EP33 香川での研修へ!!
優勝の余韻を味わう稲毛アウルズをよそに、国民共産党の計画は着実に進んでいた。
そして、職場体験の時期が来て義人と美浦は香川県にあるコンカフェの職場体験に参加することに!?
リニア新幹線で揺られる義人と美浦。
「そう言えば、ワークコスプレイヤーズフェスティバル中止の責任を取らせる形で、都議会議員の星間ニチョが逮捕されましたね」
「あのフェミ男子は、コスプレイヤーを動く着せ替え人形と差別してきたから自業自得だな」
先日、池袋で開催予定の大規模コスプレイヤーズイベントを性的大量搾取として、運営に強制中止命令を下した責任を取らせる形で国民共産党所属の都議会議員が逮捕された。
これにより、国民共産党への批判がさらに強まることは目に見えている。
国民共産党は、自分たちとは関係ないと否認していた。
「でも、香川県と言えば、讃岐うどんだね!」
そう言いながら美浦は、コスメポーチを開く。
美浦は、こう見えて韓流オタク女子。
韓流コスメを常に愛用している。
しかも、人気ブランドの最新作からベストセラーまで様々。
特にティントや美容液はかなりこだわる。
「おまえ、気合い入れすぎだろ……」
「明後日がオープン初日で、稲毛アウルズが1日店長だから、奮発したの!」
美浦がエヘンと乳房を揺らした。
程よく大きく、形の良い乳房が義人をドギマギさせた。
『間もなく広島、広島。 中国四国高速鉄道へのお乗り換えは……』
乗換駅である広島駅から、中国四国高速鉄道に乗り換えて目的地の香川県・高松市へ向かう。
その道中で、
「へへへ、この前通販で買ったこのリップ、ハイエールの自信作なんですよ! 発色とツヤもちが良くて……」
「わかったから美浦! 取り敢えず忍者・ジャガ丸くんでもやらないか?」
そう言って、義人はモバイルゲームアプリを起動させた。
忍者・ジャガ丸くんは、モバイル端末向けのトップビューアクション。
敵を手裏剣だけで倒しまくってゴールを目指すシンプルさが、今もなお根強い人気を誇っている。
「あ、そのゲーム確かバトルロイヤル要素があっていいね!」
美浦も早速プレイする。
ソーシャルディスプレイゲームは、2055年現在においてささやかなレトロゲームブームの1役を担う。
「行くぞ!」
義人がプレイを開始する。
バトルロイヤルモードでの対戦で、美浦以外にも他のプレイヤーが揃っていた。
画面タッチ操作でキャラクターを操り、相手プレイヤーを撃破していく。
「あっ! レアアイテムみっけ!!」
美浦は偶然にもレアアイテムを見つける。
「そいつをよこせ!」
義人が美浦に襲いかかる。
「よしくんには、あげません!」
美浦が反撃する。
こうして楽しい移動時間は過ぎていく。
目的地の高松市街は平成レトロ漂う雰囲気を残しながらも、観光客やオタクで賑わっていた。
「えーと、わたしたちが滞在するホテルの宿泊費は受け入れ先が出してくれるから良いとして、」
「取り敢えず、挨拶程度にするか」
そう、市街地にある受け入れ先「レトロゲームカフェ・ギャラリー・8ビット」は90年代のゲームセンターをコンセプトにしている。
90年代に流行ったアーケードディスプレイゲームが遊べるだけあって、多くのレトロゲームファンが訪れる店としてオープンを迎えようとしている。
そのため、稲毛アウルズをオープニングイベントの目玉にしようとしていた。
「あ、あそこじゃない?」
美浦が指さした先には、いかにも90年代にありそうなゲームセンター風の看板。
8ビットがすぐそこにあった。
「こんにちは!」
「やぁ、君たちが稲毛アウルズだね?」
美浦と義人をいかにもゲームが好きそうな好青年が出迎えた。
顔立ちもよく、スラリとした身長。
いかにも色男という印象。
「僕の名前は神谷哲史。君たちが働く8ビットのマスターシェフなんだ」
神谷が礼儀正しくお辞儀をする。
そのふるまいに何処か紳士的な印象を感じる。
「良いんですよ。わざわざ俺達を1日店長にしてくれるなんて」
「君たちを使うのはいささか心もとなくてね。それに、君たち学生を受け入れるというのも県知事がなんとかしてくれたんだ」
神谷はそう言いながら、機材の搬入を続ける。
「と、言いますと?」
「現知事の補佐官、梅田吉蔵からの圧力でね。県外からの研修生受け入れには申請を出す必要があるんだ」
梅田は、香川県に代々続く名門政治家の家系生まれ。
その家も教育自由化の荒波に飲み込まれ、没落せざるを得なかった。
現在の知事・平清正の補佐を務めながら、国民共産党議員としてある事件に関わっていると噂されている。
「さぁ、今日は疲れただろう。明日はプレオープンイベントで君たちはホールを任せてもらうよ」
神谷がこの時間は遅いと言って、向かいにあるビジネスホテルを指さした。
このホテルで、3日を過ごすという。
「あ、ちなみに香川のネットワークは1日2時間の制限がある。昔はテレワーク禁止条例なんてものを強いていたらしいから気をつけてね」
紙屋に注意を促され、義人たちは止まり先のホテルの1室へ向かった。
有名ホテルチェーンOBOホテルが運営する都市型ラグジュアリーホテル。
そんなホテルで上質な時間を過ごす学生は、2055年現在においてステータスの1つとなっている。
「えへへ、このお部屋には露天風呂がついているんですよ! あと、ご飯は無料ルームサービス式だって!」
美浦に言われて、義人は二人きりの混浴を想像する。
一糸まとわぬ美浦の白い素肌、柔らかく大きな乳房。
それを想像しただけでも……、
「み、美浦、先に入ってくれ! 俺は後からでいい」
あまりの恥ずかしさに、顔を赤くする。
「だーめ。よしくんと一緒に入るの、夢だったの!」
どうやら、美浦にとって義人と混浴するのは夢の時間で、憧れでもあった。
「は、はい……」
渋々承諾する。
この部屋に設置された露天風呂はヒノキと人工大理石で作られ、非日常感を演出していた。
「へへへ、ちゃんとタオル巻いてますよ?」
タオルを身体に巻いた美浦といっしょに湯船に浸かる義人。
タオル越しにわかるスタイルの良さが、彼をドギマギさせる。
「なぁ、美浦」
「なに?」
「君の両親と今までのこと知りたいんだ」
それは、5年間一緒にいたからこそ、義人は美浦のことを知りたかった。
「そうだね。この近くにパパとママのお墓があるから、明日の仕事が終わったら行ってみない?」
美浦は、両親の墓参りを提案する。
「いいぜ」
義人はそう言いながら美浦といっしょに風呂から上がる。
テーブルには、既にルームサービスで注文した讃岐うどん定食が並んでいた。
「ちょうどいい機会だから話すね。私のすべてを、よしくんに知ってほしいから」
美浦はその重い口を開く。
義人は彼女の壮絶な過去を知ることになる。
次回、美浦の過去が明らかに!?
そして、プレオープンに向けて準備も!?




