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バトルステーツ・リベレイション〜若き番の叙事詩〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
50/52

EP50 20時09分

寝台準急アインクラッドの旅が始まり、義人と美浦は優雅な食事を楽しんでいた。

長瀬たちとクルド解放戦線も事が近づいていくのを感じ取っていた。

今、長くて緊迫した夜汽車の旅が始まる……!

永瀬が受け取った夕食は、この日の“和食膳”だった。

 主菜は、瀬戸内海で水揚げされた鰆の塩焼き。ふっくらした身から湯気が立ち、折詰の蓋を開けた瞬間に香ばしい香りが広がる。


 対して、部下二人は牛頬肉のワイン煮込みを中心にした洋食折詰。

 テーブルライトに照らされ、艶やかなソースが宝石のように輝いていた。


「しかし――列車で夕食、ってのはやっぱり最高ですね」

「ほんとだ。旅の醍醐味ってやつだな」


 三人は揺れる車窓を眺めながら上品な車内食に箸を伸ばす。

 いつの時代でも“移動しながら食事を楽しめる”というのは、贅沢の象徴にほかならない。


──だがその奢侈は、別の車両ではすでに断ち切られようとしていた。


 グリーン車の先頭で、クルド解放戦線の三人が動き始めていた。


「外部ブレーキの操作を完全に遮断……よし。最高速度のまま東京駅に突っ込むように制御を書き換えた」


 運転席のプログラムに手を加えながら、ハッカーのマッドが薄く笑う。

 モニターに赤い警告が次々と走るが、すべて無視されていく。


「へっ、だったらよ。どうせ死ぬなら派手にやろうじゃねぇか」

 ジョウンが肩を回し、興奮で武器を握る指先を震わせた。


「焦るな、ジョウン」

 その横でマグルが、古びた写真を固く握りしめていた。

 そこには妻と娘――かつての“家族”が微笑んでいる。


 彼の家族は、2048年のトルコ紛争の終盤で命を奪われた。

 欧米諸国の戦略爆撃が、彼が帰還するはずだった家そのものを焼き払ったのだ。


 “我らの戦争は終わっていない。”


 この呪詛のようなイデオロギーが、彼をテロリズムへと押し上げた。


「頭目、アテンダントが来ましたぜ」


 ボビィの合図に、マグルは静かに立ち上がる。


「お食事をお持ちしました」

 笑顔で差し出す女性アテンダント。


「――死ね。メスが」


 銃声が響いた。

 白い制服が赤く染まり、弁当が床へ散る。


「ブタのエサを袋に集めろ! この列車は今からクルド解放戦線が制圧する!」


 ボビィとジョウンが他の客車へ突入する。

 折詰弁当は容赦なく奪われ、巨大なゴミ袋へ放り込まれた。


「貴様らの食事は、これだ」


 マグルが乗客に配ったのは、栄養ブロックが一つだけ。

 集められた弁当袋は非常ハッチから闇へ投げ捨てられた。


「よく聞け日本人ども! 今この瞬間より、貴様らは我らの革命の礎となる!」


 運転士・乗務員は拘束され、休憩車に押し込められた。


「さて……日本政府に“革命の始まり”を知らせてやろうか」


──同じ頃。


 スプリームクラスでは、義人と美浦が静かに宿題を進めていた。


「えっと……“トルコ紛争は欧米の軍事介入により終戦し”……」

「よしくん、この問題の式なんだけど――」


 二人は供花から送られた課題を片付けながら、次の夜景スポットを待っている。


「なんか、後ろの車両……少し騒がしくない?」

「気のせいだよ美浦。宿題終わったら映画でも観ようぜ。ゲットホリッカーズで“フォーチュンドラゴン/毒リンゴのレクイエム”配信されたみたいだから」


「あ、アジアカップで見逃したやつ!」


 スプリーム席のモニターは動画サービスが無料だ。

 美浦は胸を弾ませ、義人は軽く操作――しかし画面は真っ暗だった。


「あれ?」

「映らない……?」


 不穏な空気が二人の背筋を冷やす。


「よしくん、これって……」

「間違いない。トレインジャックだ」


「え……!?」


 美浦の声が震える。


「でも大丈夫。俺たちは“運がいい”。ステラリンクプロを二台持ってるだろ?」


「持ってるけど、それが……?」


「これで救えるんだよ。今の爆弾はネットワーク経由で遠隔操作される。つまり――」


 義人は目を細めた。


「仮想空間にダイブして、爆破プログラムを止める」


「……っ!」


 二人はマスターキーのロックを二重にかけ、安全を確保。


「よし……回線は生きてる! 業務モードで行くよ、よしくん!」

「了解!」


 二人はステラリンクを装着し、<アインクラッド>の仮想空間へと飛び込んだ。


 ──テロリストも知らない場所で、静かに“反撃戦”が始まる。


──同時刻。


「永瀬さん達が人質に!!」


 警視庁は一気に騒然となった。


「やはり、クルド解放戦線……」

「特警部隊の準備を急げ!」


 そこへ刑事が駆け込む。


「声明動画が……政府とメディア宛てに!」


「つなげ!!」


 モニターに映ったのは、目出し帽をかぶったマグルたちだった。


『日本のブタどもに告ぐ。我らはクルド解放戦線。世界の平和を壊し、我らの戦争が終わっていないことを示す!』


『この列車には、有毒ガス爆弾を搭載している。無理に扉を開けば、ブタどもは一瞬で死ぬ!』


『要求は二つ――外国人犯罪者の強制送還措置の撤回。そして女性人権・教育自由化の廃止だ!』


 会見室が凍りつく。


『応じなければ、この列車は十七時間後に東京駅へ突っ込む。乗客たちは我らと運命を共にする!』


──だが、その運命はもう動き始めていた。


義人と美浦が、すべてを止めるために。


次回、報道フロアが慌ただしくなる!

若きキャスターは、何を伝えるのか!?

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