664:厨房ダンジョンLV2(裏)、七の型と魔法自販機の仕組み
ヴッ――ぐるるん、ッジャッリィィィィィンッ♪
錫杖を取り出し、対魔王結界で放ったときと同じように――
ふぉん♪
『ヒント>蟻地獄/ありじごく、巨大な大顎を持つ肉食動物。捕獲した獲物に消化液を注入し、吐き戻した液は強い毒性を有する。ウスバカゲロウの幼虫でウスバカゲロウ科に分類されるが、カゲロウ目とは別物。』
臼馬鹿下郎!? その酷ぇ名には、同情するが。
ビステッカが居る以上、放ってはおけん!
「ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――七の構え、觜参――角亢。――
槍から東方七宿まで。」
全身全霊をもって放つ、おれの最大(威力)――
かつ最小(半径)の大技が、炸裂する。
「きゃぁぁぁぁっ――――――ニャァ♪」
背中に張り付いた、虎型ひ号がうるせぇ。
黙って見とけやぁ!
もぞもぞと体を起こす、蟻地獄とやら。
やべぇ以外と動きが速ぇ――逃げられるっ!?
ギャッリイィィィィィイィィィィィィィィィィィィンッ――――!!!!!!!!
もう錫杖はきっかり東方七宿まで、捻っちまったっぜっ――!?
ギャッリイィィィィィイィィィィィィィィィィィィンッ――――!!!!!!!!
散る火花!
蟻地獄が潜っていた床から、姿を現したのわぁ――
逃げようとした訳じゃなくてぇ、七の型を――
生意気にも真下から、受け止める為だったらしいぜ。
コガッガッガッゴッガァァァァァァンッ!
ふぉん♪
『>錫杖をつかんで、回転を止めようとしているようです』
ギギギャッリィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
まだ止まる訳にはいかん――止まったら、大顎の餌食だぜ!
ずざぁっ、ガチリ!
足で錫杖を挟み込み、回転を続ける!
ギャギャギャギャギギィィン!
良し弾いた!
すとん――大顎の真ん中に、やっと足が届いたぜ!
蟻地獄を踏みしめ――ぽぎゅぎゅりっ!
最後に錫杖を、押さえ込む――――ざりざりざりりぃーーーーーーーーっ!
夏毛の足が止まれば、地面が丸ごと抜ける。
引き絞った分だけ、より深くなるはずだから、気を付けてくれやぁ迅雷ィ!
ふぉん♪
『>了解しました』
そして、おれの体は七の型を撃ったら――
前みたいに倒れちまう訳だが。
こっちの虎型は操れるか?
ふぉん♪
『>>接触している今の姿勢なら、可能です』
「(言うまでもねぇが、ビステッカは死なすなよ)」
「(お任せください)」
ギュギャッチリ――おれの足が、完全に止まる。
ふかく突き刺さった錫杖を、かかえた虎型ふ号の手。
おれは――印を結ぶ。
これに真言はのらねえが、あるのとないので威力がなんでか変わる――
「――滅せよ!――ニャァ♪」
ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッドッズズズズズズズムン!
ふわぁり――気がとおくなる。
精魂をつかい果たしたからだ――
地面に着地したはずが、また空中に放り出されてる。
ちがうか、んう?
わかった……虫の体ごと、地の底が抜けやがったなぁ――?
ふにゃり――――目を閉じる寸前。
瓦礫と化した、辺り一面。
砕けた蟻地獄や、吹き飛ぶ岩。
割れた地の底から、〝おにぎりの尻尾〟が大量に湧き――――
空へと登っていくのが見えた。
あまりの不気味さに――ふにゃり。
ガチガチガチガチガチガチィン♪
鈍い音と煌めく気配に、わずかに目が開く。
巨大な、黄金の円盤。
4シガミーはあるだろコレ?
すげぇ、お宝じゃね?
けど、なんだか見覚えがあるような、ないような?
〝見たことのない金貨〟が歯車の中を、ぐるぐると回転しながら――
瓦礫に、埋もれていくのが見えた。
金貨が一周する度に、別の歯車に空いた穴に――
やはり巨大な、〝見たことのない銀貨〟が――
ゴト、ゴト、ゴトリとはめ込まれていく。
ぐるぐるぐるぐる、チャリィィン♪
ゴト、ゴト、ゴトリ。
ぐるぐるぐるぐる、チャリンチャリィィン♪
こりゃぁ、村長さまも知らない――
魔法自販機の、仕組みな……んじゃ……ね?




