590:大森林観測所への道、悪逆令嬢VSニセ・シシガニャン(阿鼻叫喚)
ボゴッツ、ザッギィン――――ボフッ、ズザザザザァァッ!
狂ったシシガニャンたちは、生徒の形の武器を振り回し――
その数を減らしていく。
偽特撃型改たちは本物と違って、相当に脆い。
ズドン――ビビビーの頭が、偽『g』番を切り裂く!
「(妖術やまやかし、狐付きの類いじゃねぇんだな?)」
山道の脇に生えていた下草や藪が、すっかり刈られた。
静かに走り回る、特撃型たち。
幸い、木の上に隠れた、おれには気づいてねぇ。
「(実像は光学並び電磁気的に、捕捉できています。シガミーの脳波にも異常はありません)」
偽もんだろうが、躱して叩いて凌がねぇと、殺されちまう。
お前らぁ、静かにしとけよ?
よほど恐ろしいのか、五百乃大角がおとなしくて助か――「(なんまんだぶなんまんだぶなん――)」
ばかやろう。お前はこの現の神さんだろうが!?
阿弥陀如来に縋ってどうする!
「ポポポォオーーーーン♪ 乙種物理検索終了。異常値は検出されませんでした。論理封鎖態勢は解除。繰りかえします、乙種物理検索終了。異常値は検――ブツッ」
うるせえ!
ぐりりりりりん!
まだ10匹は残る偽どもが、一斉にこっちを見上げた!
見つかった――――ゴガガガガガガガッギャリリリッ、バギバキバギッ!
倒される木。おれは地面を転がり、横っ飛び。
「フフッ、今度こそ追い詰めましたっわ、宮廷魔導師! 年貢米の納め時でしてよっ!」
ぼぼぼごぉぅわっ――――――――ばがぁん!
ちっ、例のリカルル似が、すぐ近くの草むらで声を荒げてやがるぜ!
鮮やかな爆煙がヒュルヒュルと伸び、数匹のシシガニャンを粉砕した。
打ち壊された猫の魔物風や一年A組の生徒風は、弾かれた場所からざざざあと――
砂になって崩れていく。
おれは反対側の端へ姿を現し又、木の上へと身を隠した。
阿鼻叫喚の地獄絵図に、身震いしかでねぇ。
超怖ぇ! これが全部あの、ご令嬢の仕業なのかっ!?
おおよそ、人の所業たぁ思えぬ。
そんな相手と交渉事なんざ――おれの説法でも、通じるかわからんぞ?
ふぉん♪
『>あの声が偽物でないとしたならば、〝悪逆令嬢ロットリンデ〟も我々と同様。この偽山道に翻弄されているように思われ』
そうか。手前で仕掛けた罠に、自ら飛び込む奴ぁ――
見てる分には、ちと面白くはあるがなぁ。
ふぉん♪
『>そういえばシガミー。年貢とは米で支払われるものですか?』
なんだぜ藪から棒に。そんなのは当たり前だろうが?
ふぉん♪
『>トッカータ大陸は地球、シガミーが死んだ後の日の本を参考にしてデザインされました。よって税を年貢と呼ぶことはあるかもしれませんが、米という作物は神域惑星でしか発見されていませんので』
と、いうことわぁ?
ふぉん♪
『>女将さんの知人は、日の本出身者である可能性が高いです』
ふぉん♪
『シガミー>なんだとお!?』
おれじゃ太刀打ち出来ねぇ話だぜ。
根菜さまぁ、出てきやがれっ!
「えぇーい、何ですのこのぉ、顔の無い着ぐるみわぁ! 宮廷魔術師をお出しなさいなっ!」
正面の山道から、一面を覆い尽くす爆煙が吹き荒れ――
偽シシガニャンたちは全て、砂と化し一掃された。
ふぉん♪
『シガミー>五百乃大角さま、大事だぜ。出合えや!』
画面の中に、五百乃大角アイコンが居ねぇぞぉ!?
マジで何処行きやがった!?




