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バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
34/35

EP34 過去の傷は今を縛り、今を誇れば未来への翼になる

職場体験で香川県高松市へと向かう義人と美浦。

受け入れ先で挨拶を済ませて、ホテルで一泊することになる。

そして、美浦の口から衝撃の過去が飛び出していく。

「私は、高松市で生まれ育ったの」

 

 美浦は、自分の出自を話し始める。

 

「パパとママは日本を代表する俳優で、私はその華やかな世界で活躍していた」

 

 美浦の家は日本で一番幸せな家族として、日々話題になっている。

 

 美浦自身も、5歳の時に子役として様々な映画やドラマに引っ張りだこ。

 

「元子役だったのか」

 

「今でも事務所との繋がりはあるよ。よしくんと芸能界に行けたら嬉しいなぁ……」

 

 美浦からの誘いに、義人はドキッとしてしまった。

 

「そして、私はカラオケ国民大会小学生の部で優勝した」

 

 人気カラオケ番組で、美浦は小学1年生で優勝した実績があった。

 

「そんなすごい君がどうして?」

 

「6年前のことだった」

 

 それは、美浦と両親が休みの日に家族で愛媛までドライブへ出かけたときのことだった。

 

「美浦、今日は大好きなみかんパフェが食べれるよ!」

 

「ありがとう、ママ!」

 

 両親が大好物を奢ってくれるだけあって、美浦は大はしゃぎだった。

 

 その時だった。

 

「お、見えたぞ! あそこがみかんパラダイスだ!」

 

 みかんが食べ放題の観光農園へ到着した。

 

 家族団らんのひとときを過ごす美浦は幸せの最高潮にいた。

 

「みかんパラダイス、確かそこで……!」

 

「反教育自由化主義者たちの抗議デモに巻き込まれた」

 

 美浦は両親と楽しくみかん狩りを楽しんでいたところを、

 

「教育自由化、反対!」

 

「政府は伝統を蔑ろにしている!」

 

 観光農園に反対活動家が押し寄せた。

 

 その数20人。

 

 それでも、

 

「放っておこう」

 

「ですね」

 

 美浦の両親は美浦を連れて別のエリアへと移動する。

 

「有名人も同罪だ!」

 

 一人の活動家が声を上げる。

 

「個性を活かしたみだらな姿で人々を弄んでいる!」

 

「芸能人は断罪するべき! 有名税として全額徴収するべき!」

 

 活動家たちの行動はエスカレートしていく。

 

「もう帰りましょう」

 

「そうだね」

 

 両親に連れられて、美浦は帰りの車に乗っていく。

 

「この親子は、われわれの生贄として断罪する!」

 

「芸能界に見せしめる! わたしたちの正義を!」

 

 活動家たちは美浦の両親に襲いかかる。

 

 父親は暴行、母親はナイフで腹を突き刺されて死んでいく。

 

 美浦は、親戚を名乗る女性に連れて行かれた。

 

「みかんパラダイス有名人一家死傷事件、君はその被害者だったのか」

 

「その後の1年は地獄だったわ」

 

 美浦は、親戚を名乗る親子から冷遇を受けていた。

 

「あなたは夢を見てはいけない! あなたは有名税としてずっと苦しんで生きてくの! 勉強しなければ勝ち残ることはできない!」

 

 その女性は、教育虐待の加害者。

 

 息子は、エリートとして他人を蹴落としてきた。

 

 勉強漬けという地獄の日々が続き、美浦はそれに耐えきれなくなった。

 

「それで、親戚の隙をついて僅かなお金を持って逃げるようにでたの」

 

 美浦は、今自分が千葉県にいることがわかった。

 

 そして、数日後に行く宛もなく彷徨っていたところを不良たちに絡まれ、義人によって保護された。

 

「君は?」

 

「……美浦」

 

 その時の美浦は、感情もまったくない。

 

 まさに生ける屍。

 

「取り敢えず、俺の家に来いよ。飯くらい食わせてやるから」

 

 そして、藤宮家に招かれた美浦はまずは身体をきれいにした。

 

「あの子、よっぽどひどい目にあってきたんだね」

 

 美浦の全身が傷だらけだったのを義人は覚えていた。

 

「美浦、俺の父さんは南天堂って会社に努めているんだ。父さんに頼んで孤児支援プログラムを適用させるから、それまで俺の家で暮らして」

 

 義人の優しい声に、美浦は感情を取り戻す。

 

 そして、義人に抱きついて泣き崩れた。

 

 嬉しかった。

 

 自分を受け入れてくれた存在がいてくれたことを。

 

「あの時、よしくんがいなかったら、今の私がいなかったなぁ」

 

 そう言いながら美浦は、ぶっかけうどんのタレをうどんにかける。

 

「そして、今じゃふくろう女子テコンドー部のキャプテンだしな」

 

 海老天をかじりながら義人は苦笑いをする。

 

「よしくんは私の恩人だから、ずっとそばにいたい」

 

 そんな美浦を義人は守りたいと、心に誓った。

 

 そして一方、

 

「クソがっ!」

 

 ガラの悪そうな23歳の男性が高松市をうろついていた。

 

 名は滝坂(たきさか)

 

 美浦の親戚を名乗る女性の息子。

 

「母さんが逮捕されて、俺が通った最後の公立大は廃業。おまけにアイツは世界から注目されている……!」

 

 そう、私立・公立の大学や高校などの教育機関は、教育自由化によって姿を消していった。

 

 医科大学や芸術大学などは、大型専門学校という形で生き残り、若者たちの就職基盤構築に生かされている。

 

「この世界は狂ってやがる。自由で多様性のある時代は悪だってことを何故世間は気づいてくれないんだ」

 

 エリート主義者たちにとって、個性が輝く時代は地獄も同然。

 

 勉強こそがより良い大学に行き、就職に有利になるという考えがこの時代では不要だった。

 

 それ故に、理解できない者達が時代に取り残され、行き場を失っていく。

 

 滝坂が日雇いのバイトを転々とする。

 

 とあるアルバイト先では、

 

「えー? 勉強ばっかりでつまんないの。マジでダサいね、エリートくん」

 

「今どき勉強すればいい職場に着くなんて、マジ時代遅れ! モテナイでしょ?」

 

 などと、女の子からバカにされてきた。

 

「母さんの公判は明日だって言うからな。なんとかして母さんを釈放するための賄賂を稼がないと……!」

 

 そんな時だった。

 

「滝坂さんですね?」

 

 不意に女性の声が響く。

 

「んだよ? 俺は今気が立ってるんだ」

 

「あなたをスカウトしに来ました。もしかしたらお母様を助けるかもしれません」

 

 滝坂が振り返ると、そこには青いリクルートスーツを身にまとった女性が経っていた。

 

 細身ながらもふくよかな乳房。

 

 紫のルージュを引いた唇が不気味さを醸し出し、そこからジルコニア結晶体で出来た白い歯が顔を見せる。

 

「あんたは?」

 

「私はめぐみ。梅田吉蔵先生の秘書を務めております」

 

 めぐみはそう言って瀧坂に自分の名刺を差し出す。

 

「俺に出来ることは何だ? 金になるなら闇バイトでも請け負うぜ?」

 

「その前に、先生とお食事でもしませんか? お腹が空いていれば、何も始まりませんし」

 

 めぐみに言われるまで、滝坂は数日間も食べていないことに気づいた。

 

「いいぜ。牛丼特盛りでも食わしてくれるなら、あんたの奢りでも構わんさ」

 

 滝坂は、今夜は腹いっぱい食えることに期待した。

 

 車に揺られ、着いた店は香川県有数の高級ホテルのレストラン。

 

「おいおい、こんな豪華なホテルで飯が食えるってんのかよ! 俺バイト代しかもらってねーのに!?」

 

「安心したまえ。宿泊費などは私が負担しよう」

次回、梅田吉蔵が登場!

彼の語る事件の詳細をお伝えできればと。

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