ストロングチューハイ
そう、就活に失敗した。面接会場へ向かう道のりで何度も何度もこの電車に轢かれてしまえばと思ったことか。あんな紙切れで俺を表現できるはずがない。かと言って、絵画なんか持っていったらルール違反で落とされる。ましてや、あの緊迫した空気の中で自分をアピール?馬鹿言うなよ、俺の長所を壊したのは、貴方たちじゃないですか。自分が何だか分からない。そしてご覧の通り、自尊心も生きる希望も失った。俺に残されたのは、コンシューマーゲームとストロングチューハイ。母に飛び降り自殺を止められた日。あの最後の日から二年も経っていた。二年間もニートの引きこもりの酒クズで生きている。クソ、俺の人生は何処から狂ったんだ。誰のせいでこうなったんだ。以前よりも、かなり泣くようになった。誰もが泣くと謳われる映画では泣けないくせに、自分のことになると泣き虫になった。そんな俺を見て、母は自分を責めて泣く。そんなことはないから泣かないでくれ。貴方は俺をこの世に産んで、当たり前のように育てただけだ。最近では親ガチャなんて言われて気にしているようだけれど、それで言うと俺の両親は星五レベルの良親だ。俺の衣食住を確保してくださり、高額な学費を払ってくださったのに、それを無駄にしたこんな俺の心配までしてくださる。父と母の喧嘩の火種になっているのは分かっている。その怒鳴り声がドア越しに聴こえるから。その度に泣いて許しを乞うんだ。「もう死ぬから許してください」と。でも結局は、母はまだ俺のことを見捨ててくれなくて、死なせてくれない。それでまた泣くと母も泣く、ああもう、やめて欲しい。可哀想なのが俺だけじゃなくなるだろ。なんて、クズみたいなことを考えてはぐるぐると死に頭をジャックされる。