表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊戯超過  作者: 吐夢
37/47

悪魔の証明

 ゲームは目に悪いなんて、よく言われているが、実際に目に悪いのは、人工的に作られた世界だと思う。だから、スマホも深夜のコンビニも車のヘッドライトも、目に悪い。小さな太陽を直視しているみたいだ。話は飛ぶが、ラスボスを呆気なく倒してしまって、エンドロールを鑑賞したロールプレイングゲームを閉じて、最近、新たにサイコホラーゲームを始めた。グロいゲームをするなんて、脳に悪いと誰かさんに言われてしまうだろうが、実際に行動するよりかは遥かにマシだ。代替品で痛がりたい欲求と傷つけたい欲求を昇華する。

 「うわあっ、痛い痛い痛い痛いっ!」

 とリュウくんが隣りで目を細めて叫んでいる。

 「もう、見なければいいじゃないですかあ」

 毎度の事ながら、笑ってしまう。それじゃつまんない、と言って、彼も怖いもの見たさで見ているんだろう。

 「次は、一緒にやれるのがいいです」

 と一人用ロールプレイングゲームをやっていた時によく言われていた。それを、ことごとく裏切って、サイコホラーゲームを見せた時には、悪質ないじめ、と評された。けれど、彼も俺も楽しめているので結果オーライだ。

 「あっ、死んだ」

 コントローラをマイクドロップのように床に落とす。画面にはゲームオーバーの文字が俺をイラつかせるように出てくる。もういい、お前に構うのはやめる。ふて寝するように布団に入るが、アイツの攻略法を脳内に巡らせて、眠れそうになかった。

 「テンテン、薬飲んだ?」

 「飲んでない、です」

 と言うと、リュウくんがコップに水を注いで、薬とともに持ってきてくれる。仲良くなるにつれて、彼が俺の部屋によく遊びに来るようになって、身の回りのことをやってくれるようになった。かなり甘やかされていて、時に彼が俺をダメ人間たらしめていると思うこともあるのだが、誰かに構われるのは、母の過干渉に浸っていた俺としては、安心と愉悦を感じた。

 「明日はお休み?」

 「はい」

 「良いなあ、僕も休みたい」

 週五勤務で働いているので、リュウくん達よりも一日だけ休みが多い。でも休みといっても、俺の場合はただひたすらに寝ているだけで、遊びに行くほどの余裕と体力はない。

 「ただただ暇ですよ」

 「そっか、そうだよね。ゆっくり休んで。僕は稼いでバイクのローン返済しないとだし」

 と布団を軽く叩いてから、おやすみ、と言われた。

 休みと聞くと、何だか何でもできるような、魅惑な言葉に聞こえてくるが、現実は思った以上に何もできなくて、休みの終焉に、今日一日、何をしたか思い出せない、時間を無駄にしたかのような感覚に襲われる。自分の存在証明すらできないくらい、誰とも関わらずに、何もしないで、漠然と生きて、現実世界での存在感が薄くなっていく、そんな恐怖を感じる。仕事をしていた方がまだ人生の充実感があるだろうが、それも体力的に叶わない。天井の中に存在する虚構を見つめて、生きている意味とか理由とか、悪魔の証明みたいなものだけど、存在しないものを求めている。その時間が俺にとっての休みだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ