EP30 なにわ人情ふくろう時雨 第3楽章
ついに始まった決勝戦!
お互いの意地とプライドが激突する中、東西文化の違いも激突している!?
「確かに。でも近年のアンドロイド技術なら普通にたべれますよ?」
ジョージがレイナにこんな助言をする。
「ホントですか!?」
レイナは目を輝かせた。
最近のアンドロイドは、医療用人工臓器技術を応用する事で限りなく人間に近い存在になっていく。
そのため、人間と同じように食事が出来ると言う。
「さて、トークはここまでにして、」
「今は、試合ですね!」
気を取り直して、戦況を見つめる。
「やっぱり、ワカモレたこ焼きは邪道ですか!?」
「あんなアメリカンたこ焼き、たこ焼きと認めへん! てりたまたこ焼きも、うちらには邪道や!」
フォーミンときりかは、何故かたこ焼きのフレーバーでバトルしながらトークしている。
と言うのも、関東から北のエリアでは様々なフレーバーのたこ焼きチェーンがある。
そのチェーン店が大阪へ進出したところ、思わぬ総スカンを食らっていたという。
「豊洲金たこ、僕は定番のお好みソースとからしマヨネーズが好きですね」
「ジョージさん、私は明太チーズも外せませんよ!」
ジョージの隣りにいたのは、人気声優の月宮ななか。
決勝戦のスペシャルゲスト解説に呼ばれていた。
抜群の歌唱力と演技のレパートリーで人気は絶好調。
もう、アラフィフとは思えない美貌とスタイルの良さは、美魔女声優としての地位も築いた」
「そう言えば、私の声ってななかさんをサンプリングしたんですよね?」
「そのとおり! レイナちゃん、私の声を大事に使ってね」
「はい! あ、走行している間に残り2分半! 折り返しですよ!」
そう、ようやく折り返しに入る。
フォーミンはロウリュウに持ち替えて攻撃する。
きりかはルシファーを廻してそれを防ぐ。
(ここは、なにかボケを作らないと!)
フォーミンはSNSでの大喜利投稿を研究して「この画像でボケて」と言う大喜利投稿にも参加している。
「これなら!」
フォーミンが何かをひらめく。
それは、脳内にプラズマが走るかのごとく素早いひらめきだった。
「白桃と黄桃、人の意識で実る桃は?」
即興のボケに、
「それは、卒倒や!」
きりかがキレの良いツッコミを見せると、会場は大爆笑した。
「アホか! 今は試合中やで!」
大阪気質が仇となり、
「隙を見せたね!」
フォーミンの接近を許してしまった。
「しもた!」
きりかは驚く間もなく、フォーミンから後ろ飛び回し蹴りを食らってしまう。
「自分、テコンドーやっとるのか!?」
「こう見えて、テコンドー5段です!」
美浦は韓流オタク女子ゆえ、ふくろうスクール内に女子テコンドー部を創設。
現在は主将として全日本フリースクールテコンドー選手権で2度の優勝へと導いてきた。
「が、ガンナーがテコンドーってこんなんありかいな!?」
きりかが素っ頓狂な声を上げる。
「本当は、ゲージが尽きたときの護身術ですが!」
フォーミンが果敢に接近する。
「近接戦では負けません!」
ハイキックできりかの頭を捉え、吹き飛ばす。
「あーっと、フォーミン選手、凄まじいテコンドー技できりか選手を圧倒! これは意外な才能だ!」
「リアルでの武術経験は今のFDVRに強くでてきますからね」
レイナとジョージが実況する。
「あの子、テコンドーやっているなんて驚いたわ。 私の時代なんて、韓流ブームの最先端だったからね」
ななかは呑気にハットグを頬張る。
そんな状況下で、ヨシととたまもはすさまじい剣劇を繰り広げた。
「あんさんとこの相方、すごい武術の才能をお持ちですなぁ!」
「なんてたって、あいつは強くなりたいという願いから始めたんだ!」
美浦がテコンドーを始めた理由は、たまたま映画館で見たテコンドーを題材にした韓流アクション映画「フォーチュンドラゴン・昏き森の眠り姫」がきっかけだった。
グリム童話を題材にした作中で見せた人気韓流スターの華麗なテコンドーアクションに、美浦はすっかり惚れ込んだ。
もともと気弱だった美浦は、主演俳優の「人は必ず強くなれる。ほんの一握りの勇気と決意だけで、大きく変われる」という言葉に心を打たれた。
以降、ふくろうスクールに入学と同時にテコンドーの武術鍛錬プログラムを受け、現在に至った。
(そう言えば、あいつが韓流にハマったのは、フォーチュンドラゴンシリーズだったよな)
「ドアホが! なに思い出に浸っとる!!」
たまもにツッコまれ、ヨシとは我に返った。
とにかく、今は試合に集中するしかなかった。
「フォーミン!」
「了解!」
ヨシととフォーミンは戦う相手を切り替える。
たまもときりかはそれに応じる。
「自分らの心意気は、ほんまにすごいなぁ!」
「それはどうも!」
フォーミンはたまもに目掛けて飛び蹴りをお見舞いさせるが、
「スキル、舞風!」
双剣のカウンタースキルで弾き返された。
(この人は、高機動近接戦闘タイプ。距離を取って戦えば!)
ロウリュウのゲージ残量を見る。
BSOでは射撃武器はゲージ残量性になり、それが尽きると再チャージに時間がかかる。
(ゲージは回復しきってる! これなら!)
ラビット20に持ち替えて弾幕を張る。
「うっかりすると、足元すくわれるで!」
たまもはかしがらに持ち替えてすべての弾丸を叩き落とす。
「やっぱり遠距離対策をしてる!」
「うちは射撃は下手やから、接近戦を極めとるのよ!」
フォーミンが舌打ちする中、たまもは笑顔を見せる。
一方で、ヨシとはきりかと戦っていた。
「ディヴァインスレイブ!」
強力な一太刀をきりかに浴びせるヨシと。
「甘いで!」
ルシファーでそれをパリィするきりか。
「そう言えば、ふくろうマルシェで販売してる酒粕メロンを知ってるか?」
「あぁ、滅多に市場に出回らない幻のメロンやろ? うちのオカンが食べたくてしか無いんよ」
ふくろうマルシェで売っている酒粕メロンの話題で盛り上がる。
「でも、この試合が終わったら、家のところに送っといてなぁ!」
「あぁ!」
ヨシとはきりかに約束した。
「さぁ、みんな! いよいよ決勝戦も残り1分をきった!」
「ここからが最高のハイライトですね。MAVアタックの発動タイミングが鍵を握りますから」
そう、残り時間はもうわずかしかなくなった。
レイナとジョージは固唾をのんで戦況を見守る。
「この試合の後は、私の新曲リリースイベントもあるので、みんなよろしく!」
ななかもテンションが高めで自信の新曲リリースイベントを宣伝した。
「このままでは、判定に持ち込む可能性も否定できませんね」
「たしかに、時間内に決着がつかない場合はそうなりますからね」
決着のときは近い。
お互いのチームは、それをわかっていた。
次回はいよいよ決着!
東西の決戦、その終結の瞬間を見逃すな!!




