02_朝の健康チェックは大切なんやで
「おはようございまーす!」
「おはようございまーす」
翼はやっぱりありがたいと思いながら、さくっと勤務校であるミニシパル小学校に着いた。
職員室にいる教員に挨拶を軽く済ませ教室に向かう。
日本で働いていた時は、この時間には教員の全員が出勤していたのになあ。
この世界は時間に対する考え方がゆっくりで、ほとんどの教員はまだまだ出勤していない。
学校が大好きな子たちは、登校してすでに遊んでいる。
日本だと考えられないと思いながら、元気に遊ぶ子どもたちを見つめる。
遊ぶ場所がたくさんあるこの世界が私は好きだ。
私は、第3学年に教えている。
教える教科は日本にいた時より少ないが、魔法と語学の時間が多い。
それは、魔法社会であることの他に、多民族国家であることと宗主国が影響している。
公用語は、ジャム共和国を過去に植民地にしていたタルタール国のタルタール語。
普段会話しているのは、各民族の言語や方言だから定着が遅い。
しっかり言語を勉強しないと、仕事が見つかりにくいという大きな課題もある。
他のクラスはまだ始まっていないが、私のクラスは違う。
8時から始めていく。欠席者は、おらんな。
扉の外で、隣のクラスが掃除をしている砂埃が見える。
どの時間に掃除をするかさえも、自由に決められるのがこの国の担任制度だ。
「朝の挨拶をします。起立!礼!」
「おはようございます!」
朝の会の間に、顔色が悪い子どもがいないか、普段と違う子供がいないかを観察する。恒例の健康チェック。1人1人の返事を聞いていく。
他の先生からは、そこまでするの?とよく言われるが、毎回おすすめしている。
聞いていると、ドラゴン族のソーセーくんの口から漏れ出る火の出が悪い気がする。もしかして、朝食食べてこなかったかな。
フェアリー族のジョップさんの髪の輝きが少し薄いし、羽ばたきがゆっくり。様子を見ないとやな。
日本にいた時は、見た目が統一されていて、変化がより分かりやすかった点は楽だった。
今では、各種族の調子が悪い特徴を覚えるから、さながら生物学者。
このクラスはクイズ好き。
子どもたちを盛り上げるためにも、朝からクイズ係に活躍してもらう。
教員である私が考える?そんなことをしていたら、子どもたちの考える力を奪うことになる。授業の準備で手一杯といった方が、いいかもしれんけど。
「第1問!ユニコーンは、ユニコーンでも食べられないユニコーンはなーんだ?」
『ユニコーン鍋!』『とんがりコーン』『体育で使うあのコーン!』
子どもたちは、本当に楽しそうに口々に答えを言っている。
答えている内容で、子どもたちの家庭が見えることもあれば、性格が見えることがある。
『とんがりコーン』の猫又族の九条くんは、異世界の本が好き。
この光景を見るのも幸せ。
日本で働いていた時は、宿題チェックに追われ、何も見れてなかった。
過去の自分に少し悲しくなる。その分、今の子どもたちを見よう。
そんなこんなで、大盛り上がりのクイズタイムは過ぎていく。




