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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
5:大森林観測村VSガムラン町

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688/744

688:ロコロ村集会所にて、混迷の極み

「あらららぁぁん? ニゲルさまの姿(すがた)が、見当(みあ)たらないですらららぁぁん?」

 そんな(こえ)が――ゴンゴンゴンゴン。


 料理(りょうり)を、すべて降ろされたゴンドラが――

 あらたな荷をのせ、降りてくる。

 それは豪奢(ごうしゃ)頭飾り(ティアラ)に、ドレス姿(すがた)

 なぜか杓子(しゃくし)をたずさえた、(わか)女性(じょせい)だった。


 その(たたず)まいや、両端(りょうはし)(ひか)える物々(ものもの)しい護衛(ごえい)から――

 高貴(こうき)身分(みぶん)であることは、(うかが)い知れるが。


「あらららっらぁぁん?」

 目を(さら)のようにして――ギラリン!

 会場(かいじょう)(くま)なく(にら)みつける、その余裕のなさ(・・・・・)


「ラプトル王女殿下(おうじょでんか)……お(はや)いお越しで」

 壇上中央(だんじょうちゅうおう)王女殿下(おうじょでんか)(ひざまず)くメイド。


「やはり(あなど)れないのは、小猿(こざる)とメイドと――貴方(あなた)だけのようですわね?」

 いまさっきまでメイドが立っていた(・・・・・・・・・)場所(ばしょ)を、怪訝(けげん)様子(ようす)でコツコツ踏む令嬢(ロットリンデ)


「ふぅっ、(わたくし)など攻撃力(ATK)防御力(DEF)ともに皆無(かいむ)の、小娘(こむすめ)でございますわ♪ クスクスクスクスプー()

 それは謙遜(けんそん)ではないようで、(ちか)くの椅子(いす)(こし)を降ろす星神(ほしがみ)少女(しょうじょ)

 彼女(かのじょ)妹役(シガミー)屈強(くっきょう)さとくらべて、本当(ほんとう)体力(たいりょく)が無さそうにみえた。


「けれど、星神(ほしがみ)と呼ばれているのは、伊達(だて)ではないのでしょう?」

 少女(しょうじょ)(はなし)をしながらも、さささと身繕(みづくろ)いをする、傾国の魔物(ロットリンデ)


「はい。ひとかどのスキルは、所持(しょじ)しておりますが――ガムランの狐親子(きつねおやこ)と、万年(まんねん)ルーキーが持つユニークスキル(・・・・・・・)には、(なら)ぶべくもございませんわ()

 目を(ほそ)め、そう(こた)える、ひ弱な少女(ほしがみ)


「ふん」

 (はな)を鳴らし細身(ほそみ)のドレスをひるがえした、悪逆ご令嬢(ロットリンデ)()が――ちらり。

 視線()(さき)には、巨大(きょだい)魔法杖(まほうつえ)をつかみ、(ちゅう)へ浮く辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)

 名代()狐耳(みみ)は、生まれたばかりの、森の主(ファローモ)子供(こども)(ねら)っている。


名代(みょうだい)、それほどまでに生まれたばかりの赤子(あかご)が、(おそ)ろしいというのなら――今日(きょう)のところは(いえ)(かえ)りましょう」

 そんな、やさしい(こえ)母狐(ははぎつね)にかける、派手(はで)なドレス姿(すがた)娘狐(むすめぎつね)


「あきまへんぇ! 目を(はな)した(すき)にぃ、豹変(ひょうへん)するかもしれへんから! なんせヴァミヤラーク洞穴(どうけつ)魔物(まもの)わぁ、狡猾(こうかつ)やさかいにっ――ココォォン!!」

 生前前世(せいぜんぜんせ)京言葉(きょうことば)が漏れ出るほどに、(なに)かを危惧(きぐ)する辺境(ルリーロ・)(イナリィ)名代(・コントゥル)

 元魔導騎士団(もとまどうきしだん)総大将(そうだいしょう)であり、最強(さいきょう)料理番(りょうりばん)シガミーを何度(なんど)も追い詰めた――

 その五穀豊穣(ごこくほうじょう)眷属(けんぞく)(ぞく)に言う妖弧(ようこ)(おび)えるほどの、(なに)か。


 そんな(おそ)ろしい手合(てあい)には、到底見(とうていみ)えない――

 (かみ)(しば)ってもなお、毛玉(けだま)のような子供(こども)

 そのモサモサ(かみ)(かげ)にうずくまり、身を(かく)すのは――万年ルーキー(ニゲルせいねん)

 その姿(すがた)は、とてもこの地に召喚(しょうかん)された勇者(ゆうしゃ)には見えない。


 生まれたばかりの、(もり)(ぬし)子供(こども)

 それに怯える者(・・・・)と、それに身を隠す者(・・・・・)

 そんな二人(ふたり)を見た、傾国(けいこく)魔物(まもの)令嬢(れいじょう))は、(くび)(よこ)に振り――

 ツカツカと壇上(だんじょう)へ、(ある)いて行く。


 その背中(せなか)を見つめ、「くすくすくすくす、ププププ-()

 ほくそ笑む星神(ほしがみ)心中(しんちゅう)を、うかがい知ることは出来(でき)ないが――


星神(ほしがみ)さまが(わら)ってるよ」

星神(ほしがみ)さまが(わら)ってるね」

 生意気(なまいき)子供(こども)と、(どう)じない子供(こども)が――

 その様子(ようす)を、テーブルの(かげ)から(なが)めている。


 ツカツカツカツカッ、カツコツカツコツカツッ――――♪


「これはこれは王女殿下(おうじょでんか)。こんな最果(さいは)ての地まで、お越しいただき――恐悦至極(きょうえつしごく)(ぞん)じます。(わたくし)、ロットリンデ・ナァク、ルシランツェルと(もう)します♪」

 王女(おうじょ)眼前(がんぜん)(あゆ)み出で、(こし)を落としてみせるのは――

 正真正銘(しょうしんしょうめい)旧王国時代(・・・・・)を生きたご令嬢(れいじょう)

 その〝作法(さほう)や振る舞い〟には、王族(おうぞく)といえども目を(うば)われた。


「これは、ご丁寧(ていねい)に。(わたくし)中央都市(ちゅうおうとし)ラスクトール自治領(じちりょう)第一王女だいいちおうじょ、ラプトル・ラスクトールです。どうぞラプトルとお呼び(くだ)さ……えっ!? いま、ルシランツェル(・・・・・・・)って言ったららぁあん!?」

 そして〝その(ふる)家名(かめい)〟を(みみ)にし、取り(みだ)した第一王女(ラプトルひめ)は――

 手にした杓子(しゃくし)(ちから)いっぱい振り(まわ)し、護衛(ごえい)のひとりを――

 (なぐ)(たお)すのであった。


   §


「しゅっ、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)(ばこ)閉じ込めたあげく(・・・・・・・・)未開(みかい)の地へ――転移(てんい)させたぁららららっらぁぁっぁあんっ!?!?」

 よろよろと、ふらつく王女殿下(ラプトルひめ)

 無理(むり)からぬ(こと)だろう。

 音信不通(おんしんふつう)だった交易隊(こうえきたい)の、最重要(さいじゅうよう)人物(じんぶつ)たちが――

 そんな憂き目(・・・)にあっていたのだ。


「ただちにその〝村長箱(そんちょうばこ)〟とやらを、開示なさい(・・・・・)ららぁん――(つえ)よっ!」

 杓子(しゃくし)特大工具(レンチ)変形(へんけい)させ、天高(てんたか)くかかげた。


 会場(かいじょう)に、緊張(きんちょう)(はし)る。

 ジューク村長(そんちょう)魔法具箱(まほうぐばこ)は、村人(むらびと)たちもうらやむ、お(たから)である。


「ふぅ――こうなった以上(いじょう)鑑定(かんてい)させて(いただ)きますよ」

 眼鏡(めがね)を掛けたメイドが、見据(みす)えるのは――

 テーブルに置かれた、変わった光沢(こうたく)(はな)(はこ)

 チーン♪

 ほどなく会場(かいじょう)のあちこちから、(かね)の音が鳴り(ひび)いた。


 ヴォゥゥゥウゥン♪

『魔法自販機【正八胞体】/

 貨幣を投入することで、

 様々な恩恵や損害を得る。』

 星神(ほしがみ)カヤノヒメが手にした黒板(くろいた)に、(うつ)し出された上級鑑定(じょうきゅうかんてい)結果(けっか)


「「「な、なんて(ざつ)鑑定結果(かんていけっか)なのでしょう」――ららぁぁん?」――プークス()

 (ほほ)に手を当て、苦渋(くじゅう)表情(ひょうじょう)を見せるメイドと王女(おうじょ)、そして星神(ほしがみ)少女(しょうじょ)


 フカフ村村長(むらそんちょう)が、いつも(こし)(しば)り付けていた、(ふくろ)中身(なかみ)

 この(はこ)は、硬貨(こうか)を入れれば周囲(しゅうい)を巻き込み――

 迷路(めいろ)に変えてしまう。

 高額(こうがく)硬貨(こうか)を入れれば、より(なん)でも〝(のぞ)みが(かな)う〟という触れ込みの――

 〝SSS級魔法具(きゅうまほうぐ)〟。


「建てて(いただ)いたばかりの建物(たてもの)を、(こわ)さないようにと――ジュークに(それ)使(つか)わせたのは(わたくし)私ですわ! 全責任(ぜんせきにん)は、(わたくし)にありましてよ!」

 仁王立(におうだ)ちの、高位魔術師(こういまじゅつし)


(はこ)を言ってるんだい? (はこ)使(つか)ったのは(ぼく)だよ?」

 ファロコを(かか)える村長(そんちょう)を、「いーから、ジュークは(だま)ってなさい」と(にら)みつける令嬢(れいじょう)


「さぁどうぞ。お好きに、お(あらた)めくださいな♪」

 そんな(こえ)に、真っ(さき)魔法自販機(まほうじはんき)へ取り付いたのは――

 (ふく)を着た(ねこ)魔物(まもの)だった。

 魔法具の妖精(ケットーシィ)とよばれる(かれ)、ロォグは――

 発掘魔法杖(はっくつまほうづえ)である手甲(ガントレット)装着(そうちゃく)した。

 そして、いまにも(はこ)分解(ぶんかい)しようと、つかみかかる。


「けれどそれ下手(へた)に、こじ開けよう(・・・・・・)とすると――〝この世界(せかい)のすべてを、複製(・・)しようとして止まらなくなる〟と、書いてありましてよ?」

 仁王立(におうだ)ちの、高位魔術師(こういまじゅつし)ロットリンデ。


「止まらなくなるニャ? (こわ)いニャァ――っ!?」

 手甲(ガントレット)をグワラランと、放り出す猫の魔物(ケットーシィ)

「書いてあったですって? どこららぁん!?」

 王女殿下(ラブトルひめ)猫の魔物(ロォグ)(かか)え、(はこ)周囲(しゅうい)をぐるぐると(まわ)(はじ)めるも――

 (はこ)表面(ひょうめん)文字(もじ)などは、一切書(いっさいか)かれていない。


「その魔法自販機(じはんき)に、硬貨(こうか)を入れた利用者(サブスクライバー)――つまり村長(ジューク)の、頭の中に(・・・・)ですわ♪」

 悪逆令嬢(あくぎゃくれいじょう)にして吸血鬼(きゅうけつき)。かつての王都(おうと)恐怖(きょうふ)に染め上げた、傾国(けいこく)魔物(まもの)

 その口元(くちもと)に、笑みが浮かぶ。


(あたま)(なか)ニャァ!?」――らぁん!?」

 手に手を取り合い(おび)える、魔導工学技師(まどうこうがくぎし)たち。


「ロットリンデは――〝リヨウキヤク〟って言ってたよね」

 ジタバタする(おお)きな子供(こども)を、そっと(はな)してやる村長(そんちょう)


「ジュークは一度見(いちどみ)書類をひとつだけ(・・・・・・・・)(おぼ)えていられるのですわ。ええと(たしか)か――173(ページ)だったかしら?」

 (くび)(かたむ)け目を向ける。

「……ええっとね、3の4の8の……173文字目(もじめ)文字(・・)を、方陣記述魔法(ピクトペンマジック)に書いて見せれば良いかい?」

 手のひらに小さな明かり(・・・・・・)を、(とも)村長(そんちょう)


 手のひらに(えが)かれていくのは、(なに)かの魔法(まほう)

 その図案(ずあん)のように見えた、光の描線(・・・・)が――

 ある瞬間(しゅんかん)に、意味を持った(・・・・・・)


 ヴォヴォヴォヴォゥゥゥゥン♪

『の際に地続きである全ての土地エリア並びに、

 全ての海面エリアの複製を、【作成】しようと

 試みる場合があります。

 その補綴機能は該当惑星全土へ及ぶ場合があり、

 再現不可能な希少な魔法行使において不可逆な

 影響を及ぼす可能性があります。

 この魔術特性を凌駕する無期限の方律違反に対

 する問題解決には、1番から65番までの質疑

 儀礼所か王都中央議会所、もしくは異世界AP

 T管理室を専属的な復元ポイントとするための

 異議申立てをして下さい。』


 村長(かれ)の手のひらに(えが)かれた文字(もじ)は――

 壇上背後(だんじょうはいご)(かべ)に、大写(おおうつ)しにされた。


「なるほど、まるでわかりませんね」

安心(あんしん)して、この規約文(きやくぶん)……文言(もんごん)解読(かいどく)した人物以外(じんぶついがい)に、理解(りかい)できた(もの)はひとりも居りませんので」

 その他人事(ひとごと)のような物言(ものい)いに、(はら)が据えかねたのか――ヴゥゥン♪

 上品(じょうひん)なメイドが眼鏡(めがね)をゆすり、黒光(くろびか)りする色合(いろあ)いに変化(へんか)させた!


「ヴヴヴヴヴウヴヴッ――――♪」

 エプロンのポケットに手を差し込む――まるでルガ(ばち)

「まったくもう、私一度(わたくしいちど)ぉ、降参(こうさん)しましたのに♪」

 ドレスの(すそ)からゴドリと取り出される――鉄棒(てつぼう)にしか見えない魔法杖(まほうつえ)


 一触即発(いっしょくそくはつ)二人(ふたり)

 その一度(いちど)は見た光景(こうけい)が、ふたたび繰り(かえ)されようとしていたが――


「わかったよ!」

「うん、(わたし)にもわかったよ!」

 だがこの場には、生意気(なまいき)子供(こども)と、物怖(ものお)じしない子供(こども)がいた。

 (かべ)(うつ)し出された、文字(もじ)見上(みあ)げ――

 「わかった」と、のたまう子供(こども)たち。


「「一体何(いったいなに)が、わかったというのですか!?」」

 そう聞かずには、いられないだろう。

 (おどろ)き、(おな)質問(しつもん)同時に投げかける(・・・・・・・・)、ふたり。


 事態(じたい)は止まることを、知らず――

 混迷(こんめい)(かぎ)りを、尽くしていく。


「シガミーがこれを見たら、ねぇ――?」

「うん。間違(まちが)いなく――♪」

 (かお)見合(みあ)わせ、(かお)をほころばせる(なか)の良い子供(こども)


 わいわいわい、がやがやがや♪

 (あつ)まってきた、(ほか)生徒(こども)たちも――

「「「「あー、そうだねぇ――♪」」」」

 などと言い出す始末(しまつ)


「「だから(なに)が、わかったというのですか!?」」

 もはや絶叫(ぜっきょう)


「「「「「「ぅるせぇ、だまれやぁ! まるでゎからぁん! って言うよ?」」」」」」

 それは〝はすっぱな少女(しょうじょ)〟の声真似(こえまね)


「そ、それは(たし)かに――言いますね……ふぅぅ」

「い、言いそうな気が――しますわね……ふぅぅ」

 メイドと令嬢(れいじょう)は、やっと冷静(れいせい)になったのか――

 ちかくのテーブルに、(たお)れ込むように突っ伏した。

正八胞体/4次元超立方体。4次元ユークリッド空間における8個の3次元超立方体セルから構成される、高次元物体。立方体を構成する6つの面と、4次元空間に存在するための手続きとしてさらに2つの計8つの面が、それぞれ立方体に置き換えられたもの。

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