給料は減らすけどな
意志を固めてから、八木さんに週四で働きたい主旨を伝えた。無理だと言われるか、クビにさせられるか、色々な不安から声が震えた。
「仕事はどや?きついか?」
とカッカと笑って聞かれた。
「はい、想像以上に」
とヘラヘラして、気持ちを落ち着かせようとした。相手が何を考えているかなんて、俺にはまったく分からないので、答えがすぐに出ないことに、意味もなく焦ってしまう。
「やめたないんか?」
また俺の目を覗き込むようにして、本心を探られる。
「んー、今はやめる時期じゃないと思って」
「ふふっ、どうゆうこっちゃあ?」
「仕事が大変なのは、俺がまだ慣れてなくて、できないことばかりだから、だと思うんですね。だから、そこそこできるようになって、その上で、まだこの仕事に向いてないのなら、やめますけど、そうじゃないのなら、働きたいです。ここの人達は、良い人ばかりなので」
本心を暴露して、何だかこそばゆい気持ちになった。でも、事実だからしょうがない。
「ここには色んな奴がおるからのぉ、少しは仲良うなったんか?」
「はい」
「そんじゃあ、仕事は楽しかろ」
「ふふっ、はい、楽しいです」
俺は冗談抜きで笑った。つらくてきつくて、もうやめてしまいたいけど、充実感や達成感、人との関わり、それらを一概に切り離してしまうのは、心の底では嫌だった。一時は自暴自棄になって、何もかも嫌になるときもあるけど、時間が経って、冷静に考えれば、良いこともあるってことに気づく。
「しゃーねえな、体力が足りへんのやから。週四で頑張ってもらうわ」
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「まあ、給与は減らすけどな」
と若干、意地悪く笑う八木さんに
「そうしてください」
と笑って、また頭を下げた。




