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遊戯超過  作者: 吐夢
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体力も精神力も限界カンスト

 現実は目を覚ましたら訪れてしまったようで、永遠のように感じられた夜は終わってしまった。その虚しさと朝の焦りでぐちゃぐちゃになった感情のまま、千鳥足で廊下を歩く。こんな真っ直ぐな廊下でさえ、まともに歩けない俺はまともじゃねえな。そうだろう?貧血を起こしたようにしゃがみ込んで、寝足りなかったからと、誰にも言う訳でもないのに言い訳をした。自分なんて殺しまくったのに、何だ?結局は、お前も自分が可愛いんだろ、と悪魔に貶される。参っちまう。事実を言い当てられると、それが何であれ気持ちいいもので、廊下で蹲って一人で笑っていると、やべえ奴だと思われる。仕事を始めて三日目。既に体力も精神力も限界カンストしちゃってる。初出勤の日、始めの数時間はみんな優しかった。丁寧に教えてくれるし、気さくに話しかけてくれる。その対応にすら慣れてない俺は、頬が筋肉痛になった。一日目は体力がなくなっても気力で乗り切ることができた。みんな優しいし、褒めてくれるし、何よりもクズ人間の俺が仕事をしているという感覚が新鮮で楽しかった。二日目は一日目の疲れを完璧に引きずった。筋肉痛で全身が痛くて、起きることすら不可能かと思われたが、俺の持っていた過去の苦しみと痛みに比べればまだマシだと鼓舞した。愛想を振り撒くのが雑になって、仕事も雑になって、俺のクズ人間っぷりが顕になって、怒鳴られた。嫌な気分はしなかった。俺が怒鳴られるのは、相手が俺に怒鳴りたくなるのは、当然のように思われたからだ。誰でも怒鳴りたくなるくらいポンコツで失敗しまくりの要領が悪い俺のことを、ちゃんと「馬鹿」と呼んでくれたことが気持ちよかった。心の中でその通りだと大きく頷いた。体力と精神力が尽きて、「やめたい」と「四の五の言うんじゃねえ」のせめぎ合いで脳内が破裂しそうだった。おまけに、それに気を取られて仕事を覚えられずに自己否定のオンパレードだった。そんな気分では、部屋に帰ってきても晩御飯を作る気にも食べる気にもならないので、ドアを閉める瞬間に膝から崩れ落ちて寝た。でもうまく寝れなくて睡眠薬を飲んで寝た。薄らと悪夢を見て、目を開けて目を閉じると、また薄らと悪夢を見た。時間は刻々と過ぎていっているんだろうけれど、そのループにハマっていた俺は無限に続くと勘違いした。ずっと暗い部屋だった。でもいつの間にか、明るくなっていて腹立った。

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