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とんかつ

作者: まる

 わたしはとんかつが好きだ。サクサクの衣と、噛めば噛むほど溢れるジューシーな肉汁が堪らない。最近インスタで話題のミディアムなとんかつは邪道であり、中までしっかり火の通ったとんかつこそ至高とする。ソースはなんだって構わない。

わたしは好きなだけとんかつが食べられるなら、なんだって構わないのだ。

 鹿児島県産黒豚って、なに?カナダ産の三麦豚と一体何がちがうのかな?元を辿れば同じ豚に過ぎないのに。人間によって育てられて、もし病気になれば看病してもらって。そうして最後は屠畜される。何十何百もの同類たちがそうして生かされ、殺される。それって、すごく残酷だ。焼肉食べ放題では、そうしてカチコチに凍った肉の塊たちがさらに薄くスライスされて、食べ放題三千円という価格で消費されていく。わたしは豚の命を食べて生きているのに、そうして頂いた命の価値を、わたしは次の日の夜になるとすっかり思い出すことができないでいる。薄さが問題なのではなく、食べ放題の肉には肉らしさが足りないのだ。豚の命が二時間で安易に消費されていく。そこそこのおいしさと、もとを取ろうと足掻く人間の浅ましさによって。

 現代に住む人はみんな正気でないに違いない。スーパーに無機質に並ぶ肉の塊から生への執着のような臭いを感じない。白い発泡スチロールに乗せられた、すでにHPゼロの薄ピンクの塊。みんな正気じゃない。 

 だから、わたしはとんかつが好きだ。肉の重さは命の価値に比例する。きっと私も正気でないにちがいない。



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