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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
5:大森林観測村VSガムラン町

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665/744

665:厨房ダンジョンLV2(裏)、VS三匹の蟹

「シガミーちゃン! おきテおきて()

 ぅるへぇぃ――むにゃわー?


 揺れる視界(しかい)

 ぼやけた視界(しかい)が、(ぞう)(むす)んだら――ボッ!

 (よこ)から突き出る(はさみ)

 あの素早さ(・・・)には、見覚(みおぼ)えが。


「((だれ)が、シガミーちゃンかぁ……迅雷(ジンライ)ぃー!?)」

 (なん)だぜ、その(わらし)みてぇな、しゃべりわぁ?

 ふぉん♪

『>>シガミーの覚醒を促すため、感情的反応を隆起する音声ファイルを生成しました。現在42のうち、6個目のファイルを再生済みです』

 わからん(だる)ぃ。


 ボボボボボボッフォッ!

 (なお)(よこ)から、突き出される(はさみ)


 正面(しょうめん)(おお)きな(ひら)たい(かに)が見える。

 (くる)しぃ(ねみ)ぃ。

 (まわ)視界(しかい)(よこ)には(ちい)さなカニが居――


 おれの(からだ)が、ひとりでに(うご)く。

 ぽっきゅぽぽぉぉん――♪


 (はら)(しろ)く、(あたま)から背中(せなか)四つ足(あし)尻尾(しっぽ)が――

 菖蒲色(あやめいろ)地色(じいろ)に、紫鳶(むらさきとび)縞模様(しまもよう)

 そんな虎縞(とらじま)(やつ)片手(かたて)をつかまれ、振り(まわ)されている。

 (つら)(つら)(ねみ)(つら)い。


 ボッフォッ!!

 ボッフォッ!!

 左右(さゆう)から突き込まれる、(はさみ)

 それを蹴り飛ばし、片手(かたて)(さば)く――

 虎型ふ号(おれ)手足(てあし)

 (しち)(かた)(はな)った(あと)は、(ろく)(からだ)(うご)かせねぇから――

 迅雷(ジンライ)(まか)せになるのは仕方(しかた)がねぇがぁ、ちったぁ加減(かげん)をしろやぁ!


「やーべーぇー――ニーャーァー♪」

 自分(じぶん)(こえ)と、(そと)から聞こえる(ねこ)の鳴き(ごえ)が――

 いーつーまーでーもー、聞ーこーえーてーーくーるーぅーぜーぇー?


「しがみぃちゃぁん、たぁすぅけぇてぇぇ――」

 おれを振り(まわ)す、虎型ひ号(ビステッカ)が――

 泣き(ごと)を、言ってやがる。


「(だれが、シガミーちゃんか?)」

 そんな場合(ばあい)か、ほら避けろ。

 真上(・・)から(はさみ)が――とんでもなく、でけぇ(はさみ)が――


 正面(しょうめん)(かに)が、いつの間にか――

 おれたちの、すぐ目の(まえ)に――

 (まわ)り込んでいやがった!


 その(うご)きは、(いま)のおれの目に――

 到底(とうてい)、追える(はや)さではなく――

 うっぷ――ぅげぇぇ!

 ああー、(くる)しぃ。(くる)しぃ。


 ふぉん♪

『>>回復薬をどうぞ』

 カッシュン――口元(くちもと)に、なんか出た。

 (なん)だコレ邪魔(じゃま)だぜ(はさみ)を避けろ――(はさみ)

 ヴッ――――ぐるん、ジャッリィィィンッ♪


 ゴギャギュギギィィィィンッ――――♪

 (いま)のおれに(うご)かせたのは――

 せいぜい片手一本(かたていっぽん)

 虎縞ども(おれたち)へ振り下ろされた(はさみ)を――

 (かろ)うじて、錫杖(しゃくじょう)で受け止めた!


「じがみ゛ぃぢゃぁん、だぁずぅげぇでぇぇ――」

 泣き(ごと)を言う(ひま)で、避けろやぁ。

「――――だれが、ジガミーちゃんかぁ、けっほけほっ!」

 吐いちまった(もの)(あたま)(なか)――

 (かお)(まわ)りに飛び散った!


 (はじ)かれたのとは(べつ)の、(ちい)さい(ほう)(はさみ)で――

 目に付いたゴミを取る、大蟹(おおがに)

 その(つぶ)らな(ひとみ)が、おれたちをじっと――

 見据(みす)えている。


 あの目は知ってる。

 日の(もと)山中(さんちゅう)で、出くわした野犬(やけん)や――

 岩場(いわば)で出くわした、火吐(ひは)(おおかみ)や――

 狐耳の母娘(コントゥルおやこ)が――

 おれに向けたのと、同じだ(・・・)


 はぁはぁはぁはぁ――吐いたからか。

 いくらか(あたま)が、はっきりしたぜ。


   §


三匹(・・)(かに)に、(はさ)まれましたわ――ニャァ♪」

 今度(・・)(さそり)じゃなくて、本当(ほんとう)(かに)だった。

 正面(しょうめん)大蟹(おおがに)と、あとは(たつ)(とり)方角(ほうがく)小せぇのが(・・・・・)(いっぴき)匹ずつ。


「せめて、この場に五百乃大角(いおのはら)が居なかったのが、(さいわ)いだぜ――ニャァ♪」

 居たら(かなら)ず「仕留(しと)めて、(ばん)のおかずに出して」と言いやがっただろうからなぁ!


 地に落ちたおれたちを待ち受けていたのは――三匹(さんびき)甲殻類(かにたち)

 (さそり)(ちが)い、相当(そうとう)(かた)さで――

 あの大申女(おおざるおんな)(もっ)てしても、「見かけたら、一目散(いちもくさん)に逃げなさいな」

 そう言わしめる(ほど)の、超難敵(ちょうなんてき)


 ガキガキガキガキッ――――ゴリッ!

 ちっ、錫杖(しゃくじょう)をつかまれたぜ!

 (かに)(はさみ)ってぇのわぁ――こんなに厄介(やっかい)なもんだったのかぁ!

 〝両刀遣(りょうとうつか)い〟てのは町中(まちなか)には居たが――いくさ場じゃ、とんと見なかった。

 仕留(しと)めた雑兵(そうひょう)脇差(わきざ)しを抜いて、近寄(ちかよ)(てき)に投げつけたりはしたが。


 ガサゴサッガサゴササッ――バゴォン!

 突然(とつぜん)姿(すがた)を消し背後(はいご)(あらわ)れる殺気(さっき)

 見る(まえ)に、(よこ)っ飛びに避けないと――割れた地面(じめん)のように、砕かれる(・・・・)

 強化服(シシガニャン)頑丈(がんじょう)さを信用(しんよう)はしていても――ニゲルの安物(やすもの)(けん)っていう、例外もある(・・・・・)

 避ける以外(いがい)の、逃げ道(みち)はない。


 しかし――

「や、やべぇ! まだ(からだ)(うご)かん、迅雷(ジンライ)(ちから)を貸せやぁ!」

 虎型(とらがた)(ごう)を、突き飛ばしたまでは良かったが――

 (たお)れた虎型ふ号(おれのからだ)は、(ろく)(うご)いちゃくれねぇ!


 猫耳頭(あたま)を、(つよ)(まわ)す――がちり。

 しっかりと襟回(えりまわ)りとくっ付いてるから、それ以上(いじょう)(まわ)らない。

 それでもおれの目は、(せま)り来る〝大蟹(おおがに)〟を(とら)えた。

 画面(モニタ)視線(しせん)を追いかけて、真後(まうし)ろを見せてくれているのだ。


 ふぉん♪

『>>遠隔操作するためには、〝裏天狗一式〟を内蔵する必要があります』

 くそう。こんなことなら虎型(とらがた)二匹(にひき)に、裏天狗(うらてんぐ)仕込(しこ)んでおくんだったぜ!


 ふぉん♪

『超特選厨房蟹【奏者】/

 鋏脚と甲羅を持つ、十足。食用甲殻類としては、最速にして最強種。

 甲羅は硬く、物理・魔法共に弾く。

 中に詰まった身は肉厚で濃厚、特徴的な巨大鋏脚は特に美味とされる。

 甲羅は耐物・耐魔法のレア素材としてだけでなく、

 衝撃⇔筋力強化機能へ転用可能。』


 ふぉん♪

『ヒント>鋏脚/はさみ。海老や蟹など節足動物の爪。』


 こぉのぉ大蟹(おおがに)めっ!

 (はや)くて(かた)くて、しかも(うま)いと来てやがるぜ!

「(ええ、コレを(のが)した場合(ばあい)のイオノファラーの機嫌(きげん)は、地に落ちると(おも)われま())」


 くそぅ、大申女(ロットリンデ)が言っていたのは、マジ(・・)だったな!

 このままじゃ、おれたちが餌食(えじき)にされちまう。

 おれは、ぽきゅごろんと寝転(ねころ)がり――――ギャギチッィイィイィン!

 錫杖(しゃくじょう)で、巨大(きょだい)(はさみ)を受け止めた。


 その(おお)きさは、巨大蟹(きょだいがに)甲羅(からだ)くらいあって――

 見てるだけで、意識(こころ)を持ってかれる。


 ぶくぶくぶく――――にょきりっ!

 また大蟹(おおがに)と、目が合った。

 突き込まれる、もう(ひと)つの(はさみ)


「かえんのたまかえんのたまかえんのたま――かっぎゅ、ひひはい――ニャァ♪」

 虎型ふ号(おれ)(おそ)った(ちい)さい(ほう)(はさみ)に、果敢(かかん)にも(いど)虎型ひ号(ビステッカ)

 (まえ)大講堂(だいこうどう)自慢(じまん)してた、(おぼ)えたばかりの上級魔法(かえんのたま)


 だが大蟹(おおがに)は目を(わず)かに、引っ込めただけだった。

 燃えさかる(ちい)さな(ほのお)は、見る間に(ちい)さくなっていき――

 とうとう虎型ふ号(ビステッカ)は、(くち)を押さえて(うご)かなくなった。


 かぁ――仕方(しかた)ねぇ!

 迅雷(ジンライ)――〝(めつ)モード〟の撃ち(かた)ぁ!

 ちゃんと、(おし)えろやぁ!

 今撃(いまう)たねぇと、死ぬ。


「(口頭(こうとう)技名(わざめい)(とな)えてください――どんな技名(わざめい)にしましょうか())」

「(技名(わざめい)だぁ――〝滅門戸(めつモード)〟で良いだろぅが! (はや)くしろや!)」

 今死(いまし)ぬ、もう死ぬ!


 ふぉん♪

『>音声入力:滅モード――温泉入浴滅門戸を、滅の太刀自動化モードのショートカットとして登録しました』

「(では〝温然入浴(おんせんにゅうよく)滅門戸(めつもんど)〟と(とな)えてくださ())」


温然入浴(にゃみゃにゃー)滅門戸(みゃにゃーご)!――ニャァ♪」

 ギャギュギギギッ――――!!!!


 ふぉん♪

『【滅の太刀自動化モード/ON】

 ━━━━╋:チャージ 残弾数:4』

 画面(モニタ)(なか)(ちい)さい地図(ちず)(よこ)

 抜き身の小太刀(かたな)の絵が、(あらわ)れた。

 使(つか)ってみりゃ、読み(かた)もわかるだろ。


   §


 ドズズズゥゥン!

 地に落ちる巨大(きょだい)(はさみ)


「よぉぅし! 斬ってやったぜ!――ニャァ♪」

 寝転(ねころ)んだままの、(めつ)モード四連撃(よんれんげき)

 最後(さいご)一太刀(ひとたち)(かろ)うじて、当たってくれて(たす)かった。


 ふぉん♪

『【滅の太刀自動化モード/OFF】

 …………╋:チャージ 残弾数:0』

 小太刀(かたな)の絵は、(みじ)くなっちまって――

 もう撃てそうもねぇ。


 ぶくぶくぶくぶくっ!

 大蟹(おおがに)(あわ)を吹いて――

 ガサゴサッガサゴササッと、逃げ出した。


 カサコサッカサコササッ!

 カサコサッカサコササッ!

 (ちい)さいのも、その(あと)を追っていく。


厨房蟹(ちゅうボうがに)逃走(とうソう)確認(かくにン)追撃(ついゲき)しマすか()

 金物(かなもの)をひっかいたような、迅雷(ジンライ)(こえ)


「ふぅぅ、馬鹿(ばか)を言うな。おれたちも逃げるぞ」

 と言っても、おれの(からだ)は、もう(うご)かんが。


「な、(なん)とか生き延びたわ――ニャァ♪」

 画面(モニタ)(ちい)さな(わく)(なか)子供(ビステッカ)(こえ)を張り上げた。


 迅雷(ジンライ)鋏仕舞(はさみしま)っとけ。

 これで、五百乃大角(いおのはら)への土産(みやげ)出来(でき)た。

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