22_食う前にすることあるやろ
濃ゆいカフェとジュース、油たっぷりのパンにドーナツが置いてある席に各自座る。
私はやはり1番乗りであり、ンジャイさんの親戚でもあるタンバの教育委員会長の隣に座った。
日本人の勘が時間を守る人についていけ、と言っている。それにポルタブルを最低限しか触らず、彼はメモをとっていた。
「お隣失礼します、ンジャイ委員長。研修はいかがでしたか?」
「それぞれの魔法の意義について、よくわかったよ。タンバのみんなにも、しっかり伝えなくてはいけないね。」
この後も研修の話をすることができた。
さすがメモまで取っていた人で内容をよく理解している。
後から聞くと、集合場所が正しく連絡されてなく、会議室を見つけるのに時間がかかったようだった。
どおりで集合が遅いわけだ。
朝食会場に来てみると、朝見かけた人がちらほらいる。
テキトーな連絡しやがって。人の時間をなんやと思てんねん。
朝食後は、実践編だった。
実践編といっても、複製魔法や投影魔法を使えるだけじゃなく、使える人材の育成用の研修だ。
「使い方はわかりましたね。このように行います。では、代表の方どうぞ。」
複製魔法を使って、投影用の魔道具の複製。複製した魔道具にピンポイントで複数個所に魔力を込め、使用するまでを得意げに行った研修者は、代表者を指名した。
指名されたのは、首都の教育委員会の魔法技術長だった。
「このように行います。」
はじめから打ち合わせしたかのように行われる、複製と投影は何の滞りもなく終わっていった。
見ている側は、キョトンとしている。
ンジャイ委員長は、必死にメモを取っていた。
そこからは、研修の開き方とスケジュールの報告の話となった。
転送魔法を使って、各地域の教育委員会での研修開催スケジュールと結果報告書を転送してもらい、研修が本当に行われたかどうか、継続的に行われるかを確認するそうだ。
研修後の昼食前に、ンジャイ委員長と一緒に会議室で魔道具を使ってみた。
メモまで取っていたンジャイ委員長が、どこまで理解しているかが知りたかったからだ。
「実践編の内容はどうでしたか?よかったら、一緒に操作してみませんか?」
「ありがとうございます、ぜひとも。理解できているか心配だったんです。」
やってみた結果は、散々だった。
複製魔法に使う魔道具は、簡易化に成功したとはいえ、まだまだ複雑だ。細かい仕組みと内容を理解してこそ複製ができる。ンジャイ委員長は、まず複製ができなかった。
日本の小型プロジェクターさながらの小型魔道具は、私にとって扱いやすく、そこは複製させてもらった。
その後の投影魔法も、複数あるポイントに適切な魔力を込めるまでを、完璧にこなすことは難しかった。
私ですら苦労した。
その様子を見ていた他の人もやってみたが、同じような結果だった。メモをとる人や、やる気がある人ですらこの状態。
先に昼食会場に行った電話やポルタブルをしていた人たちは、どうなるんだろう。




