EP40 番のふくろう、大海を知る prologue
アリサとの模擬戦で新技を完成させた美浦。
その一方で梅田は8ビットを潰すための計画を企てていて……?
「はい。必要装備はすべて手配済みです」
めぐみが静かに報告する。
拳銃、電磁スティック。国家が触れれば即犯罪の兵器。
学歴復興委員会──その裏に潜む黒い供給源。
そこに武器を流しているのは、評議連合の密輸網だった。
表では立憲自由連盟政権への激しい批判。
裏では、国家転覆を狙う影の軍事組織。
「めぐみくん。今日は高松で花火大会だったな」
「はい。初夏の名物です」
「そうか……ならば、今日はここまでだ。家族とゆっくり過ごし給え」
「ありがとうございます、先生」
めぐみが去ると、室内に静寂が落ちた。
「家族……か」
梅田の瞳が、わずかに揺れた。
かつて妻と娘を奪った交通事故──飲酒運転の、理不尽な死。
その日から、男の心にはぽっかりと穴が空いた。
正義は死んだ。希望も死んだ。
残ったのは、復讐と破壊へ向かう情念だけだった。
「……献杯だ」
ウィスキーを注ぎ、ひとりグラスを傾ける。
「あの事故さえなければ……」
梅田はグラスを置き、ふらつく足取りで宿舎へと向かった。
国家の暗部は、確かに動き始めていた。
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「うわぁ〜!!」
浴衣姿の美浦が、浜風の中で満面の笑みを浮かべる。
赤いリップが、浴衣の白地に鮮やかに映えている。
「そんなに走ると転ぶぞ、美浦」
義人も浴衣姿で歩く。
今日は──ふたりにとって初めての“ちゃんとしたデート”。
場所は高松・大的場海浜公園。
年に一度のアニソン夏祭りと花火フェスの香川公演だ。
「本当に神谷さんって良い人だよね……! 奥さんがもうすぐ出産だからって、私たちに譲ってくれて!」
「デジタルチケットのID譲渡、最近はほんと便利だよな」
屋台の香り、波打つ海、溶けていく夕焼け。
すべてが“夏の初恋”の舞台装置みたいだった。
「よしくん、リンゴ飴買いません?」
「定番のやつだな。行くか」
甘いリンゴ飴を食べながら散策するふたり。
美浦がくるりと回って浴衣を見せつける。
「どう? 似合ってる?」
「……似合いすぎてて困る」
「へへ、よくできました」
彼女の浴衣は白地に金龍と銀龍。
義人のは黒地に獅子牡丹。一流ホテルのレンタルとは思えない迫力だ。
その時──
「会場のみなさん、お待たせしましたー!!」
MCの叫びとともに花火が夜空へ咲き誇る。
「WACA主催! アニソン夏祭り・香川公演、開幕です!」
大歓声。光と音の嵐。
高松の夜が最高潮に達したその瞬間──
「君たち、少し良いかな!」
黒服の男が、義人たちの前に現れた。
「……誰ですか?」
「私は南天堂メテオール統括の伊吹健太。緊急なんだ!」
「南天堂!?」
日本最大のVRゲーム企業の一角。その名が、ふたりを固まらせた。
「うちのチームが食あたりで倒れた! お願いだ、君たちに出てほしい! 報酬も出す!」
「対戦相手は?」
「端末に転送した!」
義人が確認すると──
相手は、世界大会常連のプロチーム・海賊分隊。
「……世界ランカーじゃねえか」
「くぅー! 最高の相手じゃん!!」
美浦はテンションMAX。
一方、義人はわずかに緊張の色。
「正直、頼れるのは君たちしかいない!」
伊吹の必死の声に、義人は深く息を吸った。
「……分かりました。俺たちがやります」
「やったぁぁ!!」
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闘技ステージのライトが赤と青に染まる。
海の男たちが入場し、客席が揺れるほどの歓声が起きた。
「稲毛ァァァアアウルズゥゥゥ!!」
MCの絶叫。
高松の夜が震えた。
義人と美浦がステージへ歩み出た瞬間、
世界中のゲーマーが震えた2人の名が、高らかに響いた。
「BSOオープンでガードランドと引き分け!
正式稼働後のトーナメント優勝!
飛ぶ鳥落とす勢いの──稲毛アウルズ!!」
観客のテンションは限界突破。
世界ランカー vs 日本の新星。
海賊チームのキャプテン・ジェニーが牙のように笑う。
「面白ぇ。世界トップの荒波ってやつ、乗りこなしてみろや!」
「ジェニー、相手が誰であれ──勝つだけよ」
リーナの冷たい微笑みが、会場全体に電流を走らせた。
いま、
ふくろうと海賊の“世界戦”が幕を開ける。
次回は熱いバトル!
海賊とふくろうのガチンコバトルを見逃すな!!




