EP39 キラキラ世代は有名税の対象項目です
滝坂の逮捕で一件落着し、義人たちは両親の墓参りに。
学校のメタバース空間でテコンドー部の練習を始めると、新入部員・アリサが美浦に強化試合を申し込んできた!
「──始めッ!」
義人コーチの合図が練習場に響く。
一瞬の静寂。その中で、アリサが地を蹴った。
「やぁあッ!」
飛燕のような飛び蹴りが、美浦へ一直線に襲いかかる。
「甘い!」
美浦は両腕をしならせ、パリィのように弾き返す。
金属音が鳴ったかと思うほど鋭い防御だった。
「パ、パリィ!? 武器もないのにそんなガードあり!?」
体勢を崩したアリサのガードが一瞬だけ開く。
「もらった!」
美浦の上段回し蹴りが、音速の弧を描いてアリサの肩口をとらえた。
──3ポイント。
美浦の蹴りには、それだけの説得力があった。
「さすがキャプテン!」 「伊達にチームの柱やってないからね」
二人は軽く拳をぶつけ、スポーツマンらしく笑い合う。
だが──アリサの胸の奥では、別の炎が燃えていた。
(父さん、母さん……あたし、ちゃんとキラキラしてるよ!)
◆
北海道の小さな田舎町。
父は地元コミュニティのリーダー、母はロシア料理店のシェフ。
裕福ではないが、愛のある家庭だった。
だが、12歳のある日を境にアリサの世界は変わった。
「お前さ、なんでこの街にキラキラネームなんていんの?」
「は? だっせぇんだけど」
それは、古い価値観を引きずるエリート主義者のはけ口だった。
相手は17歳の不良グループ。
社会のひずみを浴びてゆがんだ“エリート崩れ”たち。
「クリエイター? 無理無理。女は大人しく勉強してろよ」
父は海外出張。母は多忙。
アリサには逃げ場がなかった。
「さて……このガキ、どう料理して親に返してやろうか?」
「ボコって、親ごと躾け直してやるか! ぎゃはは!」
その瞬間だった。
「えいっ!」
乾いた衝撃音。
リーダー格の背中が吹っ飛んだ。
「な、なんだ!?」
そこに立っていたのは──美浦だった。
北海道との強化試合で偶然この街を訪れていたのだ。
「よってたかって女の子をいじめるなんて……恥ずかしくないの?」
静かな怒りがこもった声。
少年たちは逆上し、美浦に襲いかかった。
「行けーっ! 逆らったら殺すぞォ!」
「隙あり」
拳が閃き、義人のストレートがリーダーの顔面を撃ち抜く。
「いだいっ! ママにも殴られたことないのにぃ!!」
「じゃあ……この子が受けたぶん、返してあげよっか?」
少年たちの顔が蒼ざめた。
その頃には警察も到着し、全員逮捕。
「君たちの親御さんには、厳正な教育指導が入る。覚悟しなさい」
警官の言葉に、少年たちは絶叫した。
──そして静寂。
「大丈夫?」
美浦がアリサに手を差し伸べる。
「お姉ちゃん……あなたは?」
「ふふっ、今はまだ秘密。でもいつか“ふくろうスクール”においで」
その一言が、アリサの運命を変えた。
◆
そして現在。
アジアカップで美浦が大活躍したのを見て、アリサは家を出てふくろう山小屋へ。
「あの時キャプテンが助けてくれなかったら……あたし、ここにいない!」
アリサが再び突っ込む。
連続の蹴りが美浦の胴へ次々と突き刺さる。
「アリサは俊敏性と体幹のコンボ型……バランサータイプか」
義人が冷静に分析する。
「コーチ、そんなの見ただけで?」 「着地の安定。蹴りの初速、体の軸。どれか欠けても成立しない戦い方だ」
アリサが踏み込んだ。
「決めるッ!」
右足が閃光のように奔り──と、
“単発”だと思った美浦の読みを裏切り、
アリサの蹴りは次の瞬間、滝のように連鎖し始めた。
ドドドドドドドッ!!
「これが……あたしの初めての必殺奥義!」
アリサが叫ぶ。
「──チェインガン・ラッシュ!!」
怒涛の連撃に美浦はガードしきれず、一気に10ポイントが入る。
「やるじゃない!」
「まだまだ強くなりますから!」
「じゃあ……私も行く!」
美浦の瞳が鋭く光る。
同時にアリサが身構えた。
「後ろ上段……!」
美浦の得意技──だが不安定が課題だった技。
義人が“ガンカタ式フットワーク”と組み合わせて改良させた“もう一つの奥義”。
「奥義──サイクロン・ノヴァ!!」
爆風のような回転蹴りがアリサのガードを貫き、決着した。
「そこまで! 勝者、美浦明石!」
義人の声が響く。
アリサと美浦は、互いに満面の笑みで拳を合わせた。
「みんな、今日の練習はここまで! 俺と美浦はログアウトする!」
◆
一方その頃。
香川県庁・梅田の事務室。
「……計画の進捗は?」
「順調です。例の男と母親──処理完了しました」
めぐみが淡々と報告書を置く。
「滝坂は“アレ”の中毒死、ということで?」
「はい。禁止薬物フレグランスの過剰摂取として処理済みです」
「母親は?」
「同僚の党員が釈放後、人のいない場所で……片付けました」
梅田は満足げに頷く。
「ふふ……これがシン・評議連合だ。用途が尽きた駒は消す。それだけだ」
「はい」
「では、高松のコンセプトカフェは閉鎖だ。
学歴復興委員会には──例の“あれ”を渡したんだろう?」
めぐみは無言でうなずいた。
新たな闇が動き始めていた──。
次回はお祭りデート!
何やら熱いバトルの予感が……!




