EP22 漁師魂、荒波と誇りを胸に
バウンティドラゴンズに課せられた人民共産党の圧力を跳ね除け、苦い勝利を収めた稲毛アウルズ。
しかし、トーナメントは始まったばかり……。
「さぁ、トーナメント1回戦・第4試合は、新潟米っとの勝利! 2回戦第2試合で稲毛アウルズと対戦することが確定しました!」
レイナがハイテンションで実況する。
「新潟米っとは、手数を活かした戦法を武器にしていますからね。これは、注目です。」
ジョージが熱心に解説する。
会場は大いに盛り上がる。
「バウンティドラゴンズの分まで、頑張らないとね」
「そうだな」
稲毛アウルズは次の試合を見ることにした。
「そして、いよいよ大注目のトーナメント1回戦第5試合! バウンドフィッシャーズVSビッグスターズ!!」
バウンドフィッシャーズが会場内に入ると、
「大洗の誇り!」
「アニメ聖地の意地を見せてやれ!」
大洗から応援に来たファンが声援を送る。
ビッグスターズはブラジルが生んだスタープレイヤーの名コンビ。
ジョディとボブのおバカキャラコンビ。
「ジョディ、今日の主役は誰だい?」
「それは私達よ!」
ふざけ合っているようにも見える。
「ビッグスターズは、一見ふざけているようにも見えて、かなりの実力者です」
「見た目で侮ると、痛い目を見ますよー!」
レイナとジョージが会場を盛り上げる。
「兄貴、」
「全力で勝つ!」
バウンドフィッシャーズが気を改める。
決勝で、稲毛アウルズと戦うために。
両者が睨む。
国の威信と地元の誇りがぶつかり合う。
バトルが始まった。
「兄貴、俺が先行する!」
モヒカンが重機関砲「ベルセルク」で牽制を仕掛ける。
凄まじい弾幕が、ビッグスターズに襲いかかる。
「させるか! ファラフェルシールド!」
ボブが強化系スキルを発動する。
すると、ジョディとボブの体をバリアが包み込む。
バリア系のスキルは、一定ダメージを超えると破壊される上に、再使用可能時間がやや長い。
「バリアを破らないと、ダメかっ!」
スキンヘッズがそう言うとレーザーバズーカ「リック・ブンドド」で攻撃する。
放たれた高圧レーザーが、バリアを消し飛ばす。
「ナイスだ兄貴!」
モヒカンはそう言うと武器を両手剣「シュピーゲル」に持ち替える。
「喰らえ! 剛破・獣王斬!!」
モヒカンが勢いよく振り下ろす。
地面を切り裂くほどの凄まじい剣圧がビッグスターズに襲いかかる。
「私に任せて!」
ジョディがそう言うとアイテムストレージからスキルカードを取り出す。
スキルカードは、あらゆるスキルがインストールされた使い捨てアイテム。
「タイタンウォール!」
スキル不足を補うためや、ここぞという切り札として使用される。
先程使用したカードの効果で、地面から土壁が出現して防御する。
「あーっと! ビッグスターズ、防御スキルでバウンドフィッシャーズの猛攻を凌ぐつもりだ!?」
「スキルカードを使うタイミングが重要ですね」
レイナとジョージが実況と解説を行う中、
「スキル、ガトリングスコール!」
モヒカンがベルセルクで猛攻を仕掛ける。
銃口から凄まじい弾丸の豪雨が降り注ぐ。
土壁の耐久値が徐々に削られていく。
「ジョディ、俺が奴らを引き付ける!!」
ボブが壁の裏から飛び出す。
狙いはモヒカンのターゲットマーク。
「もらった!!」
「甘い!」
スキンヘッズの迎撃を受け、ボブはHPを大幅に削られた。
「回復薬も残り2本!」
アイテムストレージにある回復薬を使って回復する。
しかし、回復するどころかダメージを受けてしまった。
「馬鹿なっ! これってまさか!?」
ボブは気付いた。
バウンドフィッシャーズが罠を仕掛けたことに。
「設置型回復妨害トラップ・リバースメディスン!」
スキンヘッズが設置したトラップは、回復アイテムの効果をダメージとして変換する。
回復アイテム対策として極めて有効なアイテム。
「回復なんてさせないぜ!」
「名付けて、電気ショッカー大作戦!」
マグロ漁船にある装置にちなんだ回復アイテムを逆手に取った戦法が功を奏し、バウンドフィッシャーズは優位性にたった。
「行くぜ! MAVアタックだ!!」
バウンドフィッシャーズがMAVアタックでとどめを刺しにかかる。
バウンドフィッシャーズの背後から大きな津波が押し寄せる。
二人はその上に漁船に乗る。
漁師魂が生んだ、絆の一撃!
「「海流激烈衝!」」
大津波を伴う激しい一撃が、天空コロシアムを飲み込む。
「荒々しい漁師魂の熱気が、大津波を巻き起こした!? その大津波は、見事2回戦進出の切符を掴み取った!!」
「マグロの大トロが食べたいですね」
バウンドフィッシャーズが見事2回戦へと駒を進めた。
その様子に、稲毛アウルズも胸を撫で下ろした。
「次に戦うのが楽しみだね」
「ほんとうだ」
そして、ノーブレス・アンノウンも勝ち上がり、明日行われる2回戦へ進出する猛者たちが揃った。
このまま順調に行けば、決勝でバウンドフィッシャーズと稲毛アウルズのリターンマッチが期待できる。
何事もなければ、の話だ。
一旦ログアウトし、義人は時刻を確認する。
もうすぐ18時。
携帯で美浦と連絡を取る。
『あ、よしくんおつかれ』
「美浦もお疲れ。優勝したら全国デジタル体育祭でまた活躍しようぜ!」
『そうだね。あ、来月のオープンスクールで月刊・衝撃VRの公開収録があるって!』
美浦が言うには、来月のオープンスクールで有名ゲーム雑誌の公開インタビューが入っているという。
そのためには、決勝戦に出て、優勝するしかなくなった。
「美浦、明日に備えて飯を食うぞ!」
『私はもう食べたんだけど……』
そんな会話が繰り広げられる中、
「そうか、興行解体のみなさんが壊してくれたのか」
かずおが対馬から送られた報告書を見てほくそ笑み、酒の肴のクリームチーズを口にする。
「若者の個性に溢れた結婚式など、今や害悪です。先生のお力がなければ、興行解体は逮捕されたでしょう」
興行解体の代表がかずおに日本酒を注ぐ。
興行解体は、とある有名コスプレイヤー同士の結婚式を襲撃し、中止と強制破局に追いやった。
逮捕されたのは、闇バイトで興行解体に雇われたインドネシア系移民。
「人材の闇バイヤーがいる限り、私達は摘発されません。先生もご安心してください」
「ありがとう。では、今月の献金だ」
かずおは代表に賄賂として3000万円を口座に振り込んだ。
「ありがとうございます。これで弊社はしばらく繋いでいけるもの」
「私が国民共産党代表でいる限り、君たちの安全を約束しよう」
蠢く悪意は、色濃く、そして濃厚に。
次回から2回戦!
さらなる激戦をお楽しみに!!