EP44 稲毛アウルズの長くて最悪な1日 その1
パイレーツスクワッドとの激戦を終えた稲毛アウルズは翌日のグランドオープンに備えて準備をし始める。
その一方で、学歴復興委員会も8ビット襲撃に向けて準備をしていた……!
更衣室で衣装に着替える美浦。
鏡の前で、先輩キャストがぽつりと漏らした。
「ねぇ、みぽりん……“コンカフェ狩り”、聞いたことある?」
「最近ニュースになってるやつですよね。
……ここも狙われたりするのかな?」
ティントを唇にのせながら、美浦は眉をひそめる。
推しストーカー、金銭目的、逆恨み。
理由はさまざま。ただ、一つの共通点がある——
狙われるのは、“輝く人”だ。
「まあ、心配しすぎても仕方ない!
今日はあんたとパートナーが1日店長なんだから、ビシッと決めな!」
「はいっ!」
メイクを仕上げ、美浦の表情に気合が宿る。
---
その頃、義人は神谷と開店前の打ち合わせをしていた。
「……俺たちを1日店長にしたのって、やっぱりあの件の対策ですか?」
「そういうのもあるけどね。
でも本音は——夢を見せたかったんだよ。俺自身の、子どもの頃からの夢を」
神谷は元・地元製造業の社員。
仕事は順調とは言えず、叱責も多い。
それでも彼は諦めず、クラファンで資金を集め、店を開く準備を進めた。
しかし、その過程で——
「神谷! 店なんて出すな! お前、犯罪者になるぞ! それは風営法違反だ! 今すぐクラファン止めろ!」
同期・高谷が執拗に妨害してきた。
理由はひとつ。
“夢を語る神谷が、眩しすぎた”。
だが神谷は折れなかった。
「高谷。俺はやるよ。応援してくれる人がこんなにいるんだ」
「バカか! 俺たちみたいな凡人が夢なんて見ていいと思ってるのか!」
何度も口論になった。
それでもクラファンは成功し、資金が揃い、物件が決まり——
退職届を出した神谷は、2ヶ月間の準備を乗り越えた。
彼を支えたのは、
“この店で働きたい”と志願した若いキャストたち。
「……神谷さん、本当にありがとうございます。
1日店長を任せてもらえるなんて光栄です」
「世界で戦ってきた君たちの力……この店で見せてもらうよ!」
---
グランドオープン。
「「いらっしゃいませ! 8ビットへようこそ!!」」
義人と美浦を1日店長に迎えて、
レトロゲームカフェ&ギャラリー 8ビット がついに開店!
アウルズのファンが全国から列をなし、SNSは瞬く間に祭り状態に。
「みぽりん、サインお願いします!」
「義人くん、握手してくれ!」
店内は開店直後から満員、大盛況。
笑顔、歓声、カメラのフラッシュ。
“夢の始まり”の空気に満ちていた。
---
◆ だが——外には“影”がいた。
人混みの向こうで、憎悪に濁った瞳が店を射抜く。
高谷純一(37)
神谷の同期。
努力し続けながらも報われず、疲弊し、挫折した男。
そして今は——
“夢を叶えた者”を憎悪する怪物へ堕ちていた。
「神谷……お前は眩しすぎるんだよ……!
キラキラ世代なんて、毒なんだ……!」
手の中には、違法武器——スタンナイフ。
スタンガンで麻痺させ、刃で刺す。
2055年には完全に違法な、殺意の象徴。
「働いてる奴ら全員を……世界の見せしめにしてやる」
美浦が笑顔で接客している。
義人が厨房と連携してオペレーションを回している。
その光景は、
高谷にとって“自分が失った未来そのもの”だった。
「——終わらせる。
夢を見た奴らも。
夢を叶えた奴らも。
そして神谷、お前も……!」
そう、彼はまだ知らない。
今日のイベントが 「稲毛アウルズ 1日店長」 であることを。
つまり、そこには——
世界級のヒーローが揃っている ということを。
運命はもう止まらない。
最悪の“初日”が、静かに幕を上げる。
次回、8ビットに危機が!?
個人的な恨みを持つ高谷が美浦達に襲いかかる!!




