14_居酒屋の方が日本らしいよな
家からすぐのレストランTOKYOに遊びに来た。
きよさんの声に癒され、吸い込まれるようにカウンターに座る。
隣には、ジョールさんが晩酌をしていた。
「ジョールさん~~~。聞いてください~~~。」
これだけ疲れていても、逆に疲れているからこそ、今日のおすすめを一瞬でチェックした私は、オーダーだけはすぐに済まして、ジョールさんに声をかける。
「なんだ、なんだ。」
ビールを片手に、つくねを食べるジョールさんは、いきなり頭を机に預ける私を見て驚いている。
今日の会議と一連の話を伝えると、ジョールさんはファッファと笑った。
忘れているかもしれないが、彼(彼女)は、女型のゴーレムだ。しかもナイスバディ。
「それが、この国ジャム共和国だ。アビも知っているだろう、このジャムという言葉の意味を。」
この国名であるジャムは、「平和」という意味だ。
ジャム王国がタルタール王国に支配される前、栄えていた民族の言葉からとった。
今はその民族は、どこに行ったのかわからない。
各地の民族の由来となる言葉の数々を残して、消えてしまった。
奴隷として、1番多くさらわれていったことが原因だ。
タルタール王国でも、反乱を起こし残っているものはいないと聞く。
その悲しい歴史を忘れないために、独立の時に名前が付けられた。
「そんな国だからこそ、争いは起きないが向上もない。知識は定着しにくくなったことに加えて、隣国であるシン王国の発展に影響を受けて、国民は自分たちの発展をあきらめてしまっている。」
神だけが先を知ってるんだよ~、仕方ないよ~、いいんだよ~、恵んでくれよ~
これは、ジャム王国でよく聞く言葉だ。
自分たちの間違いや周りの怠惰で、人を責めない。
許しこそ全て。それが、この国の優しさであり、正義。
実際、貧困層が多いせいで犯罪率は高いが、人を助ける頻度は圧倒的に高い。
人が迷惑をかけ合うことを、許す社会でもある。
と、考え込んでいると、ジョールさんから、つくねが差し出された。
「ほれ、食え!どこの国にもいいところ、悪いところがある。」
ほおばったつくねの甘辛いタレが、心にしみる。
「日本のいいところは、圧倒的に食のレベルの高さやな~」
「ファッファ、ちがいねえ!」
結局、盛り上がるのは食の話で、この日も最後は米の話をした。
そういえば、レストランTOKYOが改名をしたらしい。
ジョールさんやイブさんがいうには、ここはどう考えも居酒屋じゃないか、とのことだった。
私も薄々そう思っていた。
なんなら居酒屋としてしか使っていないのは、私かもしれない。
これからも通い続けます。
レストランTOKYOならぬ、「居酒屋TOKYO」




