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バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
35/35

EP35 悪魔の媚薬とテコンドー

美浦はかつて人気子役として名を馳せていたが、ある悲劇により、教育虐待の被害者に!?

それでも、義人が自分を救ってくれたおかげで明るく振る舞っていた。

その一方で、コンカフェ狩りが始まろうとしていて!?

 体格の良い中齢の男が出迎えた。

 

 梅田だ。

 

「あんたは確か、知事補佐の!」

 

「梅田といいます。お話もさることながら、ここでは辛いでしょう」

 

 そう言いながら梅田は、滝坂をホテルのレストランへと案内した。

 

 内装は豪華なシャンデリアが煌めく上質な空間。

 

 こんな高級ホテルで食事ができるのは夢にも思っていなかった。

 

「まぁ、好きなものを注文してくれ。宿泊費も私が負担しよう」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 滝坂は取り敢えずビールを注文した。

 

「お母様のお仕事は、高校の教諭でしたね?」

 

 梅田は、高めのワインを注文しながら滝坂に尋ねた。

 

「ええ。母は一流企業に入れば、人生は豊かになると言いました。しかし、教育自由化によって私の人生は狂わされました」

 

「それはお気の毒に。政府が義務教育を撤廃した故に、こんなしわ寄せが来ることを理解していない」

 

 梅田の言葉はある意味正しかった。

 

 教育自由化によって義務教育が撤廃された。

 

 そのしわ寄せとしてエリート主義が衰退、多くの名言家系が大量没落という事態まで起きている。

 

 この事態を受けて政府は救済策を行っているが、それでもごく一部しか行き届いていないのが現状。

 

「母は義務教育の再登用と、公立教育機関の再建を訴えています。フリースクールを廃止させないとあるべき時代には戻れない」

 

「そのとおりです。このままでは個性が輝く時代が続き、あなたのようなエリートが苦しむことになります」

 

 梅田は瀧坂に優しく、悪魔のように囁く。

 

 それが、国民共産党のやり方。

 

 使えそうな人材を全国から集め、捨て駒のように捨てては集めていく。

 

「俺は、個性が輝く時代を終わらせたい。母を釈放して義務教育再登用の礎を作りたい」

 

 滝坂は、個性が輝く現在をこの手で終わらせたいと言う思いをつのらせた。

 

 それだけに今の時代を終わらせないと、エリートは苦しむ。

 

「そのためのお金が欲しい。あんたがやろうとしていることなら俺も協力させて欲しい」

 

 滝坂は母親の保釈金が必要と梅田に訴える。

 

 たとえ、報酬金が高額な闇バイトでもやってやる覚悟。

 

「では、保釈金を私の知り合いの弁護士に送金しておきましょう。これでお母様の安全は保証されることでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

 滝坂が梅田の約束を鵜呑した。

 

 母親の保釈は全くの嘘で、滝坂のような使えそうな若者を使い捨ての駒として利用する。

 

「今夜は遅い。詳しい話は明日の朝朝食もかねて行うからめぐみくんと一緒に寝ておきなさい」

 

 梅田はめぐみに瀧坂と一夜を過ごすよう指示する。

 

「よろしいのですね? 彼の母親はどうしますか?」

 

「その件は心配するな。私の知り合いが処理をする」

 

 梅田は滝坂の母親を殺す手筈を整えていた。

 

「では滝坂様、私が泊まるお部屋へ」

 

 めぐみに案内され、滝坂は彼女が泊まる部屋へ案内された。

 

「で、何をすれば良いんだ?」

 

「簡単なことです。あなたは私の言うことを素直に聞くだけです」

 

 めぐみはそう言うと、喉の奥が見えるくらいに口を大きく開ける。

 

 ジルコニア結晶体で作られた白い歯が上下きれいに並んでいる。

 

 喉奥から放たれた呼気が瀧坂の鼻をくすぐり、快楽に溺れさせた。

 

「な、何だこの感覚は……、心地良いな……」

 

 滝坂がめぐみの呼気を嗅いで快楽を覚えたのは女性に人気の飲む男性媚薬フレグランス。

 

 一粒飲めば、呼気や体臭に男性にしか感じない快楽成分の分泌を促す危険な薬物。

 

 国際人道条約に基づき、使用が一切認められない禁止薬物として販売規制がかけられた代物だ。

 

「これであなたは私の部下。この快楽に溺れたかったら、先生の言うことに素直になること」

 

「わかりました……!」

 

 滝坂はそういうと目を閉じた。

 

 快楽作用に溺れて、眠りに落ちた。

 

「先生、彼の洗脳は完了しました」

 

「よろしい。君もゆっくり休み給え」

 

 こうして、悪意の夜は静かに更けていった。

 

 その頃、美浦と義人はホテルのジムでテコンドーのスパーリングをしていた。

 

 美浦の回し蹴りが義人のミットに快音を鳴らせる。

 

「いいぞ! コントロールが安定してきた!」

 

「11月のアジアカップまでまだ時間があるから、万全にしないと!」

 

 毎年11月に開かれるテコンドーアジアカップ。

 

 美浦は、女子団体部門でふくろうスクール代表として出場する。

 

 まだ数カ月先だが、練習できる時間を見つけてやり込んでおかないと鈍ってしまう。

 

 BSOにおいても、バトルトーナメント優勝に輝いてもまだ先を見据えて今できることをやっている。

 

「でも、後ろ回し蹴りの精度はちょっと粗が目立つね」

 

「あれがどうしてもうまく決まらないの! 今年のアジアカップ、私たちがマイクさんと引き分けたから私たちの地位を引きずり下ろそうと躍起になり始めてる」

 

 そう、マイクとミシェルに引き分けたことで稲毛アウルズの名は世界に知れ渡っている。

 

 そのため、テコンドーアジアカップではそんな美浦を倒して自分こそはと名乗りを上げる者たちが腕を磨き始めている。

 

「美浦、後ろ回し蹴りよりも良い技がある」

 

「どんな技?」

 

 義人の提案に食いつく美浦。

 

「BSOのダブルハンドガンの時に思いついた技だ。テコンドーとガンカタを組み合わせたちょっと複雑な技だが、お前なら習得できるはずだ」

 

 そう、義人はガンカタというアニメや映画で出てきた武術を再現しようと研究している。

 

 美浦のテコンドーに落とし込めば、アジアカップでも優位に戦えるのではと睨んでいた。

 

「そうなると、BSOにログインして練習する必要があるわ」

 

「今日はもう遅いから、明日のお仕事が終わってからやろう」

 

 そう、今は夜の9時。

 

 ジムが閉鎖する時間だ。

 

 急いで部屋に戻り、一緒のベッドで寝る。

 

「ねぇ、よしくんは私の胸、気持ちいいかな?」

 

 そう言いながら美浦は義人の右腕に抱きつく。

 

 柔らかな乳房の感触に挟まれて、義人はドギマギする。

 

「み、美浦さん。そういうのは……」

 

「だーめっ。よしくんを抱き枕にしないと眠れない気がするの」

 

 美浦はそう言いながら義人に思い切り抱きつく。

 

 乳房の感触が身体にダイレクトに伝わる。

 

「美浦……」

 

「だからお願い。こういうときだけは、甘えさせて」

 

 悲しげな瞳と声で美浦は義人に甘える。

 

「わかったよ」

 

 義人はそんな美浦を優しく抱きしめる。

 

 美浦に腕枕をしてあげる義人はどこか頼もしかった。

 

「へへへ、よしくんの心臓、良い音出してる」

 

「それはどうも」

 

 いつの間にか、美浦は寝息を立て始めた。

 

「さて、俺も寝るか」

 

 義人もまどろみに身を任せることにした。

 

 明日はプレオープンイベントで、明後日がグランドオープニングイベント。

 

 美浦と義人の最悪な職場体験が、幕を開けようとしていた。

次回、プレオープンイベント開始!

激アツなバトルとキュートなお給仕に酔いしれてください!

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