EP25 それぞれの思いと陰謀は織りなす糸のように
新潟米っとの洗脳されていた事実に気付いたヨシとはなんとか彼らを解放する。
このBSOに迫っている悪意に、薄々気づき始める2人は、さらなる戦いに身を投じていくことになる。
「バウンドフィッシャーズが負けた!?」
翌日のBSOロビーで、ヨシとが叫んだ。
というのも2回戦のリザーブマッチで大阪の強豪にバウンドフィッシャーズが負けたらしい。
「そのチームは、キタのおかん。大阪のおかんで構成されたチームで、豪快で派手なプレイスタイルが特徴なの」
フォーミンがBSOのロビーメニューを開いて、決勝戦で戦うかも知れない相手を調べる。
そこには、バウンドフィッシャーズとキタのおかんの対戦が映し出された。
最初は、バウンドフィッシャーズが有利に立ち回り、誰もがバウンドフィッシャーズの準決勝進出が決まったと、思った。
「ほな、おばちゃんパワーをみせたる!」
キタのおかんが大阪人情パワーを発揮。
ヒョウ柄のおばちゃんロボットが初期装備の拳銃でバウンドフィッシャーズにダメージを与える。
相方のおばちゃんエルフが、これまた初期装備のロングブレードで痛烈無比の一撃を加える。
「見晒せ観客!」
「金をかければ勝つと思うたら、大間違いやで!」
MAVアタックもスキルも、アイテムも無い。
大阪のおばちゃんパワーが生んだコンビプレイにバウンドフィッシャーズは負けた。
「アイテムも無い上に初期装備で勝つとは……」
「まぁ、基本無料だから、お金をかけないで極めたのかも」
対戦動画を見て、稲毛アウルズは準決勝に備えた。
相手はワルキューレツインズ。
スウェーデン出身のハイティーンコンビ。
「フォーミン、俺の分は?」
「バッチリ、買ったわ。いま転送るね」
フォーミンが、ショップで購入したアイテムの一部をヨシとに転送する。
ヨシとは、ストレージ内のアイテムを確認する。
「お、よくこんなアイテムを買えたな」
「限定ガシャ回したらSLRアイテムが出たから、ヨシとくんが気に入ると思ったの。私なんか、SSR止まりだから」
そう言いながら、稲毛アウルズはコロシアム内へ入る。
またしても、大歓声に包まれた。
「さぁ! いよいよ稲毛アウルズとワルキューレツインズの準決勝・第1試合を行います!」
レイナがハイテンションで高らかに叫ぶ。
ヨシととフォーミンが観客に手を振って応える。
続いて、ワルキューレツインズも入場した。
スタイルの良さとカリスマ性を兼ね備えたアンネと、堅実なサポートで支えるリィン。
彼女達が参加した理由は一つ、TGBMGCのランウェイを歩くこと。
「あなた達が、世界が認めた学生チーム?」
アンネがヨシとに訪ねた。
「そうだけど、俺達になにか?」
「全力であなた達を倒すわ! 私達にはあのランウェイで見返したい人達がいるの!!」
アンネとリィンが臨戦態勢を整える。
「フォーミン、この人たちは本気だ! こっちも本気にならないと!」
「わかってる!」
フォーミンとヨシとも武器を取る。
会場が熱狂と興奮に包まれる。
両チームに緊張感が走る。
「それでは、準決勝第1試合! 稲毛アウルズVSワルキューレツインズ、試合開始!」
先手を取りにかかるアンネ。
その手には、両手剣「ラグナレク」が握られていた。
「タイタンインパクト!」
アンネが飛び上がって思い切り振り下ろす。
「フルパリングカウンター!」
ヨシとはウィンドブレード改で制度の上がったパリィとカウンターの合せ技をお見舞いする。
「さすが、風剣のサムライは伊達ではないわね?」
リィンが冷静に分析する。
「風剣のサムライ?」
ヨシとは首を傾げた。
「世界中のゲーマーが貴方を認めているの、これはその敬意と畏怖を込めてつけた二つ名」
ヨシとが世界中のプレイヤーから注目されているのは、マイクたちからライバルと認めた。
その影響は世界全土に波及。
欧米ではヨシとの存在はゲーム雑誌に取り上げられ、アジア圏内では要注意プレイヤーとして注目されている。
「でも、勝つのは私たちワルキューレツインズ!」
「誇り高き戦乙女の戦い、見せてあげる!」
アンネとリィンが近接武器を構える。
「こっちも受けて立とう!」
「全力で楽しんで!」
稲毛アウルズも気合を入れる。
リィンがレイピア「スレイプニル」でフォーミンに襲いかかる。
「スキルカード、ミラーウォール!」
フォーミンがスキルカードで刺突攻撃を防ぐ。
「そのカード、SSRの!」
「5連ガシャで引き当てた1枚です!」
驚くリィンにドヤ顔のフォーミン。
「あなたの相方って、意外と幸運ね!」
「そいつはどうも!」
ヨシととアンネは剣を切り結びながら笑い合う。
その様子をログインしていた幸太郎が見守る。
「さすがは藤宮チーフの息子、不正検知でアバターを救助するのは見事でしたよ」
同僚から言われ、
「ははは、そう言うなよ。 あの子は私たちの一員であるから」
「そうなると、今年のクリスマス、南天堂の株価が暴騰しますな」
そう言うと、運営から連絡が入った。
「上層部の方々から? これは、米政府からの情報共有……!」
南天堂幹部陣から、米軍が調べたノーブレス・アンノウンについてわかったことを送ってきた。
「すまない、一旦ログアウトする」
そう言うと、幸太郎は送られた機密ファイルを開封する。
「Mr藤宮へ、アメリカ政府は貴殿らと共同でサイバーテロリズムに備えていきたい。
というのも、昨日軍がノーブレス・アンノウンのデータ残骸の回収に成功し、分析を進めた結果、貴国の共産党が開発した洗脳媒介プログラムであることがわかった。
貴殿に共有したのは、BSOと言う世界最高峰のゲームを安全かつ適切なサービスの向上に役立てていただきたいという、私の心遣いだ。
近い内に息子が新しい大統領に就任する。
その時は、ぜひともプレイさせて欲しい。
アメリカ政府元大統領ロベルト・V・ケーニッヒ」
そう、次期大統領であるアルベルトの父が政府高官を通じて情報を提供してきた。
「これは、偉大な大物からのご指名とは」
幸太郎は苦笑するしかなかった。
そのころ、BSOではワルキューレツインズと稲毛アウルズの死闘が更に過熱していく。
アンネが武器をクロスボウガン「フェンリール」に持ち替えて攻撃する。
ヨシとは飛んでくる矢をすべてパリィしていく。
フォーミンは近接用のナックル「メタルインパクト」でリィンに肉薄する。
「女の子が肉弾戦するなんて、バルニュやでも見たの?」
「最新作のアイドルファイターズ、結構好きなんだ。特に主役の声優さんが」
リィンとフォーミンがオタク女子トークを繰り広げ、
「俺なんか、超機動兵士バンダム・Bクアッドのレキュが好きだけど?」
「私はソドニア公国のブルワーズ中佐が好きですけど?」
ヨシととアンネも同じトークだった。
次回、ついに決着!
お互いの意地とプライドがぶつかり合う!




