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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
5:大森林観測村VSガムラン町

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705/744

705:第四の大森林観測村現る、ご令嬢たち

「ガムラン町温泉街(ちょうおんせんがい)と、ほとんど変わりませんわねー♪」

 その出で立ちは、町中(まちなか)(ある)(とき)のやや質素(しっそ)なドレスの(うえ)から、ニゲルみたいな簡素(かんそ)防具(ぼうぐ)を付けている。

 ガムラン(ちょう)代表(だいひょう)でもなく、辺境伯(へんきょうはく)令嬢(れいじょう)としてでもない――


 ふぉん♪

『イオノ>>まぁ、お忍びわね』

 まぁ、そういう格好(かっこう)だわな。


 そんな狐耳(かのじょ)(こし)には、いつもの細身(ほそみ)豪奢(ごうしゃ)(けん)ではなく――

 おれが(こしら)えてやった、血色(ちいろ)柄巻(つかまき)脇差(わきざ)し。

 鍔刀(つばがたな)としちゃ(みじか)いそれも、こうして見りゃぁ――

 ご令嬢(れいじょう)が持つのに丁度良(ちょうどよ)い、(なが)さかも知れん。


「リカルルさん、これはどのように使(つか)(もの)ですの?」

 (かた)今日(きょう)は、(うえ)から(した)まで黒装束(くろずくめ)

 魔術師(まじゅつし)(とが)った帽子(ぼうし)に、全身(ぜんしん)(おお)外套(ローブ)

 その(した)には胸当(むねあ)てや道具(どうぐ)(つる)した革紐(かわひも)なんかを、ガチガチに着込(きこ)大申女(ロットリンデ)

 どうも、〝(かに)〟が出た(こと)を知っての、出で立ちらしい。


「レーニ……リオレイニアさん、これはどのように使(つか)(もの)なのかしら?」

 やや目つきの(よろ)しくない狐耳(きつねみみ)冒険者風(ぼうけんしゃふう)が、余所行(よそい)きの気取(きど)った(こえ)(たず)ねる。


「ふぅ、では僭越(せんえつ)ながら、ご説明(せつめい)させて(いただ)きます――ヴヴヴウヴヴッ♪」

 大森林(だいしんりん)奥地(おくち)と言うことで、(すで)戦闘態勢(せんとうたいせい)のメイドが――

 下駄箱(げたばこ)使(つか)(かた)を、お(じょう)さま(がた)指南(しなん)する。


「あらまぁ、そんな仕掛(しか)けになっているのですね♪」

「ほんとう、こんな板一枚(いたいちまい)(かぎ)になるなんて、くすくす♪」

 お(じょう)さまたちは、(すこ)(とし)(はな)れてはいたが――

 まるで姉妹(しまい)のように、仲睦(なかむつ)まじくしている。


「おい、レイダ?」

 おれは物陰(ものかげ)(かが)み込み、生意気(なまいき)子供(こども)を呼びつけた。

「なぁに、シガミー?」

 おれの(となり「)(おな)じく(かが)み込む、生意気(なまいき)子供(こども)


「ありゃぁ、どーしたことだぜ?」

 (ひめ)さんたちに、親指(おやゆび)を向けてみせる。


「えっとね、もとからリカルルさまは……ひそひそ……ロットリンデさんのことが、好きだったみたいだよ?」

 レイダの(いき)が、(みみ)にかかってくすぐってぇ。


(なに)それ、初耳(はつみみ)だが……ひそひそ?」

 お(たが)いに(むら)(まち)を挙げての、一触即発(いっしょくそくはつ)

 いつ(いくさ)(はじ)まっても、おかしくなかっただろうが?

 一応(いちおう)蜂女(リオ)が勝って、決着(けり)が付きはしたがよぉぅ。


「ふぅ――それは(ぼく)が、説明(せつめい)するよ」

 ニゲル青年(せおねん)が、(かが)み込むおれたちの輪に混ざった。


(ぼく)がリカルルさまに言われて引いてた、荷車(にぐるま)(おぼ)えているかい?」

 (ひざ)を突き合わせる、おれたち。


「リカルルさまが、憧れのひと(・・・・・)(わた)すって言ってましたわね?」

 大食らいの童(ビステッカ)が、菓子(かし)をボリボリと(むさぼ)りながら、やって来た。


「そう。持ってきた荷物(にもつ)全部(ぜんぶ)、〝けいこくのまもの〟に出てくる(もの)なんだよ」

 は? 傾国(けいこく)魔物(まもの)……っていやぁ絵本(えほん)にまでなった、悪女の話(・・・・)だろぉが?

 そいつぁ、ロットリンデさま本人(・・)だって(はなし)じゃなかったかぁ!?


お返し(・・・)に、もらったのが――」

 背中(せなか)背負(せお)っていた、(おお)きめの収納(しゅうのう)魔法具板(まほうぐいた)から取り出されたのは――

 (つの)が生えたモッサモサ。

 鹿(しか)みたいな()(えが)かれた紙袋(かみぶくろ)

 それはビステッカが手にした、菓子袋(かしぶくろ)(おな)じだった。


(わたし)も、もらったわ♪」

 何時(いつ)の間に来たのか、(どう)じない子供(こども)の手にも菓子(かし)(ふくろ)

「「「「「(ぼく)も♪」」」」」「「「「「(わたし)も♪」」」」」

 わいわいわい、がやがやがや。


「ばかやろう、こんな大所帯(おおじょたい)で……ひそひそひそ……内緒話(ないしょばなし)がぁ、出来(でき)るかってんだぜ!」

 あ、(くだん)のご令嬢(れいじょう)たちと、目が合っちまった!


   §


 『リカルルさまへ――悪逆令嬢ロットリンデ♡』などと書かれた厚紙(あつがみ)

 そんな(もの)を、大事(だいじ)そうに取り出す青年(ニゲル)


 此処(ここ)二階(にかい)休憩所(きゅうけいじょ)

 (ちい)さな長机(つくえ)に、(あし)(みじ)いフカフカの長椅子(ながいす)


 (いのち)からがら、逃げ(おお)せたのは――

 おれとニゲルと、サキラテ家の(どう)じない子供(ビビビー)

 やはりこのリオレイニア(ゆかり)(わらし)は、隠形の術(・・・・)会得(えとく)してやがる。

 おれやニゲルの逃げ足(・・・)(なら)ぶとなれば、一端(いっぱし)のもんだぜ。


「するってぇと、リカルルさまは……ずっと(あこが)れていた傾国の魔物(ロットリンデ)さまを相手(あいて)に――」

 悪女(あくじょ)憧れる(・・・)ってのも、(ふく)めて――

 ()れは、(なん)というか――


「そう、(はじ)めて会うなり、(こと)もあろうか――」

 苦渋(くじゅう)表情(ひょうじょう)を、浮かべる青年(せいねん)


喧嘩(けんか)を売った……のね。ははは、はぁ」

 コントゥル家に長年仕(ながねんつか)えてきた、サキラテ家の子供(こども)

 おれたちよりかは、悪漢令嬢(リカルル)(ひと)となりを、良く知るであろう子供(ビビビー)が――

 (あき)れた(かお)で、(わら)ってる。


(じつ)に、ガムランの(ひめ)さんらしいな」

 色紙(・・)とか言う厚紙(あつがみ)を、(なが)める。


『リカルルさまへ――悪逆令嬢ロットリンデ♡』

 フカフ(むら)やロコロ(むら)で、見てきた(かん)じから――

 こういう(もの)も、見世物(みせもの)のウチなんだろうな。


 その意味(いみ)は、わかったが――

此方(こっち)は、(なん)でぇい?」

 菓子袋(かしぶくろ)を見つめた。


 モサモサ鹿(しか)の絵が(えが)かれた、煎餅(せんべい)(ふくろ)

 紙袋(それ)をニゲルが、裏返(うらがえ)した。


『王家御用達、高級菓子店ロットリンテール』

 こいつぁ、リカルルが好物(こうぶつ)と言って執心(しゅうしん)してた、王都(おうと)菓子屋(かしや)だろぅ――

「まて、ロットリンテール?」

 しゃらあしゃらした名だから似通ってる(・・・・・)んだろうと、気にもしてなかったが。

 そうだった。森の主(ファローモ)瞼裏(まぶたうら)(はなし)をしてたときに――

 そんな(はなし)を聞いたことを、すっかり(わす)れてた。


「そう、あの高級菓子店(こうきゅうかしてん)の、お菓子(かし)(つく)ったのは、ロットリンデさんらしいんだよね」

 なんと言ったら良いのか。

 覇気(はき)のなさでは定評(ていひょう)のある、ニゲル青年(せいねん)を持ってしても――

 そりゃぁ、(おま)まで見たことがないような、(ほう)けた(つら)くらいするだろうぜ。


 がらがらりっ♪

 二階(にかい)(まど)(ひら)き、飛び込んで来たのは――(ふと)(なが)魔法杖(まほうつえ)

 それは凄腕(すごうで)メイドを(したが)えた、渦中(かちゅう)令嬢人(ほんにん)たちだった。


(なん)ですの小猿(こざる)、ウチの菓子(かし)(なに)文句(もんく)でも?」

 (つえ)から飛び降り、くるくるスタン!

 ポキポキと鳴らされる(こぶし)


「そうですわね、ニゲル。貴方(あなた)何年(なんねん)コントゥル家に(つか)えているのかしら、たるんでいましてよ?」

 青年(ニゲル)辺境伯家(コントゥルけ)に、(つか)えているわけではない。

 執事服(しつじふく)を着ているのは、猪蟹屋標準制服(うちのみせのせいふく)男性用(おとこもの)が――

 コントゥル家の制服(せいふく)を、真似(まね)(つく)られたからだ。


「ヴィヴィー、サキラテ家の(わざ)は、みだりに使(つか)ってはいけないと、いつも――」

 おれたち三人(さんにん)は、茅野姫(ほしがみ)(めし)支度(したく)出来(でき)たと――

 呼びに来るまで延々(えんえん)と、小言(こごと)を聞かされた。


 気づけば(そと)は、とっくに(くら)くなってて――

「グッゲゲッ♪」

 (まど)から(かお)(のぞ)かせた風神(ふうじん)の目が、ギラリと(ひかり)(はな)った。

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