用語集 - 「銀河皇帝のいない八月」第一章より
(本編における登場順)
【星百合】
銀河系全域の宇宙空間に広く分布する鉱物型生命体。
小さなものは全長数百メートル。
大きなものは小惑星ほどの大きさになる。
クルミ大の「種子」と呼ばれる幼生体が宇宙空間に忽然と出現し、百合の花に似た形状に成長する。
成体は、近辺の宇宙空間に超空間への「スター・ゲート」を発生させる。
・星百合と銀河帝国
星百合のスター・ゲートは遠い宇宙空間へ続く超空間路「リリィ・ウェイ」の出入り口である。
このリリィ・ウェイが、無数の星系に存在する惑星文明を結びつけ、巨大星間国家「銀河帝国」を成立させている。
各スター・ゲートは、それを発生させている星百合から直近の惑星国家によって管理されており、星間交易の利益を生み出している。
スター・ゲートから先のリリィ・ウェイがどれだけ多くの星系に繋がっているかはまちまちで、その規模によって各惑星国家の勢力も違っている。
・ 星百合技術
星百合はその本体の一部を利用することによって、様々な超科学技術や人間の能力拡張術の基盤として利用されている。
ただし星百合の採取には細心の注意が必要で、無闇な採掘や切断、爆破といった行為は星百合自体の突然の消失など不測の事態を招き、作業当事者を到達不能宙域に孤立させたりする恐れがある。
・ 星百合の生命活動と死
星百合内部の量子状態を高度な専門技術で観測することにより、その生命活動の状態や寿命などをある程度測ることができる。
死期の迫った星百合の管理国家は、銀河帝国の承認を得ることで新しい星百合の種子を入手し、帝国との繋がりを維持する。
しかし、この種子の所有権をめぐっては星間紛争の原因となりがちである。
また、時として一つの星系に二つ以上の星百合が現れることがある。
この場合、片方の星百合はスター・ゲートを発生させない休眠状態であることが多い。
双方の星百合が覚醒状態にある場合、周辺の時空そのものが不安定化する恐れもあるので、すでに星百合のある星系に種子を持ち込み、複数の成体を人為的に置くことは帝国によって禁じられている。
【スター・コルベット】
銀河帝国軍が運用する小型高速戦闘艦。
機動力と即応性を重視した設計で、単艦行動や局地戦での活躍が多い。
全長約四〇メートル。
翼を開いた蛾のような形状をしている。
スター・ゲートからの超空間航行が可能なリリィ・ドライブを搭載しており、単艦で恒星間の移動が可能。
大型艦に搭載し、シャトルとして活用されることもある。
武装は主砲として白色光弾砲一門、パルスビームガン三門他。
銀河皇帝や政府高官といった上等客の乗艦に対応できる、エクストラ・サルーンモデルもある。
【ミン・ガン】
惑星〈水影〉を母星とする知的生命体。
二足歩行の猫型人類。
成人男性は身長一メートル前後。
全身が毛皮に包まれており、戦闘用ベストなどの簡素な衣服しか身に付けない。
銀河帝国で最も恐れられている戦闘民族で、格闘から最新兵器の操作、宇宙戦闘艦の操艦に至るまで、他種族を圧倒する実力を誇る。
銀河帝国全域で局地戦に参加するなど、傭兵や賞金稼ぎとして外貨を稼いでいる。
反骨精神旺盛な「まつろわぬ民」でもあり、帝国との摩擦が紛争に発展することも多い。
【ドロメック】
銀河帝国全域の主に都市部に生息している機械生命体。
高性能のカメラとなっている頭部に、何本もの触手が繋がっている「メダマクラゲ」状の生物。
全長五〇センチから二メートル。
浮遊ガス嚢を内蔵し、触手で空気をかき、空中を漂うように移動する。
カメラで撮影した映像を高次空間通信波で全銀河に常時配信している一種のメディア生物。
都市部を野良状態で浮遊しているものがほとんどだが、軍や公家、犯罪組織などの制御下で、偵察、スパイ、宣伝工作などに使用されるものも多い。
近しいロットで製造されたもの同士で一対一の直接通信も可能。
通信時、内蔵された簡易声帯で言葉を喋らせることもできる。
【感力場シールド】
銀河帝国全域で広く使用される汎用防御技術「ユニシールド」の第二位相。
高速、高熱、高圧による攻撃を防ぐ機能に特化しており、接触したエネルギーのポテンシャルに合わせてそれを反射する。
火器攻撃に対しては効果的だが、剣などの白兵戦ではゆっくりした動きによる内側への侵入を防ぎ切ることができない。
内側からのエネルギーは透過させ、使用者からの攻撃が可能だが、その場合、防御性能は落ちる。
防御エネルギーの流れを反転させ、シールド同士を接触させることで、内側に侵入することもできる。
ほぼ透明で、使用していることを視認することは困難。
【完断絶シールド】
ユニシールドの第一位相。
感力場シールドの上位に位置する防御機構。
あらゆる物理的エネルギーのみならず、すべての電磁波を遮断できる“絶対的な隔離”を実現する。
その一方で、内側からの攻撃も不可能となり、気体も通さないので長時間使用の際は呼吸用物質の用意などが必要となる。
紫色のバリヤーとして視認することができ、透過させるエネルギーや電磁波等の種類をある程度決められる選択性がある。
表面のエネルギーによる物理的な打撃を武器として使用することも可能。
【法典(銀河帝国法典=ガラクオド)】
銀河帝国の統治を根底から支える根本法典。
「帝国の存在そのもの」とまで言われ、皇帝を含む全ての者が従属すべき基準として機能する。
その「原典」は書物ではなく、生物的・有機的な存在であり、惑星〈無天函〉において原典管理師と呼ばれる専門職能者たちによって管理されている。
帝国の不変性を支える一方、時代の変化を拒み続ける要因にもなっているが、数千年間隔で〈法典〉自身が自らの意志で内容を更新した歴史的事実も存在する。
【ネープ】
惑星〈青砂〉を本拠とするヒト型人類集団。
全員が同じ遺伝子を共有しており、性別を除いて完全な同一人物から成っている。
個体は時間凍結された受精卵から分娩され、その過程で染色体の揺らぎが発生し、男女に分化する。
その発祥は謎だが、一万年を超える銀河帝国の歴史において、〈法典〉と銀河皇帝の守護に就いており、そのための軍事的組織の呼称にもなっている。
超人的な知能と身体能力を備え、あらゆる種類の戦闘で最強の実力を発揮する。
完全に感情を制御した状態で任務にあたるため、常人のようなミスを起こさない。
そのため、帝国社会では一般的に「完全人間」と呼ばれている。
外見も、多くのヒト型人類種には非常に性的魅力を感じさせるもので、婚姻その他の関係を望まれることもあるが、成立した事例はない。
しかし、ネープの側ではそうした魅力を諜報活動等においてしばしば利用する。
【キャリベック】
ネープが戦闘において使用する機械生物の人造馬。
全長二メートル。
本体から六本の金属触手が伸びており、前方の二本に騎手が足を通す形で合体し、ケンタウロス様の姿になる。
単体での武装は持たないが、触手は強力な白兵戦用の武器となる。
反発場ジェネレータとイオン・スラスターを備え、空中戦にも使用可能。
【メタトルーパー】
武装し、臨戦状態にあるネープの呼称。
主に皇帝警護の任にあたっている者を指す。
【銀河帝国皇帝(銀河皇帝)】
銀河帝国元首にして最高権力者。
帝国の支配における最大の権限を持ち、あらゆる法制度、行政機関の頂点に立つ絶対的存在。
惑星国家の代表機関である帝国元老院に対しても、勅令、拒否権などを行使することで最大限の影響力を発揮する。
銀河帝国軍最高司令官。
皇位継承の条件は、皇帝本人や元老院による指名の他いくつか存在するが、後継候補者の資格に厳密な要件はなく、知的生命体としてある程度のレベルにあれば、帝国領外の未支配惑星人であっても対象となり即位が可能。
帝国の行政システム、軍事システムには皇帝の生体情報が登録され、帝国政府の管理エリア内において最大のセキュリティ権限が与えられる。
さらに、すべてのオンライン状態にある兵器での攻撃、殺傷も不可能となる。
【銀河帝国】
銀河系全域に派を唱える巨大惑星国家連合体。
その支配体制は、星百合の繋ぐ超空間路網によって成立している。
従って支配星域の数は星百合の発生、消滅によって常に変動しており、十万とも百万とも言われ、上級官僚や銀河皇帝ですら正確に把握できていない。
しかしその行政は、約五万の主要惑星国家代表による帝国元老院と、行政システムを管理する昆虫型人類インピッドによりほぼ問題なく行われている。
開闢以来数万年の時を経ると言われるが、その発祥や体制成立に至る歴史はすでに失われており、謎に包まれている。
・帝国人民の態様
銀河帝国では一定の知能レベルと倫理観を備え、帝国への参加を許された知的生命体を「人類」と総称する。
帝国に属する惑星国家には、多様な種族民族の人類が存在している。
猿を祖先とするヒト型人類や、様々な祖先を持つ動物型人類の他、不定形生命体や機械生命体、実体のないエネルギー生命体型人類などが、帝国人民として活動している。
・銀河帝国元老院
帝国における国権の最高機関。
高レベルの文明を誇る約五万の惑星から選出された代表が議員として参加する。
議会は、参加議員の認識拡張技術によって成立した仮想空間で行われ、審議、議決とも速やかかつ効率的に進行する。
・公家
多くの惑星国家は、公家と呼ばれる血縁中心の支配階級によって管理されており、その当主が元老院議員として帝国の政治に参加する。
最高権力者である銀河皇帝も、多くの場合、公家出身の元老院議員から選出され、公家の血縁の流れで継承されていく。
この継承の流れを巡って、公家同士の対立や紛争などが勃発することもあり、勢力の大きい公家がおのずと帝国における大きな支配力を握る。
泡沫星系では、公家よりも規模の小さい領家と呼ばれる組織に支配されていることもあり、これは通常の自治体政府ではなく犯罪組織の発展したものであることが多い。
・銀河帝国軍
帝国の制式軍は、各惑星国家の保有戦力を統合した連合軍であり、これを帝国のリソースによって補強したものである。
その目的は主に反乱鎮圧や紛争地域における治安維持活動など。
即ち帝国体制防衛のため、元老院や銀河皇帝の命令、承認によって出動する軍組織であるが、その成り立ちから公家の影響力が強く、公家の利益のために利用されるケースも少なくない。
主な軍種は下記の通り。
・連合宇宙艦隊
・機動宇宙艦隊
・機動海兵隊
・星威軍
・機動衛兵隊
その他、情報部直属の特殊部隊などが存在する。
すべての兵器は宇宙戦闘艦からハンドガンに至るまで、共通のシステムにオンラインとなっており連携して運用されている。
【ゴンドロウワ】
辺境星域の三現京星系に、古代文明が遺した人造人間軍団。
数万年前に製造され、その主である文明の滅亡と共に永い休眠状態に入っていた。
銀河皇帝ゼン=ゼン・ラ二〇四世によって発見され、十数年の歳月をかけて蘇生処置が施され、一個軍団(約三万体)の再起動に成功する。
基本的に身長約二メートル半のヒト型ボディを持つ多数のソルジャーと、一回り大きく少数のコマンダーから構成されている。
指揮系統の最上層にあるチーフ・コマンダーへの命令によって全軍団が指揮されるが、その上はただ一人の命令者としての人間に固定される。
命令者が固定されると、特定のコマンドで自律行動の範囲や知的レベルを拡張できる。
正しくレクチャーすることで、あらゆる武器や乗用兵器を駆使することが可能で、幅広い作戦行動に対応する。
命令者が失われると指揮系統がリセットされ、再設定されるまで一時的に誰の命令でも聞く状態になる。
【惑星〈水影〉】
銀河系西南星域に位置する、水影星系の第四惑星。
猫型人類ミン・ガンの母星。
【即位の儀】
新たな銀河皇帝が誕生する際に行われる正式な儀式。
帝国全土へ「〈法典〉が新たな継承者を認めた」ことを示す。
挙行には、法典にかなった皇位継承者、皇冠授与を行う元老院議員、即位の宣言を行うネープの三者が必要。
【高次空間通信波】
光速を超えて伝達される特殊通信波。
星百合由来の量子技術を応用しており、広大な銀河での即時通信を可能にしている。
帝国の統治と軍事行動を支える基盤技術である。
【翻訳環】
異星言語を即時に翻訳する装置。
装着型の環状デバイスで、多様な異星種族が共存できる最低限の基盤を提供する。
音声だけでなく、使用者の意思も脳から読み取り、聴覚と思念波による複合情報として相手に伝達する。
【サンガ級惑星改造船】
銀河帝国で広く運用されている惑星環境開発重機船。
直径約三〇〇メートルの円盤型本体から、さらに二千メートルに及ぶ空間歪曲マストが円形に展開されている巨大宇宙艦。
その中心は空間組成交換安定機と呼ばれる装置で、これによって惑星表面の環境を他の空間と入れ替える形で大規模に造り替える。
環境兵器としても転用可能だが、使用には元老院か銀河皇帝の許可が必要。
【空間組成交換安定機】
惑星改造船などに搭載された、空間そのものを操作・安定化させる高度技術装置。
惑星上の環境を広範囲に渡って根本的かつ暴力的に造り替える機能を持ち、生物の生存に適さない要素を排除し、環境を初期化する。
その過程で対象区域のありとあらゆるものを消滅させる。
星百合由来の時空操作技術を応用し、空間を宇宙の遠く離れた別の空間に直結し、丸ごと入れ替えることで膨大な量の物質を消し去ることを可能にしている。
【熱核弾】
銀河帝国全域で広く使用されている核融合型爆弾。
主に手投げ弾や、ランチャーを使う榴弾として使われる。
中性子をほとんど発生させないアネウトロニック融合を採用しているため。反応生成物は荷電粒子や高エネルギー光子であり、周囲物質を放射化しにくく、残留核種も短寿命か安定核に収束する。
強力で局地的な殲滅力を持つ標準的兵器だが、大量破壊兵器としての製造は法典により禁じられている。
【ツノバチ級揚陸戦闘艇】
地上戦用に投入される強襲艇。
鋭い機首と高速突入能力から“ツノバチ”の名がついた。
惑星への急襲や揚陸戦に用いられ、帝国軍の機動力を象徴する兵器。
パルスガン二門を搭載し、空中戦にも対応可能だが、対流圏内での使用を前提としており、真空の宇宙空間では使用できない。
【反発場】
中型宇宙艦から、個人用の乗り物、運搬用のパレットに至るまで、空中に浮遊させての移動を可能にするための技術。
星百合の一部から精製されたチェルガムノ粒子に電荷を帯びさせることにより、発生させることができる。
【ショックスピアー】
近接戦闘用のエネルギー兵器。
槍状の形状を持ち、突き刺すと同時に電撃、衝撃波を発生させる。
衝撃波だけを発射することも可能で、これをうまく放つと障害物を除去するといった用途にも使える。
槍とライフル銃の性格を併せ持った武器だが、習熟には高度な技術と訓練を必要とし、使いこなせるのは帝国軍の武術師範かネープくらいのものである。
これを用いた公式槍術では、まず衝撃波の撃ち合いから対戦を始めるのが慣わしとなっている。
【聖衣】
儀礼・戦闘双方で用いられる装束。
銀河皇帝や特定の高位者が身にまとうことで、“権威の可視化”を果たす。
同時に防御機能も持ち合わせ、象徴性と実用性が融合している。




