている。
本当は私の両親と同居するはずだったが、若い世代の反対と、この国の中では比較的先進的な私の両親の意向で、兄夫婦は新居を実家の近所に建てた。
そういうこともあって、姉は旦那さんの実家から頻繁に兄の家に遊びに来ている。
「ハディジャの家で食べてきたから、そんなお腹へってへんで、私」
「まあまあ」『まあまあ』
文さんまで私の前に大皿の中のソースを寄せてくれる。それを真似した姪っ子はパンまで。多いて~
家の庭で晩酌をしながら、最近の仕事の話を聞いてもらう。
月に照らされて羽ばたく甥っ子姪っ子がきれい。今日は特別に夜の空で遊んでいる。
と感動していたら、喧嘩して1人というか1羽が泣いて帰ってきた。
「へ~そんな仕事してんねや。ジャム人ゆっくりしてるからな~。まあアビならいけるやろ。」
「でもまあ、アビはジャム人として、ここでうちらの家族になったわけやろ。ほな頑張らなあかんわな。」
「てか、俺覚えてんで。日本のご飯やーいうて、なんか作ってたやろ?」
「あ~!そーやそーや、懐かしいわ。アビ、必死でミソってやつ作ってたよな!」
「えっ、私も食べてみたいわ~。ミソって日本の料理なん?」
「ミソシルいうたかな? あんな必死なアビ、先生なる時の魔法試験前しか見んかったわ」
兄と姉の何とも絶妙な励ましをもらいながら、夜が過ぎていった。本当にここの人たちは、関西人並みの怒涛トークを繰り広げる。
気づくと甥っ子たちは庭の端で集まって寝ていた。この国では、外で寝ることも多い。私も今度寝てみよう。開放感がすごいんよな。
「ほな、私そろそろ帰るわ!めっちゃ元気出た、ありがとうな。」
「泊まっていったらええのに~。」『ええのに~』
ンダイアワは泊まって帰るようだった。寝ぼけ眼の甥っ子たちもそう言ってくれるが、準備もあるので帰る。
本当に距離が近くて、お節介で、何よりあたたかい。
やっぱりこの国の家族も、この国も、地元も大好きやな~と実感する休日を過ごした。




