EP9 嵐の前の静けさに、悪の牙はその輝きを隠す
投稿者: アウルズ応援団
日時: 2055/04/18 20:30
よお、BSOファンのみんな! 第8話のあらすじ投下するぜ! ヨシトvsマイクのガチンコタイマン、マジで鳥肌もんだった! ネタバレ注意な!
【あらすじ】
舞台は都市遺跡、ヨシト(ウィンドブレード+デュアルレイブン)が、ハザードスクワッドのマイク(シュツルムヴェント+スカリオン)にタイマン挑む! マイクの「アサルトラッシュ」(双剣乱舞)に、ヨシトが供花仕込みのパリィで対抗! 隙間を縫う神業パリィに「やるじゃねぇ!」とマイクもニヤリ。マイクが双銃「ラピッドファイア」で弾幕展開、ヨシトはバックステップで回避も、マイクの突進がエグい!
ヨシト、起死回生の「居合・神居抜き」(刀カウンター)で迎撃! マイクの「いてぇ!」が響く中、ビットドローン(サポートアイテム、1マッチ3回)がレーザーで追い詰める。美浦からのフラッシュバン(命中低下想定)をヨシトが投げ、マイクの目を眩ませて廃屋で回復(HP+300、3回制限)。最終局面、ヨシトのパリィとマイクのカウンターパンチが交錯、互いのHPがゼロ! 「引き分けだな」の相打ちで、観客が「ヨシト! マイク!」と大盛り上がり!
最後、マイクがIDSCC(国際デジタルスポーツ大会)のシード枠推薦を宣言! ヨシトと美浦、ふくろうスクールの絆で世界に挑むぜ!
「インターナショナルデジタルスポーツ・クリスマスチャンピオンシップ……」
「そうだ。俺達からライバル推薦で出場させる。どの道、決着着けるなら最高の晴れ舞台で決着を着けようぜ!」
IDSCCは、自分たちがライバルと認めたプレイヤーをシード枠に推薦する制度がある。
これは、高い技術をもちながら埋もれて行くゲーマーを救済するためのIDSAの心遣い。
プロゲーマーの才能を少しでも多く世に送り出したいと言う願いから来ていた。
これにはヨシとも参加せざるを得ない。
「喜んで!」
ヨシとたちは快く受け入れた。
「おっと、今回の賞金だが、ドローペナルティでそれぞれに山分けだな」
マイクが言うには、各マッチで対戦相手の強弱に似合わせた賞金がそれぞれのプレイヤーに振り込まれるシステムがある。
より強いチームほどに支払われる賞金額が高く、所持残高に関係なく振り込まれるという。
今回は引き分けのため、賞金はそれぞれ2500クレジット分が振り込まれた。
「今日はこの辺にして、明日からは厳しいレッスンになるから、覚悟しておいてね」
ロビーに戻るやいなや、供花からレッスンが厳しくなることをヨシととフォーミンに告げた。
「聞いていたんですか」
「当然よ! あのマイク相手に引き分けたんだから」
供花は、とにかく自分の生徒を厳しく指導することを誓っていた。
「あはは……」
フォーミンは苦笑しながらもログアウトした。
美浦がいるのは、福祉法人「ふくろう財団」が運営する児童養護施設「ふくろうの山小屋」。
同財団が運営するふくろうスクールの学生寮も兼ねたこの施設は、事故や虐待などで親と暮らせない子供や県外から来たふくろうスクール生と共同で暮らしている。
美浦は南天堂の孤児支援プログラムでこの施設で暮らしていた。
「はな、おいで」
美浦はそばにいたAIアニマルロボット「ワンポ」に声を掛ける。
創英テクノロジーが開発したセラピーロボットで、感染対策でセラピー動物が制限される中でも導入できるため、患者のストレスを大幅に減らせるメリットが有る。
「えへへ、今日はすごいんだよ。あの世界最強夫婦に引き分けたんだから」
ワンポを抱きしめ、美浦は満面の笑みを浮かべた。
その時、美浦の端末がメールの着信を知らせる。
差出人は、義人。
「美浦へ、明後日は今月のオープンスクールだったな。
今日のことはここの連中にとっては自慢にできるから、楽しみで仕方ないぜ!
あと、ふくろうマルシェで吉宮さんが育てたハーブトマトが販売されるらしいぜ!」
千葉市立ふくろうスクールでは、毎月第3土曜日にオープンスクールを開催している。
これは、地域交流の一環として定期的に行われ、学生と地元住民のコミュニティを築き上げている。
美浦は、すぐに返信する。
「ハーブトマトを使ったトマトカレーは山小屋で人気のメニューだから、すごく楽しみ!
クラフト野菜は本当に美味しくて評判がいいから」
明後日が楽しみで仕方ない美浦は、ヘッドギア型VRシステム「テスラリンク・プロ」を装着する。
これは、南天堂が開発した家庭用VRシステムの業務版で、美浦が愛用しているのは、南天堂がふくろうの山小屋に無償で提供している。
美浦が選んだのは中国のゲームメーカー「海南エンターテイメント」が手掛ける中華MMORPG「エピックドラゴン」。
アジアの神話をテーマにした、日本でも大人気のゲームだ。
「あれ、フォーミンじゃない!」
フォーミンのもとに一人の女声アバターが駆け寄った。
見た目は女性で声は男。
名前は王李飛。
いわゆるネカマで、義人や美浦とはオンラインゲーム仲間である。
「リーくん、ヨシくんはいまお父さんと打ち合わせみたいで」
「そっか、それよりも聞いたか? 今年の大統領選挙」
リーフェイの口から出たのは、世界が注目する2055年度アメリカ大統領選挙。
共和党所属の若きエース、アルベルト・マイン・ケーニッヒ候補がグローバルファースト政権を掲げて出馬したという。
彼は、すべての共産主義者たちを「世界の癌」とみなし、若者たちと中間層の痛みを背負って立候補した。
「となると、秋の大統領選挙が鍵になりそうだね?」
そう、この先グローバルファーストを掲げるケーニッヒ次期大統領は、世界に大きな変革の嵐を巻き起こすことになる。
それは、多くの共産主義者たちを日陰に追いやる形で。
「それよりも、今日はどうするんだ?」
「今日はアカウントの保守点検的にログインしたから、掲示板を見てからログアウトするよ」
「そっか、でもフォーミンはなんかすごいことをやってきたような顔だけど?」
「あはは……」
そんな会話がエピックドラゴンで響いた。
次の日のこと、国民共産党本部では夏の参議院に向けて準備を進めていた。
対馬は千葉県の代表議員として出馬の意思を固めていた。
「先生、今なんと?」
代表執務室で対馬が驚いたのは、代表を務める村澤かずおの発言だった。
「今回の参議院への参加を見送ると言った。今の段階では党としての体制がまだ不十分だ」
「しかし! 若者を仮想空間から救うというお考えは、前共産党時代からの思想であることをお忘れなのでは!?」
対馬が言うには、村瀬はかつて東京の名門大学の教授として仮想空間について研究をしていた。
その過程で仮想空間への依存が現実崩壊を引き起こすのではと危惧し、著書である「仮想空間依存への警鐘」を出版。
多くの共産主義者に支持されたベストセラーでもある。
旧共産党ではその実績を買われて前代表の右腕として、若者を仮想空間から救うという思想を磨いてきた。
そして現在は国民共産党代表に就任し、体制が完全ではない現状ではまた同じ轍を踏むのではと踏まえて比例代表を見送った。
「先生のご判断は正しい。対馬さん、当面は様子を見たほうが先決だ」
実行部隊リーダーの倉田信也がそう言いながら対馬の前に現れた。
彼は東京の町工場で働いていたが、仮想空間による効率重視の業務体制についていけず、勤め先は閉鎖。
仮想空間に依存してい息子が自殺したことで、「VRが現実を壊してしまう」と言う結論にいたり、村瀬のもとへと足を進めた。
「倉田くんは先生のお気持ちに寄り添えるのね」
「先生のお考えは理解できますから」
二人は笑う。
「では、対馬くん、今年の参院選は出馬しないことでいいかね?」
「先生のお考えには従います」
対馬も腹をくくった。
「では、我が国民共産党は体制の確保に専念する。それまでは選挙活動は控えるように」
村澤は自分たちの体制が整うまでは、選挙に出ないことを決定した。
これが災いして、ケーニッヒ次期大統領による「ある大統領令」によって、致命的な打撃を受けることになる。
いよいよ、本格的の物語が動くわけですが、次回はふくろうスクールの月イチで開催されるオープンスクールの模様をお届けできたらとwww
次回もお楽しみに!!