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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
4:龍撃の学院

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575/744

575:龍撃の学院、古代魔法と乱入者たち

 紙包(かみづつ)みの(なか)には、小分(こわ)けにされた茶葉(ちゃば)(ふた)つと――(みじか)太棒(ふとぼう)


「シガミー、字が書ける(ぼう)があっただろう、貸してくれるかい?」

 (すみ)使(つkぁ)わずに、文字(もじ)や絵が描ける――黒筆(スタイラス)のことか。

 そこに字が書ける鉄筆(てつふで)があるが、まぁ良いやな。

 ヴッ――取り出したソレを、手渡(てわた)すと――


 置かれた(かみ)中央(ちゅうおう)

 手書(てがき)きの(おお)きな(まる)(えが)く、女将(おかみ)さん。

 その輪に掛かるように、太棒(ふとぼう)を押し当て――ぽふん♪

 複雑(ふくざつ)環状(かんじょう)文様(もんよう)の焦げ目が、転写(てんしゃ)された。


「〝ひのたま〟を使(つか)ったってことは、魔法具(まほうぐ)か?」

 寺社印(じしゃいん)にしちゃ(ちい)せぇな。家印(かいん)(たぐ)いか?


 わさりっ――かぐわしい(かお)り。

 (かみ)(はん)を押すと、その(うえ)茶葉(ちゃば)(あらわ)れた。


大森林(だいしんりん)観測村(かんそくむら)在住(ざいじゅう)の、凄腕(すごうで)古代魔術(こだいまじゅつ)職人(しょくにん)(つく)った(もの)さね――リオレイニア!」

 メイドの(なか)のメイドを呼びつける、木さじ食堂店主(しょくどうてんしゅ)


興味深(きょうみぶか)いニャァ。構造(こうぞう)としては紙一枚(かみいちまい)。マジックスクロールに酷似(こくじ)しているニャァ♪」

(かみ)転写(てんしゃ)され起動(きどう)した、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)(よう)にも(おも)えませんか?」

 顧問氏(こもんし)顧問秘書(こもんひしょ)二人(ふたり)は、魔法具解析(まほうぐかいせき)にも造詣(ぞうけい)(ふか)い。


「こんなに綺麗(きれい)複雑(ふくざつ)な、輪っかの模様(もよう)は見たことが無いコォン!?」

「そうにゃ、これはきっと一生(いっしょう)一度(いちど)あるかないかの、チャンスにゃぁ()

 喫茶店店主(きっさてんてんしゅ)店員(てんいん)二人(ふたり)は、我楽多(がらくた)……魔法具仲介(まほうぐちゅうかい)(おこな)っている。


「いや、こいつはそんな上等(じょうとう)(もの)じゃぁ無いさね♪」

 (かみ)両端(りょうはし)を持ち上げ、湧いた茶葉(ちゃば)とやらを――

 給仕服の目隠し女(リオレイニア)に、手渡(てわた)す。

 給仕服(メイド)は言われるままに茶葉(ちゃば)が入った(ふくろ)と、追加(ついか)茶葉(ちゃば)(かか)えて去って行く。


「うむ。あそこまで精緻(せいち)(もの)には、お目に掛かったことは無いが――(わし)くらいの年齢(とし)なら(みな)使(つか)えるわい」

 政敵閣下殿(せいてきかっかどの)が、そんなことを言い――(てのひら)簡単(かんたん)図案(ずあん)(えが)いた。

 突き出された光る図案(こだいまじゅつ)は、鳥の絵のよう。


 (みな)使(つか)えるだとぉ?

 ふぉん♪

『シガミー>おにぎり、女将さんから習った古代魔術はどんなだった?』


 ふぉん♪

『おにぎり>光の線で絵を描くと、水が出たり火が出たり灯りが灯ったりしたもの♪』

 まるっきり生活魔法(せいかつまほう)じゃねぇーか。

 ふぉん♪

『>一世代前に用いられていた魔法発動の文法パターンは、図表で構成されていたようです』

 ふぉん♪

『イオノ>なるほどねーん。つまりその紙や掌に描く術式が、近代において魔法杖に取って代わったのね。おもしろっ♪』


「ほんの30……ん゛っん゛ん……ひと昔まえ(・・・・・)までは、この絵を使う(・・・・)古代魔法(こだいまほう)(ほう)主流(しゅりゅう)だったのさ。もちろん強力(きょうりょく)魔法(まほう)使(つか)うときには、魔法杖(まほうつえ)詠唱魔法(えいしょうまほう)使(つか)われていたけどね♪」

 30(ねん)か、それだけの時間(とき)が過ぎりゃ、世のあり(かた)相当変(そうとうか)わりはするだろうが。

 それでも(けん)魔法(まほう)(あつか)いなんかは、そうそう変わらんとも(おも)わないでもない。


 ふぉん♪

『ホシガミー>言語に図案と魔術行使の形態が、一定周期で変わるなんて、まるで流行りすたりみたいですね? くすくす?』

 いや、本当(ほんとう)流行(はや)(すた)りっぽいな。

 時代(とき)(すす)めばまた(べつ)の、魔法(まほう)流行(りゅうこう)が生まれるんだろうよ。

 案外(あんがい)猪蟹屋(うちの)製品(うりもん)である詠唱魔法具(うたうカード)が、主流(しゅりゅう)になったりしてな。


 ふわぁぁん♪

 んぅ――(なん)だぜ、この(あま)(かお)りわぁっ!?


「コッヘル夫人(ふじん)。言われたとおり普通(ふつう)に、紅茶(こうちゃ)手順(てじゅん)で入れてみたのですけれど――」

 カチャカチャキュラキュラと(はこ)ばれてきたのは、(くるま)が付いた(ちい)さな(だい)


「さすがはリオレイニアだね。文句(もんく)ないよ♪」

 リオレイニアが用意(ようい)したカップは、全部(ぜんぶ)で13個。


 政敵派閥(せいてきはばつ)である上流貴族(じょうりゅうきぞく)たちと、王族(おうぞく)(ぶん)

 そしてコントゥル家母娘(けおやこ)(ぶん)

 最後(さいご)(ひと)つは、もちろんウチの根菜(こんさい)さまの(ぶん)だ。

 気を遣わせてしまって、(もぷ)(わけ)ない。

 チーン♪

 チーン♪

 上級鑑定(じょうきゅうかんてい)(かね)()が鳴っているのは、毒味代(どくみが)わりか。

 じゃぁおれも――上級鑑定(しめしめうっひっひ♪)


 ぽこん♪

『ソッ茶/未開の大森林や隣接するフカフ村で採れる、超高級茶葉。

     コクがあって甘みも強い肉厚な葉は、スープにしてよし、

     おひたしにしてよし、ソースにも最適。

     味にうるさい時の令嬢を以てして、「王都宮廷付きの料理人の、

     スープより美味しいわね」と言わしめた、正に万能食材。』

 大絶賛(だいぜっさん)だな、おい。


「うっひゃっ!? なにこれぇ――コーンスープ……いや〝おでんのお出汁(だし)〟みたいな(かん)じもするしぃ――――!? 素敵(すてき)おぃしぃ、超絶(ちょうぜつ)ストロング(うま)いんですけどっ()

 はしゃぐ、根菜さま(いおのはら)

 (ぎゃく)(しず)かに(いき)()く、上流貴族(じょうりゅうきぞく)王族(おうぞく)たち。


「このお(あじ)は、(はじ)めてですららぁぁん♪」

「うむ、十数年越(じゅうすうねんご)しの……この(あじ)――(じつ)(うま)い♪」

女将(おかみ)さんっ、これ猪蟹屋(ウチのおみせ)でも(あつか)わせて欲しいんだけどぉ――!?()


「ソッ(ちゃ)(なか)でも、この〝方陣記述魔法(ピクトペンマジック)〟を(つく)った(かれ)選定(せんてい)した(もの)は、高額(こうがく)なソッ(そう)(なか)でもさらに高値(たかね)取引(とりひき)されるんさね。100グラムが5メートル超えのモクブート一匹丸(いっぴきまる)ごとの値段(ねだん)と釣り合うなんて、良く言われたもんさね」


 碾茶(てんちゃ)か。ありゃ、うまい。

 ぱららっららっ――「あった、なんだ(ぶた)さんじゃんか!」


 ふぉん♪

『モクブート/

 非常に大きな胴体を持つ四つ足の獣。

 体長は3メートルから7、8メートル程度。

 中には10メートルを超える個体の発見例があり。

 天変地異を起こす地割りスキルを持ち、

 そのお味は脂がのった霜降り肉そのもの。

 幻の高級肉として高値で取引されている。』


 あー、はいはい。

 そのうち、獲ってきてやるから、まずは(よだれ)を拭けや。


   §


 傾国(けいこく)|(物理(ぶつり))の美女(びじょ)|(悪漢(あっかん))と(うわさ)された吸血鬼(きゅうけつき)令嬢(れいじょう)ロットリンデ。

 その寵愛(ちょうあい)一身(いっしん)に受ける、男性(だんせい)

 女将(おかみ)さんの(おさな)なじみでもある、件の茶葉(そっそう)古代魔法(ぴくとなんたら)名手(めいしゅ)

 (かれ)所有(しょゆう)する、(てつ)(はこ)


「お(かね)を入れると……もぐもぐ……物を出す箱(・・・・・)ねぇ。それって普通(・・)自販機(じはんき)じゃぁないのぉ()

 根菜(こんさい)さまはリオレイニアを呼びつけ、意地汚(いじきたな)くも出し(がら)となったソッ(そう)(ついば)んでいる。

「あっ……もぐもぐ……それだ!」

 女将(おかみ)さんまで一緒(いっしょ)になって、(しお)を振って食べ(はじ)めた。

「え、どれ()

「たしかに〝ジハンキィー〟って言ってたよ、ロットリンデが(・・・・・・・)

 〝禄人厘手(ろっとりんで)〟ぇ? ふーん……それおれにも、くれやぁ。

 手を差し出すと、(なん)政敵派閥(おきぞくさま)連中(れんちゅう)まで、手を差し出して来やがった。

 お(まえ)さま(がた)は飲んだだろーがぁ、お(ちゃ)をよぉー!


「ロットリンデ? (なに)か聞いたことがあるニャン……たしか、この(へん)ニャァ♪」

 大講堂(だいこうどう)(すみ)本棚(ほんだな)から取り出されたのは、(うす)くて(おお)きな(ほん)……絵本(えほん)だぜ。

 絵本(そいつ)が出るといつも、(ろく)でもない(もの)も出てきやがる。


 (うた)にもなったミノタウロース、『つののはえたまもの』。

 建国(けんこく)(たたか)いを(あらわ)しているらしい、『おうさまとりゅうのまもの』。

 そして――『けいこくのまもの』。

 だが最後(さいご)のこれは(ほか)(ふた)つよりは、いくらか(あつ)みがあって、実際(じっさい)姿(すがた)を書き(うつ)したような立派(りっぱ)な絵が沢山(たくさん)(えが)かれていた。


随分(ずいぶん)と、お綺麗(きれい)魔物(まもの)ですわね♪」

「ららぁん♪」「ほんとぉですねぇー♪」

「ウッケケケケッ――♪」

 淑女(しゅくじょ)茶会(ちゃかい)に混じる妖怪(ようかい)にも、もう慣れてきたな。


「掛け値なしに綺麗(きれい)(ひと)ではあったけど……ある意味(いみ)魔物(まもの)さね――」

 とおい目をする、コッヘル婦人(おかみさん)


   §


 ふすん――っ二回目(にかいめ)に押した判子(いん)からは、ソッ(そう)茶葉(ちゃば)(あらわ)れず――

 (ちい)さな白煙(はくえん)が、立ち(のぼ)っただけだった。


(かれ)の目に(かな)(ほど)(もの)になると、(ねん)(ひと)つまみしか採れない(とし)もあるからねぇ」

 落胆(らくたん)五百乃大角(いおのはら)と、政敵頭領(せいてきとうりょう)

「フカフ(むら)に行けば新鮮(しんせん)なソッ(そう)をいくらでも、おいしくいただけるんだけど」

 「フカフ村?」「いくらでも()

 やい根菜(こんさい)(へん)連帯感(れんたいかん)(むす)ばれてるんじゃねぇぞ。


「どうぞ、シガミー」

「おう、(わり)……ありがとう、ごぜぇますわぜ」

 リオレイニアとサキラテ家のメイドたちが、(べつ)(ちゃ)を入れてくれた。


「そもそもの王家(おうけ)(たい)する不信感(ふしんかん)(すべ)てが、ゴーレムの外観(がいかん)によるものであり――」

 うむ、正論(せいろん)だぜ。(みみ)(いた)王女殿下(ラプトルひめ)が、ニゲルを(さが)し――

 青年(せいねん)土煙(つちけむり)を上げ、彼方(かなた)へと消え去った。


「だがお(まえ)さん(がた)が撫でてる、そいつらも(・・・・・)――ゴーレムだぞ?」

 おれは言ってやった。

 お貴族(きぞく)さまが興味(きょうみ)を持っていた、おにぎりと子馬(こうま)

 あいつらは様式(ようしき)術式(じゅつしき)(ちが)いがあれど、正真正銘(しょうしんしょうめい)――

 発掘魔法具(アーティファクト)魔導工学(まどうこうがく)(うご)く、人形(にんぎょう)だ。

 そんな事実(じじつ)(おそ)(おのの)く、上級貴族(じょうきゅうきぞく)たち。


「「「「「「「「まさかっ!? こんなに聞き分けが良くて手触(てざわ)りも良くて、(なに)より目が天を突いていない(・・・・・・・・・・)!」」」」」」」」

 「ららぁん!?」と王女殿下(ラプトル)(うら)みがましい目が、おれに突き刺さる。

 そのご意見(いけん)は、(あま)んじてうけろや。

 (かたく)なに目を尖らせたがった(・・・・・・・・・)のは、王女殿下(おまえ)さまだろうが。


   §


 白熱(はくねつ)混迷(こんめい)(きわ)めた、『大森林観測村との、貿易協定についての協議会』。

 やがてコッヘル商会(しょうかい)による、〝王族(おうぞく)上流貴族(じょうりゅうきぞく)派閥(はばつ)双方(そうほう)(えき)のある提案(ていあん)〟がなされるに(いた)り――

 (すべ)てが上手(うま)く行くかと(おも)えた。そのとき――


 ゴドン――ガチャガチャガチャガチャチャチャチャチャッ♪

 壇上奥(だんじょうおく)黒板(こくばん)のとなり。

 ちいさめの(ドア)が、その(かたち)(おお)きさを――めまぐるしく変えていく。


 ガチャリと(とびら)(ひら)き、姿(すがた)(あらわ)したのは――


「ふふぅん、おれっちのダンジョンと(くら)べたらぁ、質素(しっそ)(たたず)まいですねぇーん♪」

 って、(なん)だぜその――家財道具一式(かざいどうぐいっしき)わぁっ!?

 おっさん、まさか此処(ここ)住むつもり(・・・・・)かっ!?

 それに〝深遠(しんえん)(ささやき)き〟の三人(さんにん)が。でかい(なべ)(かかえ)えてる?


 バタンと閉じられる(ドア)――

 ガチャン、ガシャガシャガシャガシャッ――♪

 ひとりでに留め(がね)が閉じられ――

 ゴドン――ガチャガチャガチャガチャチャチャチャチャッ♪

 もう一度(いちど)、ガチャリと(ひら)(とびら)――


「あら、(むすめ)ー♪ ウチの(むすめ)ー、おーぃ♪」

本当(ほんとう)だ、ウチの(むすめ)だ! おおぉーい♪」

「おねぇちゃんだぁー! おーぃ♪」

 騒々(そうぞうしい)しい連中(れんちゅう)が、(つぎ)から(つぎ)へと――


 大講堂(だいこうどぷ)乱入(らんにゅう)する――大勢(おおぜい)不審者(ふしんしゃ)たち。


「ぷぎゅりゅるるっ――――!?」

 あー、蛸之助(たこのすけ)まで出てこようとしてやがるぜ――おれは力一杯(ちからいっぱい)(ドア)を閉めた。

 ぼっつん――――ジタバタジタバタッ!

 あ、やべぇ(わり)ぃ、千切(ちぎ)れちまったぜ。


 ふぉん♪

『>切断時の痛みや衝撃は緩和出来るようですし後日、謝罪がてら御用聞きに伺いましょう』

 そうだな。欲しいものがあるなら、(なん)でも(つく)ってやろう。


 じったんばったん、ぐねぐねぶぶるぞわ――!!

 じったんばったん、ぐねぐねぶぶるぞわ――!!


「「「「「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!? ま、魔物(まもの)!?」」」」」」」」

 上級貴族(じょうきゅうきぞく)たちが、(あば)れまくる蛸足(たこあし)蹴散(けち)らされていく。

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