金属のあのレールを枕にした
「これが最強の牛丼の食べ方ってもんよ」
と腕を組んで、誇らしげにそう言われた。牛丼に納豆とネギをトッピングしているのだが、それなら納豆とネギで一杯、牛丼でもう一杯食べたい。俺は普通に牛丼の並を食べているけれど、食べ切れるか分からない。
「テン、眠いのか?」
食べ切れなくて手が止まって、その次は目が閉じてしまう俺の目の前に座るヒロさんがカカッていう感じで笑った。座ると眠くて眠くてしょうがなくて、頭がガクンと落ちた。昨夜は全然うまく寝れなかったのに、今ならすぐに寝れそうだから、不思議だ。ヒロさんの足元を見ながら、ふらふらと眠りながらもついて行く。もうこのコンクリートの上でいいから寝たかった。死んだように寝たい。乗ってきた車の後部座席で横になって、寝かせてもらった。掛け布団のように土埃の付いた作業着をかけて、母のお腹の中にいる赤ちゃんみたいに横向きで少し丸くなった。ヒロさんも助手席をリクライニングで倒して、仰向けで欠伸をしていた。ポカポカと柔らかい日差しが窓から差し込む。ようやく寝れたというのに、俺はかなり酷い夢を見ていた。夢の中の俺はまだ就活中で面接をしていた。
「貴方はどうして生きているんですか?」
顔も分からない面接官から問われた。俺は黙ることしかできない。
「死にてえのに死ねねえから、しかたなく生きてんだよ」
なんて口が裂けても言えなかった。母が悲しむ。自分のせいで環境のせいで、息子が死にたがりになってしまった、なんて母に思わせてはいけない、と常日頃から感じている。
「貴方は何のために生きているんですか?」
面接官は質問を続けた。
「分かりません」
圧迫面接中には、この言葉が魔法の言葉のように感じられたが、ただ質問に回答するのを逃げているだけだった。
「それでは何故、貴方は死なないのですか?」
「母が悲しむ、からです」
「死ぬのが怖いからではなくて?」
「はは、死ぬのは怖くないですよ。死に損なうのが怖いです」
なんて面接官を笑わせようとして失敗した。少し不愉快そうな顔をした二人の面接官は小声で話しをしていて、あの態度どうなの?と言っているようだった。
「貴方はどんな人間ですか?」
「クズ人間」
と即答した。死んだ方がいい、と評価されたペーパーテストをお土産に返却された。帰り道にすれ違う人の視線が俺を突き刺して、痛かった。駅のホームで一人だけ浮かれた俺は、金属のあのレールを枕にした。駅構内に響くアナウンスが子守唄だった。轟轟となる電車に轢かれて、臓物が鮮やかに飛び出た。




