638:御神体修復作戦、ダブステップ
「何言……ってんの? あ……んたたち……の方が、時……々キュル……ルって加……速してるん……じゃないわよ?」
久しぶりに見る根菜さまの、動きは、カ、クカク、とし、てい、た。
「ウケ……ケ……ケッケッケケ……ケケケケ……ケケ……ケケ……ケッ?」
御神体の、そんな徒ならぬ様子に――
〝触らぬ神に祟りなし〟と、皆そそくさと逃げて行った。
曲がりなりにも現世を掌る、美の女神兼根菜の大事だ。
無理もねぇやな。
神官女性も御使いさまを探しにでも出かけたのか、見当たらない。
残ったのは、おれと根菜と棒。
それと、リオレイニアと茅野姫に――
どういう訳か、ゲスロットリンデさま。
「小猿! とうとう〝女神粘土ちゃん〟が、動きましたのね♪」
じりじりと、にじり寄る大申女。
ふぉん♪
『シガミー>リオレイニア、大申じゃなくて、ゲスロットでもなくて、ロットリンデさまを少し引き離しておいてくれんか?』
ふぉん♪
『リオレイニア>とてもイオノファラーさまに興味が、おありのようですが?』
隣の大机から、こっちを見る美の権化。
ふぉん♪
『シガミー>そうなの、超ご執心でな。前に一度取られたからさ、頼むわ』
ふぉん♪
『リオレイニア>ふう、わかりました』
立ち上がり、腰に手。
「ロットリンデさま、宜しければこちらで、お茶に致しませんか?」
一瞬で茶の支度を調える、凄腕の元侍女長。
「クスクス♪ それでは何か、お茶菓子も、お作り致しましょう♪」
菓子を作ると聞き、興味が湧いたのか――
くるりと踵を返すゲス……ロットリンデさま。
「ちょ……っと、シガ……ミー! どーいぅ……こと……わの!? い……まあたくしさ……まを見……て、〝女神粘……土〟って言……ったわ……よ!?」
驚、愕の、御神、体。
カックカクしやがって、超うぜぇ!
§
「我々の……ク……ロックジェネレータに異常は見ら……れません。異……常なのはシガ……ミーの髪……型では?」
相棒も同じようにカクカクと漂ってはピタリと、まるで空中に縫、い付け、られ、たか、の、よ、うに止まるの、を繰り、返し、ていて――やっぱり、超うぜぇんだが。
釣られておれまで、カックカクしちまぅだろぉがぁ!
此方の大机は、おれたちだけになった。
気兼ねなく久々に、口喧嘩をすることにする。
「やかましい。これでも、殆ど直ったんだぞ。元はフカフ村の連中みたいに、なっちまってたんだからな」
おれの頭わぁ、放っとけやぁ。
「そ……んなことよ……り、い……ま女神粘土……って――あた……くしさ……まの、この姿形……のこと……を教えた……の?」
「いいや、元から日の本の物のことを色々と知ってやがったぜ。なぁ迅雷」
なぁ、迅雷。
「そうデし……た、日本刀……ヤ……米ヲ……知って……いま……シ……た。十中八九、日ノ……本より……ノ転生者と……思……わレます」
その話もしねぇといけなかったんだが、こうカクつきやがるとまともに会話も出来やしねぇぜ。
「(その話は一先ず、後回しだ。ソレよりお前らマジで、何でそんな有様なんだぜ? 女神像への繋ぎ方でも悪かったのかぁ?)」
女神像の背中の箱に頭陀袋に入ったままでも良いから突っ込んで、暫く待って音がしたら引っこ抜く。
それくらいの仕事は角娘にも、ちゃんと出来ただろ。
「(知らな……いけど……ぉ、直……接の原……因わぁ――)」
「(機能停……止に陥……った直……前の、……女神像ネット……ワーク途絶が……原因か……と思われま……す)」
くそう。念話まで、カックカクし、やがるぜ。
「(ちっ、まるで本調子じゃぁねぇがぁ、それでも話が出来るだけマシか。おまえらに大事な話がある。聞いて驚け)」
まず、こいつを言わんと、何も始まらねぇ。
「(何……わよ? ロッ……トリ……ンデさんの転生者話……の他に、そ……うそう驚くことなんて……無……い……わよ。もったいぶらずに教えなさ……い……わよ。あっ、ま……さか、あ……たくしさま大……復活記……念パーリィー……ナイ……ト開催のお……知らせかしら……ん?)」
や、か、まし、い!
「(轟雷並び……に、全シシ……ガニャンのロ……グファイルを精……査。概略……にはなりますが、概ねの状況を理……解しました)」
うん、森の主に因縁を付けられて、おれたちはこの村から出られないんだがな――
その話でもねぇんだぜ。
ふぉん♪
『イオノ>けどこの速度差は、さすがに、うっとうしいわねん?』
ふぉん♪
『>一行表示は通常通りに、使用可能なようです。恐らくは空間リソースのキャッシュデータに問題が発生しています』
ふぉん♪
『シガミー>その心は?』
はい、わからん。
ふぉん♪
『>簡単に言うなら、フカフ村への山道での女神像ネットワークへの隔絶と、現在の大森林における、やはり女神像ネットワークへの介入による、長期にわたる通信妨害によって生じた弊害です』
偽の山道と大森林か。
ソレについては心当たりが丁度、二つあらぁ。
ふぉん♪
『シガミー>フカフ村村長が持つ、〝封鎖空間〟を作り出す魔法具箱。そして森の主による、マナキャンセラーに似た〝森域結界〟とかいうスキルが、お前らを壊した原因だ』
「(というわけで、お前ら直るまで暫く、一行表示で話せや。それでな――)」
ふぉん♪
『シガミー>何とな。見つかったんだよ、例の物がよ』
ふぉん♪
『>例の物とは? まさか、大森林へ飛ばされた巨木・龍木の種が見つかったのですか?』
「あ? あー?」
ふぉん♪
『シガミー>そういや、そんなのがあったか。忘れてたぞ? 大申女がいるから何があっても大丈夫だって、女将さんは言ってたけどよ』
森の主から言われた〝木を切る話〟は、それがらみってことだわなぁ。
けど観測村から見える範囲には、そんなのは生えてねぇ。
「えーっと、埒が明かねぇ。何個か貰ったのを仕舞っといたのが――」
ヴヴッ――――ごとんがこん、がちゃっ、がつん――ばらっららごとととっ!
数にして、10個程あった。
それはおれたち猪蟹屋一味が、喉から手が出る程欲しかった――
「S……DKじ……ゃんか!」
ああ、そうだぜ!
「しか……も大量……にあります!」
そうなんだよ!
ふぉん♪
『シガミー>聞いて驚け。全部で、これの何十倍もあるぞ!』
そんな必要はねぇが、全部使えば数百匹からの、おにぎり備が作れる程にある。
備/戦国……時代か……ら江戸時……代において、戦……時に構成された最……小の……戦……術単……位。
単……独作戦行……動可能……な人……員……の総勢は……3……00~800名……程……度。
槍……隊、弓隊、……鉄砲……隊、騎馬隊……等で……構成され……る。
こ……れをひとつで……も編成……できること……が、大……名としての……基……準。




