11_こういう時は、食べたらええねん
「首都のケドゥグで働くことになったから、みんなと一緒に入れる時間が少し減ります。その代わりは、たくさん学校で働いてきた、セーヌ先生が勉強を教えてくれることになったから、安心してね。」
『がんばってね』『さびしい~』『セーヌ先生、ユニコーン族だあ』
結局、子どもたちと離れたくなくて、時々こっちの学校にも顔を出すことになった。
国立だけじゃなくて、地方の学校もよく知っておかないと、現場にあった改革はできない。
他の教職員にも挨拶を済ませ、自宅に戻る準備をする。その前にセーヌ先生にも引継ぎ。
「こちらが子どもたちの資料になります。なにか困ったことがあれば、いつでも連絡してくださいね。」
「ありがとうございます。アビ先生の大切な子どもたちをしっかり見させてもらいますね」
挨拶もそこそこに、実家に戻ってきた私は荷造りをしながら、母親に一連のことを伝える。
「昔から変わってるって思ったら、そんな大層なことなって。がんばってきてな。お母さん、こっから応援してるから…。って、あんた、シーさんって隣町のDr.シーの末娘さんやないの」
感動の涙を流そうとしたら、やっぱり同じ北部のシーさんは、母の知り合いだったようだ。
シーさん一家の話が広がり、いつの間にか隣町の定食屋さんの話になっていた。
そのころには、荷造りも終わり転移位置に、最後の荷物を置くだけになっていた。
「家族でこうやってご飯を囲むのも、しばらく先になるなあ」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、実家の近くに住んでるやん~」
「それとこれとは、違うねん」
「アビ、頑張ってくるんやで~~~俺は誇らしい!」
「お父さんまで、ちょっともう!」
みんなで手づかみで食べるこのご飯も、しばらくはお預けやなあ。
味が濃くて油っぽいけど、これが今の世界の家族の味。
結局どこの世界に行っても、母の味は大好きになるもの。
外国に行くわけでもないのに、しんみりなりながら最後の夜ご飯が過ぎていった。
「じゃあ、向こうに布団もおくってもたから、もう行くなあ。」
「元気でな」
「ちゃんと連絡するんやで。あんた、気づいたらポルタブルどっかやるんやから。携帯するから、ポルタブルやねんで」
「わかった、わかった」
両親の愛を一心に受けながら、転移位置に入っていく。
「それにしても、義務教育の拡充と教員研修なんか、どないしたらええんや」
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気づけば、チャム大臣に用意してもらった部屋にいた。
今日使うものだけを開封しながら、今後の教育改革を考え始める。
「ずっと家族みんなでいたから、めっちゃ寂しいな」
独り言が余計寂しさを掻き立てるから、身支度を整えて出かける準備をする。




