EP1 青春は、ゲーム三昧!! (改稿)
「ありがとう、ヨシと!」
「お前のおかげで助かったよ!」
仲間たちから称賛を受けるヨシと、
彼らがプレイしたのは、とある事情でサービスを終了するMMORPG「シルフィードクロニクル」。
発売から10年以上も愛されてきた名作。
それが惜しまれつつもサービスが終了するというのは、さみしいものだ。
「いいって。今日が最後のプレイだったし、楽しかったよ!」
ヨシとがサムズアップと笑顔で返した。
<まもなくサービスを終了します。プレイヤーの皆様は直ちにログアウトしてください>
ゲーム内アナウンスが響く。
「じゃぁな!」
「現実でもまた会おう!」
パーティメンバーがログアウトする。
「俺もログアウトしますか」
ヨシとはステータス画面を開いてログアウトする。
「ただいま」
黒い短髪を書き上げ、義人はライトブラウンの瞳を開いた。
義人が現在いるのは、千葉県千葉市のとあるマンションの1室。
使用しているのは、父親が勤める老舗ゲームメーカーが開発したリクライニングチェア型VRゲームシステム。
プロゲーマー向けのシステムをリーズナブルな価格で提供するため、ある程度のデチューニングを施して完成させた。
この時代では、リクライニングチェア型システムが主流となっている。
「義人、朝ごはん冷めちゃうわよ!」
「わかってるよ」
母親に言われて、義人はリビングへと向かう。
家族構成は父と母、今は離れて暮らしている姉の4人ぐらし。
「どうだった? 最新の家庭用VRシステムは?」
「レスポンスが20%高くなったというのが素直な感想かな? あと、改善点があるとすれば、ネットワーク接続環境の不具合を修正すれば完璧かな?」
「貴重な意見だね。社に持っていくよ」
父・藤宮幸太郎は、日本の老舗ゲームメーカー「南天堂ホールディングス」の開発チーフ。
息子である義人をテストプレイヤーとして採用しており、その意見やデータを開発に活かしているという。
「いやはや、お前がいると開発に熱が入ってね。開発チームなんか、お前の率直な意見がないとダメみたいなんだ」
「お父さん、お仕事に行ったらどうです?」
母親の道子に言われ、
「わかってるよ。義人、今回の意見は参考にさせてもらうよ」
そう言って幸太郎は自宅を出る。
「義人、あなたも学校へ行ったら?」
「そうだった!」
義人は朝食を素早く食べ終えて学校へ向かう。
通う学校は公立フリースクール「千葉市立ふくろうスクール」。
不登校者の社会復帰を目的としているが、あえて通わない選択をした生徒も多数在学している。
共産党系からは「フリースクールは教育を衰退させる」と批判が高まる。
それでも不登校者の教育環境事情を考慮すれば、公立のフリースクールがあってもおかしくない。
「おはよう!」
「おはよう、よしくん」
門前で待っていたのは、2つ年下の幼なじみ明石美穂。
赤茶色のサイドアップでスタイルは控えめながらも発育が良い。
「美浦、今日は登校日か!」
「うん! 発作も出てないし、身体も安定してる」
美穂は過去の教育虐待からPTSDを患っており、路上でいじめられたところを義人が救ってくれた。
「お前をいじめたやつは、俺が法的に仕返ししてやる!」
幸太郎の人脈を頼りに、弁護士に依頼していじめの加害者に法的措置を食らわせた。
加害者たちは「法的措置は卑怯だ」と叫ぶが、義人のトドメの一打で加害者たちを号泣させた。
そして現在に至った。
「よしくん、南天堂が新しいゲームのベータテストを行うから、今度の日曜日に付き合ってくれない?」
「BSOだろ? そう言えば父さんが今度ベータテストをすると言って俺のマシンにインストールしてあったな」
「じゃぁ、決まりだね!」
二人は、学校で授業を受け、やってきた放課後。
「じゃぁ、今夜7時に!」
美穂と別れた義人は、行きつけのゲームショップへと足を運ぶ。
「よっちゃん、今日もアルバイト?」
「とりあえず、課金用のプリペイド3000円分の仕事がしたい」
ゲームショップで20分の棚卸しの手伝いをする。
こうしたスキマバイトは、高校生たちのステータスになりつつある。
「ちょうど、バトルステーツ・オンラインのベータテストが始まるって聞いたけど、よっちゃんは良いよな。お父さんのお手伝いもやってるから」
「へへへ、俺は南天堂のテストプレイヤーの一人ですから」
「でも気をつけたほうが良いよ。ここ最近じゃ<一般社会福祉法人・仮想空間統制機構>っていう連中が騒ぎ立てているのだよ」
店主によれば、FDVRの教育的影響を叫ぶ団体が声を上げて活動しているという。
自分たちが気に入らないものは排除するという感情が丸出しで、はた迷惑千万。
いつの時代でも、活動家を名乗って迷惑行為をするものは気持ちが良くない。
「でも、今じゃ活動規制法が施行されたはずだぜ?」
「それの撤廃を求める活動家も最近出始めたんだ」
「ふーん」
そんなこんなで、店主からバイト代として南天堂マネーカード3000円分を受け取り、急いで自宅に戻る。
「ただいま!」
「おかえり。お父さんがインストールしてくれたからいつでもできるわよ。ベータテストは晩御飯のあとにしてね」
「了解!」
道子に言われて義人は風呂に入ることにした。
バスルームに設置された多目的端末でラジオを聞く。
『日本共産党は度重なる政治的失態の責任を取る形で代表の真嶋陽一氏が辞任すると発表しました』
ラジオアナウンサーがこの日起きたニュースを伝える。
「やっぱり共産党の解体が加速し始めたというわけか」
そう言いながらメンズボディソープで体を洗い始めた。
体に感じるメンソールの心地よさが、義人を刺激する。
風呂から上がると、待っていたのは幸太郎だった。
「義人、晩御飯を食べ終えたらすぐにログインできるか?」
「おう! 南天堂が威信をかけて作ったゲームだから、楽しみだよ!」
それから1時間後、夕食を食べ終えた義人はすぐさまゲーミングシステムに座る。
「テスト版は今夜8時から10時までに設定されているから、無理するなよ」
「わかったよ!」
そう言いながら、義人は仮想の海へと突入する。
<Welcome to Battle States Online!>
バトルステーツ・オンライン、南天堂が威信をかけて開発したバトルロイヤル型FDMMOFPS。
『キャラクターをクリエイトします。 なお、変更はできませんのでご了承ください』
アナウンスに従い、義人はキャラクターをクリエイトする。
選べる種族は10種類あって、普通の人間からエルフ、はたまた未来的なロボットまで様々。
「俺のバトルスタイルは、高機動火力支援型だから……っと」
義人が選んだのはエルフでステータス振り分けは、体力と器用性と俊敏性を中心とした高速戦闘スタイル。
「武器は、色々あるな」
武器はナイフから狙撃銃まで様々。
ちなみに最大武器装備数は2つで、近接と射撃に振り分けて装備することが多い。
「お、これとこれが合いそうだ!」
選んだのは双銃「フール」と、双剣「デュアルシュナイダー」。
『こちらでよろしいですか? なお、装備はロビーのショップで購入できますので、ランクが上がったらご検討ください」
アナウンスの案内が流れ終わった途端、
「よし! 行くぜ!!」
義人はベータテスト版のバトステへとダイブした。
その一方で、
「私達は、現政権に対して不満を持っている!」
左翼勢力がオンラインで会議している。
『公立のフリースクールが乱立している今、わたしたちの描く教育のあり方が大きく変容しようとしている! これはあってはならないことだと、私は思う!』
『そうだ! 不登校は甘えであって、あえて登校しない選択は間違っていると証明したい!』
パヨクたちが喚き散らす中、
「みなさん、静粛にしてください」
一人の男が騒ぎを収めた。
「みなさんのお気持ちはよくわかります。現政権打倒のためには、まずは声を上げるのではなくて周りから崩すことを優先するべきではないでしょうか?」
『そうですね』
『今の私達にできることは、すべての若者コンテンツを規制することですね!』
悪意が、すぐそこまで近づき始めていた。
「さぁ、日本の平和を守るために」
そんなわけで、みなさんもお楽しみいただけたでしょうか?
実を言えば、かのシャングリラフロンティアと双璧をなすことを目指しています。
原作は私で作画は水野英多先生でwww(週刊少年ジャンプ連載で)
そんなわけで始まった「バトルステーツ・オンライン」、どうかよろしくお願いします!