2文字の答え〜トライアングルレッスンM
ファミレスでの勉強が上手くいかない理由は
雑音ではなくキミのせいであって私のせいでもあって…
「学年末テスト近いし一緒に勉強しよう。」
とタクミに誘われて。放課後ファミレスへやって来た。
タクミと2人向かい合ってファミレスで勉強するのは
…実は初めてだったりする。
こんなにずっと一緒にいるのに初めての事はまだたくさんあるものだ。
勉強する時はいつも3人一緒で、私はヒロシに勉強を教えてもらっていた。
タクミはそんなやりとりに茶々を入れてくる感じがお決まりだった。
今日だってそのつもりだった。
「塾で忙しくて時間が合わない
ってヒロシに断られたんだ。」
とタクミは残念そうに言った。
2人がイヤなわけではない。
むしろ嬉しいのだけれど…さっきから気まずい。
なぜならタクミの一挙手一投足が私の心拍数を早めているからである。
店内が見渡せる奥のソファーの席に座る。
タクミのボールペンの文字を書く音が
店内の雑音にかき消されていく。
勉強している真剣な眼差し、時々顔をあげるタクミと目が合う。
ニコッと笑って返してくれる…何もなかったようにまた教科書へ目を落とすタクミ。
あまり真剣に勉強している姿を見た事がなかったせいなのか…カッコいい。
私の胸の高鳴りが収まる気配がしない。
タクミの真似をしてイヤホンを耳に入れてみる。
…少しは勉強しなきゃ。
気持ちを切り替えて教科書を開くけど
勉強に全く集中出来ない私…。
それに気づいたのかイヤホンを外して、
ニヤッと笑いながら
「この問題わからないから教えてもらえる?」
と、私の返事を聞かず隣の席にやってくるタクミ。
距離が近いし逃げ場がない。
壁側の1番奥の席を選んだ事を後悔したし、これはチャンスかも?と私の中の天使と悪魔が囁き始める間も無く、
「俺のことどう思ってるか2文字で答えてよ。」
と私の耳元でタクミが囁いた。
もちろん私のイヤホンはタクミの手で外されていた。
顔が熱いタクミの方は恥ずかしくて見られなくて俯いた。
ダメ
無理
好きって言っちゃうじゃん、バカ。
こんな所で告白したくない。
「…ダメ。」
タクミだけには届きそうな声で口から出た精一杯の言葉。
「え…ダメ?」
タクミが聞き返した。
ダメと聞いて少し動揺しているのかタクミの声が上擦っていたし、私から少し距離を取った気がした。
ダメって答えじゃダメじゃんこれじゃと焦った私はタクミの方を向いてタクミに近寄りさらに続けた。
「もうバカっ…ダメ…ここじゃ無理だよ。」
タクミの顔を覗くように言ったせいか
タクミの顔が赤くなっていくのが良くわかった。
「ここじゃ無理って…ぅえっ!?…そっ、あぁ
…お、おかわり、おかわり持ってくる。
お、お、オレンジでいいよな?」
そう言って慌てた様子で席を立ったタクミ。
これって
…“どう思ってるの2文字”の答え、もしかして、一緒??
まさかね?なんて思いながら
タクミの後ろ姿をボーッと眺めていた。
ドリンクバーから戻ってきたタクミはいつもの飄々とした顔付きになっていた。
その後何を話して、何を勉強したかは記憶がない。
覚えているのは
帰り道、空を見上げたタクミが
「ユイコ…月が綺麗だね。…ち、違ぇよ、そういう意味じゃねぇよ。(っていうわけでもないんだけど)」
と言って赤面していた事だけだった。
ご拝読ありがとうございました!
ヒロシはタクミの気持ちを察してる程で、ファミレスに来なかったとあとがきに記しておきます。