EP45 稲毛アウルズの長くて最悪な1日 その2
ついに迎えたグランドオープン!
お客さんと賑わいを見せる中、ある人物が見つめていて……?
「ご注文をお伺いしまーす!」
美浦はトレイを片手に軽快にホールを動き回り、
人気レトロ筐体が並ぶ奥のゲームコーナーへと足を運んだ。
「――さぁっ! 私の相手をしたい勇者はどこだっ!」
声を張ると、ファンたちがざわつき出す。
対戦タイトルは、伝説のアーケードレーシング。
『爆走!ドリフト乙女レーサー』
2015年に爆発的ヒットを記録し、
2055年の今では“幻の名作”としてマニアの垂涎の的。
8ビットには、その希少筐体が奇跡的に残されていた。
「僕が相手だ!!」
ひときわ強い声が上がる。
本職のレーシングドライバー。
その鋭い眼光が、美浦へ挑戦状を叩きつけた。
「いいね! プロを倒せたら気持ちよさそうだし!」
美浦はすぐさまシートへ腰を下ろす。
その目つきはもはや“勝負師”。
対するドライバーも闘志むき出しでペダルを踏み込んだ。
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VRゲーマー VS 現役レーサー、
「GO!!」
シグナルが消え、二人の“異種バトル”が始まった。
プロレーサーは完璧なロケットスタートを披露。
エンジンを痛めないセミアイドリングのクセまで染み付いた本物の技。
「この人、ガチだ……!」
美浦は舌を巻く。
しかし彼女は フルダイブVRタイトル『ドリフトスターズ』の全国最上位勢。
異常な反射神経と処理能力はプロの領域すら凌駕する。
「でもね……勝つのはわたし!!」
感覚のキャリブレーションが一気に噛み合い、
美浦のマシンがプロの背後から牙を剥いた。
「この土壇場で追いつく!? 面白いッ!!」
抜きつ抜かれつ──
一進一退の激闘に、ギャラリーから悲鳴のような歓声が響く。
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一方その頃──店内オペレーションは地獄の戦場。
「クリームソーダ入りましたー!」
「焼きそば大盛りふたつ追加っ!」
厨房では義人がフル回転で動き回っていた。
オーナーの神谷と軽口を叩く余裕もない。
「1日店長って……戦場なんだな……」
「君らが来てくれなかったら、絶対回らなかったよ」
だがそのとき──
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店外に、地鳴りのような悲鳴が響く。
「通り魔だぁぁぁぁ!!」
甲高い叫び声が店内を貫いた。
義人が表へ走り出ると――
そこには、
スタンナイフを振り回し無差別に襲う高谷
地面に倒れ、血を流す通行人たち。
「消えろ……キラキラ世代は全員消え失せろぉ!!」
高谷は逃げる女子高生へ拳大のアスファルト片を投げつけ、
肩に命中。少女は絶叫しながら転げた。
「高谷!!!」
神谷が飛び出す。
「どうしてだ……どうしてこんなことを!」
「お前だよ、神谷!!
世界のトップチームを“1日店長”に呼んで、キラキラ世代を祭り上げて……!
俺たち真面目世代を踏みにじったのは、お前だ!!」
「……世界の毒、ね」
義人が前に出る。
「そんな理由で、人を殺そうとしてんのか?」
「黙れキラキラァァ!!」
高谷がスタンナイフを構えて突っ込んでくる。
だがその瞬間――
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もうひとつの“影”が、突如現れた
「そこまでだ!!」
道路の向こうから、制服姿の集団が列をなして現れた。
「私たちは――
全日本学歴復興委員会・香川支部!!
これより“コンセプトカフェ閉店”を執行する!!」
「学歴復興委員会……だと!?」
神谷の顔が蒼白になる。
学歴至上主義を掲げ、
キラキラ世代を“非生産階級”として排除しようとする武力集団。
「この店は教育に悪影響を及ぼし、
若者を堕落へ誘う“低俗文化”である!!
故に、我々が排除する!!」
さらに続けて、リーダー格の女・初代が叫ぶ。
「総員、戦闘態勢ッ!!
抵抗する者は殺して構わん!!
学歴社会復興のため、
キラキラ世代を1匹残らず駆逐せよ!!」
高谷と、武装集団。
二つの“憎悪”が合流し、
8ビットは地獄の入口へと変わる。
まさに——
「コンカフェ狩り」開戦。
次回、三つ巴の大乱闘騒ぎ!
8ビットはどうなるの?




