表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊戯超過  作者: 吐夢
33/47

三二一

 「誕生日いつですか?」

 唐突に聞かれ、

 「三月二十一日です」

 と不思議に思いながらも反射的に答えた。

 「三二一、覚えやすいっすね。じゃあ、そんときに僕からプレゼントさせてもらいますよ」

 言われてから気づいたが、誕生日を聞くというのは、プレゼントをしたい、という意味合いを含んでいて、俺が何の迷いもなしに誕生日を答えたのは、傲慢にもプレゼントをされたい人みたいに、思われたんじゃないかとちょっぴり不安になった。

 「リュウくんはいつなんですか?」

 「今日です」

 あまりにもあっさりと言うので、

 「え、嘘ですよね?」

 と訝しんだ。

 「ほんと、今日なんですよ。今日で二十歳になりました」

 はにかんで笑う彼は、免許証を見せてくれたまじもんで今日なので、意味もなくあたふたしてしまった。二十歳の誕生日と言ったら、盛大にお祝いするべきなのに、こんな変な大人と一緒にいていいのかと思ってしまった。

 「家に、帰ったりとか、お祝いしたりとか、しなくて良いんですか?」

 「いやあ、今日もほんとは仕事する予定だったし、帰ったところで、んー、あんま家族とも仲良くないんすよね。ここのが居心地良いとゆーか。あっでも、シュークリームなら奢られても良いっすよ、なんて」

 と冗談交じりに話しづらいことを話させてしまった。

 「奢りますよ、好きなだけ」

 冗談だと断られたが、半強制的にコンビニにあったシュークリームを全種類とお酒を買って、奢った。正しくは、奢らせてもらった。

 「やっぱ美味いっすわ」

 と口いっぱいにクリームを詰め込んで、幸せそうに食べる彼を見て、胸がいっぱいになった。

 仕事を休んだ理由をアキさんに聞かれた。自傷行為については伏せたが、ありのままの弱い自分を伝えた。病んでいると思われることを心配していたが、

 「羽伸ばせたんなら良かったんじゃん?」

 と暗い顔ひとつもせずに言われ、次にピアスをいじられた。

 「ヒロ、見てみ。テンがピアス開けてんの」

 と笑いながらチクられて、何がそんなに面白いんだろうと、愉快な人だと思いながら、これから起こる出来事に背筋が伸びた。ヒロさんは絶対に怒るだろう。

 「へえ、めっちゃ開けてる」

 と別に何も思ってないという無関心を思いっきり向けられた。身構えて損したが、これはこれで、何だかヒロさんとの距離感がとても開いてしまったように感じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ