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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
5:大森林観測村VSガムラン町

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711/744

711:ファローモからの依頼、客間にて

「おかわりっ()」「みゃにゃぁー()

()は、もう(ひと)(おな)(もの)を」

 風呂上(ふろあ)がりに、(つめ)たい菓子(アイス)好評(こうひょう)で――


「「「ひとつきりだと――?」」」」

 わいわい。

「「「(なん)でもないのに――?」」」

 がやがや。

「「「(ふた)つになると――?」」」

 むぎゅぎゅぎゅ。

「「「(こわ)(もの)ぉ――?」」」

 (つめ)たくて(あま)(もの)があると、聞きつけた連中(れんちゅう)で――

 客間(きゃくま)()ぐに、満員(まんいん)になった。


 ガムラン温泉街同様(おんせんがいどうよう)湯上(ゆあ)がりは浴衣(ゆかた)用意(ようい)したから――

 みんな(くつろ)いでくれてる。着物(きもの)を着た所作(しょさ)出来(でき)ねぇだろうが――

 (はだ)けちまう(ころ)には酔ってるか、お(ひら)きになるかするだろう。


 (いき)を吹き(かえ)した女神御神体(いおのはら)が、3個目(こめ)のおかわりを要求(ようきゅう)したとき――

「これは(なん)ですか、シガミー?」

 眼鏡(めがね)(おんな)長机(テーブル)から、持ち上げたのは――カタン。

 ちなみに彼女(かのじょ)は、いつもの給仕服(きゅうじふく)だ。


『>ファローモさんからの討伐依頼

  対象:〝二つあると怖い物〟なんだもの』

 と書き込まれた、おにぎりの木板(きいた)

 ふぉん♪

『>>正確には〝形状変化型表示装置〟、網膜や空間への直接的な投影を必要としない文字盤魔法具です』

 うん? 木板(きいた)で良いだろうが。


「たぶん、(もり)(ぬし)さまからの依頼(いらい)だ。おれぁ……(かに)(はさみ)だと、(おも)うぜ」

 二刀流(アレ)はやべぇと、(おそ)(おのの)きつつ――トン、ストトトトットトトトトンッ♪

 子供たち(がきども)(ぶん)菓子(おかわり)を、(なら)べていく。


「ふたつだと(こわ)(もの)? そんなの簡単(かんたん)だよ、ウチのお(とう)さんの眼鏡(めがね)だよ!」

 生意気(なまいき)子供(こども)(かお)に、「あれはやばい。もの凄く、うるさいよ」と書いてあった。

 レイダの父上(ちちうえ)魔法具(めがね)か。

 アレはギルド(ちょう)である(かれ)が、興味(きょうみ)を持った(もの)が目の(まえ)にあると――

 眼鏡(めがね)に付いた(つま)みが、ギギュギュイギギュギュイィィィィィンと、(せわ)しなく(うご)くのだ。


 手で(つく)った2つの輪っか(・・・)を、目に当ててみせる、その子供(むすめ)

 たしかに眼鏡(めがね)には、2つのビードロが付いちゃいるが――

 生意気(なまいき)子供(こども)真似(まね)をする、(どう)じない子供(こども)大食(おおぐ)らいの子供(こども)

 ふぅぃ、巫山戯(ふざけ)てやがるぜ。


(わたくし)としては、(かがみ)水面(みなも)(うつ)自分(じぶん)姿(すがた)でしょうか?」

 上品(じょうひん)色形(いろかたち)眼鏡(めがね)(ふち)を、(かる)く持ち上げるメイド。

 自分(じぶん)姿(すがた)だぁ?

 随分(ずいぶん)と……面妖(めんよう)なことを言いやがる。

 (たし)かに自分が二人居たら(・・・・・・・・)(おそ)ろしいと(かん)じるかもしれんが。


 そういや最初(さいしょ)星神(ほしがみ)……自分(シガミー)瓜二(うりふた)つの姿(すがた)を見たときは、(おどろ)いてる(ひま)はなかった。

 自前の金剛力(パワーアシスト)(ため)すのに、(いそ)しくてなぁ。


「「ふたつあったら――(こわ)(もの)だとぉ――?」」

 鉄塊(てっかい)のような金槌(かなづち)と、(おな)じく鉄塊(てっかい)のような鉄杭(てっくい)背負(せお)う、工房長(こうぼうちょう)とその縁者(えんじゃ)

 見た目は(ほとん)(おな)背格好(せかっこう)、つまり大部分(だいぶぶん)(ひげ)だ。

 見慣(みな)れた(ひげ)も、2つになると不意(ふい)を突かれる。

 (わら)上戸(じょうご)のメイドが、(からだ)多少傾(たしょうかたむ)けた。


「そりゃ、(うま)(さけ)(はい)った酒瓶(さかびん)だぜ! がははっ♪」

 小柄(こがら)屈強(くっきょう)髭達磨(ひげだるま)たちが、(かお)見合(みあ)わせた。

「そうだな。なんせ、ふたつもあったら、いつまでも仕事(しごと)が手に付かんからなぁ! がははっ♪」

 そうだな。鍛冶職人(かじしょくにん)どもは、求不得苦(ぐふとくく)ってものをわかってる。


「そういうことなら(わたし)は、リカルルの仕事机(しごとづくえ)ね。あんな魔境(まきょう)が2つもあったら、当分(とうぶん)――定時(ていじ)じゃ(かえ)れないもの」

 開いた戸口(とぐち)から(あお)(かお)を見せる、一本角(いっぽんつの)麗人(れいじん)

 その(うで)小柄(こがら)少女(しょうじょ)が、(かか)えられている。

 (そと)から(もど)ったばかりの二人(ふたり)も、給仕服(きゅうじふく)を着ていた。


「ちょっと、オルコトリア! それは今言(いまい)必要(ひつよう)は、無いのではなくって!?」

「お(じょう)さま、以前仕事(いぜんしごと)は溜めないと、お約束(やくそく)しましたよね?」

 (いろ)めき立つ、最凶(さいきょう)の名を欲しいままにする令嬢(れいじょう)と――その侍女(メイド)

 そのメイドの(かお)に張り付いた、上品(じょうひん)色味(いろみ)眼鏡(めがね)が――ヴュゥン♪

 色濃(いろこく)変色(へんしょく)し、周囲(しゅうい)景色(けしき)(うつ)し込んでいく。


「ふぅ、オルコトリアさん。あまりリカルルさまを、(いじ)めないであげてくれませんか?」

 小柄(こがら)少女(しょうじょ)(ゆか)に降り立ち、屈強(くっきょう)鬼族(オーガ)見上(みあ)げる。

「そうは言うけど、実際(じっさい)。あの書類(しょるい)(やま)(おも)うと、こうして(くち)をついて出るのよ」

 そう言いながら(こし)を下ろそうとした、大柄な女性(オルコトリア)


 その(そで)を、くいと引くのは、おれと(おな)(かお)少女(しょうじょ)

「タターさん、オルコトリアさん。こちらを(はこ)ぶのを、お手伝(てつだ)(ねが)えませんでしょうか? クースクス()

 追加(ついか)(つめ)てぇ菓子(かし)(ぼん)(かさ)ねて持ってきたのは、星神茅野姫(ほしがみカヤノヒメ)

「はい、お手伝(てつだ)いしますっ♪」

 (あわ)てて(ぼん)を受け取る、メイド少女(しょうじょ)


「シガミーさんも、こちらへ()

 流し目(よこめ)が、(わら)ってねえな。


 わいわいわいわいがやがやがやがや。

 みんなが口々(くちぐち)に、2つあると(こわ)(もの)を〝(あげつら)う〟(なか)

 遊撃隊(ゆうげきたい)二人(ふたり)とおれが、連れて行かれたのは――

 一番端(いちばんはし)の、五百乃大角(いおのはら)と、おにぎりと、森の主さま(ファローモ)(すわ)るテーブル。


 屏風(びょうぶ)二枚(にまい)、ととんと取り出す――浮かぶ棒(ジンライ)

 どうした、これ?

 ふぉん♪

『>>エレクトロ・モフモ村で採取した未知の苔から、有用な音響ナノマテリアル形状を収得、再現しました』

 うん、わからんな。


 ふぉん♪

『>>〝非線形防音壁〟を一双、作成しました』

 〝防音壁(ぼうおんへき)〟ならわかる、なるほど?

 モフモフ(むら)で、(おと)だか(ひかり)だかを遮った奴(・・・・)(つく)ったんだな。


 カシャカシャカチャキャチャ♪

「ひゃぁっ!?」「ぎゃぁっ!?」

 遊撃班(ゆうげきはん)二人(ふたり)襟首(えりくび)をつかみ上げる、浮かぶ棒(ジンライ)

 猪蟹屋制服(ししがにやせいふく)であるあの給仕服(メイドふく)は、ちょっとやそっとじゃ(やぶ)けない。


 ふぉん♪

『>>内密な話をするかも知れませんので、テーブルの隣へ立てて下さい』

 あー、そういうことか。

 遊撃班(こいつら)がぁ、(なん)森の主(ファローモ)狙撃(そげき)したのかの確認(かくにん)がぁまだだったな。


 ふぉん♪

『シガミー>おまえら、何でまた森の主さまを狙った?』

 遊撃班(ゆうげきはん)二人(ふたり)耳栓(みみせん)をしてたから、一行表示(ティッカー)使(つか)える。

 おれは(はし)平机(テーブル)(かこ)むように、屏風(びょうぶ)を立てた。


   §


「さ、(さき)ほどは、イオノファラーさまやシガミーを(ねら)った刺客(しかく)(かん)ちがいをしてしまい――」

 オルコたちが森の主(ファローモ)(ねら)った理由(りゆう)には、(なん)変哲(へんてつ)も無かった。

 片膝(かたひざ)を立て、組んだ両手(りょうて)(はな)に押し当てる屈強(くっきょう)(おに)

 それは美の女神(いおのはら)(うやま)作法(さほう)だが、(れい)を尽くしていることは――

 (つた)わるだろう……多分(たぶん)だが。


「「――(もう)しわけありませんでしたー!」」

 (あたま)を下げる(いきお)(あま)って――ゴッツン!

 一本角(つの)平机(テーブル)に打ちつける鬼の娘(オルコトリア)と、(となり)(おな)じように(ひざまず)く――

 給仕服姿(メイドすがた)少女(タター)


()いえ、気にすることはありません。強者(きょうしゃ)(いど)むは、生きとし生けるものの(さが)ゆえ」

 冷静(れいせい)(かんが)えると剛気(ごうき)(はなし)だが――

 向かってきた弾丸(たま)を、木桶(きおけ)で受け止め――

 酒の肴代わりに(・・・・・・・)、食っちまうような(やつ)だからな。


「良かったなオルコトリア。(もり)(ぬし)さまは、(はな)せばわかる御仁(ごじん)だぞ」

 二人(ふたり)とも(ひたい)から(なに)かを生やしてるし、似たもの同士(どうし)仲良(なかよ)くやれるだろ。


「シガミーちゃん……ひそひそ……(もり)(ぬし)さまは、(おとこ)(ひと)なの?」

 少女(しょうじょ)普段(ふだん)と変わった様子(ようす)は無い。

「はぁ? 見りゃ……わかるだろうが?」

 (おとこ)(こえ)をしてるが、見た目は(やさ)しそうな珍妙(ちんみょう)(おんな)だ。

 本性(ほんしょう)(やま)よりも(おお)きな……鹿(しか)(なに)かなんだろうが――


「あふれる活力(マナ)で、よく見えないよ?」

「見えんだと?」

 (なに)を言って――!?

(ひと)(かたち)はしてるから……ひそひそ……〝魔人(まじん)〟かと(おも)って、つい――」

 内緒話(ないしょばなし)に混ざる、鬼娘(オルコ)

「つい――撃っちまったと?」

 (もり)(ぬし)を〝魔神(まじん)〟だと言う、遊撃班(ゆうげきはん)二人(ふたり)


 魔人(まじん)てのは、(いま)は無き魔王(まおう)(くみ)する――(ひと)(かたち)をした魔物(まもの)だと聞いている。

 (した)を出した少女(しょうじょ)(かお)から目を(はな)し、(もり)(ぬし)を見た。


 座布団(ざぶとん)(うえ)鎮座(ちんざ)ましましているのは――

 『(もよう)』が(はい)った着流(きなが)しを着た、珍妙(ちんみょう)(おんな)だ。

 その姿(すがた)が――ボロボロと(くず)れていく。


 (ひと)姿(すがた)形作(かたちづく)っていた、木の葉や木の実と(えだ)(つる)が――(すべ)て落ちた!


「「「「ぅきゃっ――!?」」」――!?()

 度肝(どぎも)を抜かれる、屏風(びょうぶ)内側(うちがわ)


 ヴォロロロロオロンッ――――♪

 座布団(ざぶとん)(すわ)るのは、うねうねとした(ひかり)(うず)だけになった。


 それは、(ひと)(かたち)をした活力(マナ)(かたまり)

 周囲(しゅうい)景色(けしき)(うつ)し込む〝使(つか)い捨てシシガニャン〟の、強烈(きょうれつ)(たたず)まいにも似ていて――


 (たし)かにそれは、〝魔神(まじん)〟と呼ぶに、相応しい姿(・・・・・)だった。

求不得苦/煩悩に根ざした、決して満たされることの無い渇望。それによる苦しみのこと。

一双/二枚で一組になるもの。この場合、屏風。

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