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バトルステーツ・リベレイション〜若き番の叙事詩〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
49/52

EP49 19時57分

寝台準急アインクラッド号発車までの時間を利用して買い物を楽しんだ義人と美浦。

乗車したスプリームクラスに感激する一方、テロリスト集団「クルド解放戦線」が息を潜めていた……!

<本日はAJRをご利用いただきまして誠にありがとうございます。

当列車は、寝台準急アインクラッド120号・東京行きです>


 車内アナウンスが流れた。

 駅を離れた重低音が響き、列車はゆっくりと闇の中へ動き出す。


 その頃──

 スプリーム個室のベッド上では、義人たちがBSOにログインしていた。


「フォーミン、右サイド!」 「任せろ!」


 彼らが遊んでいたのは、

 次回大会IDSCCへ向けた模擬戦。


 相手は“跳ねる漁師団”バウンドフィッシャーズ。

 賞金は出ない練習だが、互いのプライドは本気そのものだ。


 試合は、義人の決め技で勝利。

 ログアウト音が、静かに鳴った。


「しかしよ、お前らも災難だったな」


 タブレットの画面に映ったモヒカン頭の漁師が言う。


「学歴復興委員会ね……あれは全国で暴れてる連中だ」


「そうなのか?」


 義人が聞くと、彼は眉をひそめた。


「漁師仲間が言ってた。“学歴さえあれば人生は勝ち”って思想を取り戻すために、手段を選ばねぇらしい。

 でも今の時代、そんな価値観……もう古いんだよ」


 2055年の日本。

 教育は自由化され、フリースクールが公立化。

 企業は学歴より“発想力”や“技術”を重視する。


 すでに“学歴による優劣”は、過去の遺物だった。


「そういや、あの《佐波建設》が解散したらしいな」


「やっとか……」


 美浦が小さく呟く。


 違法労働、暴行、搾取。

 かつて日本最大級のブラック企業は、行政指導を拒否し暴走。

 労基署を襲撃する事件──“ブラック・ジェノサイド”を起こしていた。


 結果、全国の違法企業は一斉に解社。

 CEOらは逮捕、永久国外追放。


「ブラック企業を取り締まる専用部隊までできたからな。今は働きやすい時代ってわけよ」


 モヒカンが時計を見る。


「っと、そろそろ夕飯の時間だ。お前ら、また後でな」


 画面が切れ、現実世界へ戻る。



---




「よし、晩ご飯だ!」 「きたぁー! お腹ぺこぺこ!」


 義人と美浦は、保管ボックスを開ける。


 上段には、美浦が選んだ“9マス折り詰め”。

 下段の駅弁は朝6時まで開かない仕組み。


「ふふっ、よしくん。

 私が全部セレクトした“オーダーメイド”だよ!」


 蓋を開けると──

 色鮮やかな韓国料理が整然と並んでいた。


「ヤンニョムチキン、プルコギ、サムギョプサル、ナムル、タッカルビ……」

「白菜キムチ、トッカルビ、チーズハットグボール、それとケジャン風チュモッパ!」


 まさに“美浦らしい攻めのセレクト”。


「お、冷蔵庫……甲州ぶどうの高級ジュース!?」 「私たち未成年ってこと、ちゃんと配慮してくれてるんだね!」


 グラスに紫がかったジュースを注ぐと、

 窓外には満天の星空が広がっていた。


「ねぇ、よしくん……」 「ん?」


「出会って、ちょうど5年だね」


「……あぁ」


「じゃあ」


「「乾杯」」


 軽く触れたグラスが、チリンと音を立てた。


 ヤンニョムの甘辛、キムチの酸味、夜景の煌めき。

 義人も美浦も、顔を赤くして笑った。


「ほら、美浦。ほっぺにご飯ついてる」 「や、やだぁー……!」


 スプリーム個室に、二人の笑い声だけが響く。


 ──それは、嵐の前の静けさだった。



---


同じ頃・グリーン車、解放戦線が準備を進める。


「リーダー、まだ開始しないんですか?」


 低く押し殺した声。

 座席下の影に潜む4人の男たち。


 クルド解放戦線。


 彼らの前には、分解された携帯端末。

 その中に収まるのは──小型信管プログラム。


「焦るな。マッドが最終調整に入ってる」


 マグルと呼ばれた男が腕を組む。


 マッドは細い指で電子信管を弄りながら言う。


「今の起爆システムは繊細なんだよ。

 適当に触れば“逆起爆”しちまう」


 爆弾はグリーン車の空調内部に仕込まれる。

 空調を通じ、無色の神経毒が全車両を満たす仕組み。


「で、スプリームに乗ってる連中はどうします?」


「放っておけ。どうせ死ぬ」


 マグルの声は冷たい。


「平和に甘える豚どもに、俺たちの“戦争”を教えてやるんだ」


 他の男たちが、無言で携帯型拳銃を取り出す。


 金属音が鳴る。

 暗闇の中で、事件の輪郭が静かに形を帯び始めていた。



---


 そして──アテンダントのワゴンが近づく


 アインクラッド号の通路。

 乗務員アテンダントが、料理のワゴンを押してゆっくりと歩く。


 その背後から、影が近づく。


 マグルが右手の“携帯型拳銃”に指をかける。


「まずは……

 ブタどもの“晩飯”を消すところから始めようか」


 乾いた、嫌な音が、ワゴンの背中に向けて響いた。

次回、テロの予兆が迫る!

永瀬たちは、それに気づくのか?

そして、義人と美浦は?

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