EP10 若き番のふくろうは己に勝たねば挑むは難し
投稿者: ふくろうVRマスター
日時: 2055/04/25 21:00
BSOファンのみんな、集まれ! 第9話のあらすじドロップだぜ! ヨシトと美浦のIDSCCへの道、ふくろうの山小屋の癒し、マジで心揺さぶられた! ネタバレ注意な!
【あらすじ】
熱戦後、マイクがヨシトと美浦をIDSCC(国際デジタルスポーツ・クリスマスチャンピオンシップ)のシード枠に推薦! 「最高の晴れ舞台で決着だ!」とマイクのプロ魂炸裂。引き分けの賞金(2500クレジット、ドローペナルティ)はBSOのリアルな経済をチラ見せ。供花が「厳しいレッスン」を予告、稲毛アウルズの試練が始まるぜ!
美浦はふくろうの山小屋で、AIロボ「ワンポ」(創英製、セラピー仕様)を抱きしめ、マイク戦の引き分けを自慢。ヨシトからのメール(ハーブトマト&オープンスクール話)で絆がキラリ。美浦がテスラリンク・プロ(南天堂のVRギア)でエピックドラゴンにログイン、ネカマ仲間のリーフェイと合流。そこでの雑談で、ケーニッヒ(米大統領候補、反共産主義)の伏線がチラリ! 一方、国民共産党は村瀬代表が参院選見送りを宣言、VR批判を続けるが、ケーニッヒの「大統領令」が暗雲を呼ぶ…。
【感想】
山小屋の星空とワンポ、めっちゃ癒された! ハーブトマトカレー食いてえ! IDSCCのワクワク半端ねえけど、バトルなしでちょっと物足りない。ケーニッヒの伏線、マジで何!? スレ民、IDSCCの予想や党の動向語れ!
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コメント
スナイプ姫: 美浦のワンポ抱っこ、絶対可愛い! IDSCCガンバ!
VR信者: ケーニッヒやばそう…BSOの自由守れよ、ヨシト!
カレーマニア: ハーブトマトカレー、ふくろうスクール行きてえw
「うおおぉぉっ!」
義人が仮想空間で剣を振るい、
「甘いッ!」
供花がパリィで弾き飛ばす。
「そんなんじゃ、マイクに勝てないわよ!」
この日、義人は供花の指導でクリスマスチャンピオンシップに向けたトレーニングプログラムをやっていた。
「先生、もう一度お願いします!」
「じゃぁ、休憩20分を挟んでパリィの精度を上げるシミュレーションプランCを実行するわよ!」
義人はふくろうスクール仮想空間トレーニングルームを出る。
ふくろうスクールは、千葉市花見川区大日町に創立。
全校生徒数は1200人規模で大半がデジタルスポーツ学科に通っている。
ここでは、世界最高峰のデジタルスポーツ教養とクリエイティブ専攻、社会復帰に向けたライフスキル教養を受けられる。
そのため、千葉県の内外からプロを目指す若者たちが集まっている。
ふくろうの山小屋はふくろうスクールからほど近いため、そこから通う学生や美浦のような孤児も少なくはなかった。
「ヨシくん、おつかれ」
美浦が無料ドリンクのコーラを持ってきた。
「ありがとう」
「小泉先生も熱が入ってるね。私だってもっと射撃精度向上や、スタミナ管理ができるよう精進しなくちゃ」
「そうだな」
ここ最近稲毛アウルズの評価は日に日に高まっている。
あのマイクたちを相手に引き分けたという事実が地元メディアに取り上げられ、ゲーム雑誌やティーン雑誌の巻頭特集に組まれるほど。
故に、有名税は高い。
毒親たちの間では、「稲毛アウルズの解散を求む」をスローガンに掲げ、ふくろうスクールに抗議文書など送りつけていた。
「また毒親連中が学校に抗議文を出してる」
偶然学校掲示板に送られてきた抗議文書に目をやる義人。
「ふくろうスクールへ、
私達は稲毛アウルズの即刻解散とIDSCCの推薦出場取り消しを強く要望する。
これは子どもたちの未来のため、親の尊厳を保つための正当な行為である」
裏を返せば、自分たちよりも優れた存在を快く思わないというエゴが見え隠れしている。
「さて、もうすぐカリキュラム再開だ」
「あ、それは私も受ける予定だから」
美浦と義人は供花が提唱したシミュレーションプランを受けることにした。
「準備はいいかしら?」
供花の声が空間内に響く。
このシミュレーションルームはARを用いた仮想敵を出現させ、身体で感覚や戦術を叩き込ませるという実戦訓練施設。
フルダイビングVR時代でのEスポーツ教育ではふくろうスクールが世界で最初に取り入れている。
「今回は、マイクとミシェルをエミュレーションしているから、決勝で戦うつもりで行きなさい!!」
そう、ふくろうスクールには過去の強敵をエミュレーションした疑似人格プログラムと模擬戦をすることができる。
当時の世界チャンピオンから、歴代の卒業生までがデータとして保存されている。
「マイクさんたちを相手にするなら!」
「それなりの覚悟じゃなきゃ!!」
二人は身構えた。
ARゴーグル越しに、マイクとミシェルのエミュレーションプログラムが出てきた。
「いい? AIだからといって油断しないでよ?」
供花が注意を促す。
「わかっています!」
「本気で行きます!」
義人と美浦は固唾をのむ。
目の前にいるのは、世界最強。
データとはいえ、油断ができない。
「それでは、シミュレーションプランC 、開始!」
供花の合図と同時にエミュレーションプログラムたちが行動を開始した。
「美浦! 戦術プランSD-90!」
「了解!」
義人は美浦の後ろに下がる。
美浦は突撃銃でミシェルのデータに攻撃をかける。
義人は、マイクのデータを居合で迎撃する。
「戦術プランSD-90、美浦ちゃんが前衛で義人くんは中距離型後衛で行う稲毛アウルズの戦術パターン。稲毛アウルズは多彩な戦術プランを臨機応変に切り替えることで、アマチュア大会では全国5位に輝いた実績を誇る」
供花は義人たちの戦術パターンを冷静に分析する。
「それなら、ちょっといたずらさせてもらうよ」
供花はエミュレーションプログラムにある悪戯をした。
「クソっ! 前と同じになってしまう!」
「でも、なんか違和感がしない?」
美浦が言うように、今回のエミュレーションは何かが違う。
目を凝らすと、
「お、俺と美浦!?」
なんと、義人と美浦のエミュレーションプログラムがそこにいた。
「先生、これは一体!?」
「愛のムチよ! さぁ、自分自身に打ち勝たないとマイクたちには勝てないわよ!!」
美浦は理解した。
自分自身を超えなければ、世界に通用しない。
それは義人も同じだった。
「「やってやろうじゃないか(よ)!!」」
二人は自分自身に打ち勝たなければ先へは進めないことを悟った。
そして、結果は……。
「先生、いくら俺達自身をエミュレーションしたとはいえ、マイクさんたちの戦術パターンを組み込むことはないよ」
惨敗だった。
理由は義人たちのデータをベースに、マイクたちの戦術パターンを組み込んだ特注品が用意されていた。
「世界最高峰の戦術を組み込んだ自分自身たちに勝たなければ、世界の強豪たちと渡り合うのは難しいわよ?」
供花が言うように、IDSCCは世界各国から凄腕の猛者たちが集うデジタルスポーツのオリンピック。
そんな世界最高峰の舞台で優勝するには、最高峰の戦術を打ち破らなければならなかった。
「小泉先生、この後は?」
「そうね、お昼を食べたら下校しなさい。ときに休むのもゲーマーの仕事よ」
そう、ふくろうスクールはフレキシブル登下校システムを採用し、何時に登校しても下校しても自由である。
「じゃぁ、学食でお昼を食べたら私の部屋に来ない?」
「美浦と一緒か。父さんたちに連絡入れておくよ」
とりあえず、ふくろうスクールの学食でお昼を食べることにした。
学食は定番のカレーからヴィーガンメニューまで様々。
これは、国や宗教派閥に合わせた食文化の違いを取り入れた結果。
義人は大好物のカツカレーを、美浦は朝から何も食べていなかったのでチャレンジメニューの特盛ティーン様ランチを注文した。
学食名物特盛ティーン様ランチは総重量2kgのティーン専用お子様ランチ。
エビフライ5本にオムライス1kg、唐揚げや特大ハンバーグと言った、子供が好きそうなものを巨大化したチャレンジメニュー。
制限時間は30分と、割と短め。
「いただきます」
美浦はそう言いながらその特大プレートを食べ始める。
(そう言えば、美浦は12歳の頃はろくに食べてなかったから大食いに目覚めてしまったんだっけ?)
カツカレーを頬張りながら美浦の笑顔を見守る義人。
そんな巨大な胃袋を持つ美浦とともに過ごす時間が、何よりも愛おしかった。
そうこうしている間に、
「ごちそうさまでした」
あっという間に完食した。
完食の特典は学食1食無料の食事券、失敗すれば皿洗い2時間という。
そんなわけで、次回はオープンスクールと毒親たちの動きが……!?
義人たちの活躍を見逃すな!!