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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
4:龍撃の学院

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523/744

523:ツツィア子爵領紀行、旧カピパラポテパケギウス領ザンクネリキキマギバネロベネグラムタタラディッシュ新町へようこそ

「ほひょほぉうぅ? このおれっちの正体(しょうたい)に気づくとわ、ただ(もの)ではないなぁっ――ひゃっはぁっはぁあぁっ♪」

 じっと見てると、(ひと)ではない(なに)かに(おも)えてきた。

 しかも小悪党(こあくとう)のような小ずるい(つら)が、満面(まんめん)の笑みを浮かべ――

 あっちへカタカタ、こっちへカッタタタタタタと――

 まったくもって、(さだ)まりゃしねぇ!


店主殿(マスター)よ、この(モノ)が向けているのは――害意(ガイイ)か?」

 ふぉん♪

『>シガミー、リオレイニアの痕跡を捉えたときの〝化生モード〟がONになっています」

 (まど)わされねぇのは、火龍(かりゅう)ゲイルと迅雷(ジンライ)だけ。

 迅雷(ジンライ)(なに)かを検出(けんしゅつ)したが、解析(かいせき)する間に笑い死にだ(やられる)

 こいつぁ、やべぇ。(ちょう)やべぇ――


 すっぱぁぁぁん――♪

 突然(とつぜん)白煙(はくえん)(はな)つ、おっさんの(つら)

 狼狽(うろた)えるおれたちの(まえ)に、割って(はい)ってきたのは――


「こらっ、あなたっ! また(たび)(かた)(こま)らせて、(あそ)んでいたわねっ!」

 魔術師(まじゅつし)外套姿(ローブすがた)

 おっさんと(くら)べたら、随分(ずいぶん)質素(しっそ)だが――

 編んだ長髪(ながかみ)(つや)やかで、顔色(かおいろ)血色(けっしょく)が良かった。


(みゃ)、〝面白れぇ(みゃぎゃ)のが消えた(みゃんぎゃー)?」

 予測演算(よそくえんざん)とのズレも、解消(かいしょう)されたぞ。

 無数(むすう)のおっさんの一秒後(みらい)が、しゅるしゅると消え――

 (いろ)の濃い、一人(ひとり)だけが(のこ)った。


「「ぎゃっ、猫の魔物(ケットーシィ)二匹(にひき)も居るわっ、あなたっ!」」

 おれとおにぎりの姿(すがた)を見て、おののくご夫妻(ごふさい)

「どーしてっ、()()・を・するんですのっ――――ひのたまぁ♪」

 自分(じぶん)旦那(だんな)をひっぱたくのに使(つか)った、(かみ)出来(でき)(おうぎ)のような物は――


 ふぉん♪

『>張り扇/はりおうぎ。ハリセン。講談師が調子を取るために使う、台を叩く紙製の扇。攻撃力は皆無だが、クリーンヒットするとそこそこの衝撃』

 張り扇(はりせん)とやらは魔術師(かのじょ)にとって、魔法杖(まほうつえ)でもあるらしい。


「お(かあ)さんっ!」

 (ころ)がる父上殿(おっさん)を、片足(かたあし)で――カァァンッ♪

 (あし)で止めてやる、フッカ嬢(むすめ)


「あら、チャッカちゃん。お(かえ)りなさい」

 おっさんをひっぱたき、火であぶったのは――

 フッカの母上(ははうえ)らしかった。


 むくりと起き上がった、おっさんの(あたま)がモコモコのフワフワで。

 (ひげ)(うず)(えが)いていて、びょびょびょびょびょびょびょびょ(おと)まで立てやがる。


「も、もう勘弁(かんべん)してくれっ……」

 この場に彼女(かのじょ)が、リオレイニアが居なくて――本当(ほんとう)によかった。

 (たし)かに、〝(ちから)ずくで(わら)わされる〟のは――

 とてもとても(くる)しかった。


   §


(さき)ほどは大変失礼致(たいへんしつれいいた)しました。おれっち……(わたし)がフォチャカの(ちち)、ミギアーフ・モソモソでっす。どうぞし・く・よ・ろぉーっ♪」

 (しり)を向けたミギアーフ氏が、踏ん反りかえり――ガァァン!

 地面(じめん)頭突き(・・・)を、食らわせた。


 ビギバキ――石畳(いしだたみ)割れる(・・・)

 モッサモサになった(かみ)をひっつめるのにかぶった、あの丸帽子(まるぼうし)(かぶと)のように硬い(かた)らしい。


本当(ほんとう)に、うちの(ひと)がヴァカでごめんなさい。フォチャカの(はは)、クロウリンデ・モソモソに御座(ござ)います。イオノファラーさま♪」

 そう言って茅野姫(ほしがみ)の手を取る、フッカ(はは)


「うふふふ、(くる)しくありませんよ? プークス()

 茅野姫(ほしがみ)が、(めず)しく戸惑(とまど)ってるな。


 なんか、母親(ははおや)(ほう)(なに)か……有りそうな気配(けはい)が、しないことも無い。


 おれたちは、半壊(はんかい)した(いえ)(とお)された。

 ふぉん♪

『シガミー>迅雷、用心して邪魔するぞ』

 ふぉん♪

『>了解。轟雷、いつでも使用できます』


   §


「あのあの、馬車(ばしゃ)が、お(うち)(こわ)しちゃってごめんなさい! すぐに(なお)させますので――シガミー!」

 テーブルの(うえ)華麗(かれい)なターンを決め、おれを(ゆび)さす丸茸(まるきのこ)さま。


 (もと)から(くずれ)れかけてた、気もするが――

 (ほか)ならぬ、フッカの(いえ)だぜ。

 相当便利(そうとうべんり)頑丈(がんじょう)素敵(すてき)(いえ)に、建て直してやるのも――(やぶさ)かじゃねぇ。

 おにぎりと迅雷(ジンライ)を使えば、そうだな――


 ふぉん♪

『おにぎり>手伝うもの』

 ふぉん♪

『>調度品を最低限にし、今の家を修復するだけなら、5分と掛かりません』


「(ウケケッ、それっ、お素敵(すてき)じゃぁないのよさぁ())」

 天井(てんじょう)一部(いちぶ)大穴(おおあな)が空いた……応接室(おうせつしつ)らしき部屋(へや)を見わたす、丸茸(まるきのこ)


「あら、かわいらしい(きのこ)ですこと、今晩(こんばん)のスープに入れようかしら?」

 フッカ(はは)丸茸(いおのはら)を、むんずとつかんで(かご)に入れた。


「そいつぁー、待ってくれねぇかぁ! そんな丸茸(まるきのこ)みたいな(なり)をしちゃいるが、そいつさまは正真正銘美しょうしんしょうめいび女神(めがみ)五百乃大角(いおのはら)さまだからよ」

 よっぽど敬虔(けいけん)なイオノフ教徒(きょうと)でもなければ、おいそれとは(しん)じられんだろうが――

 立場上(たちばじょう)一応言(いちおうい)っておく。


 ヴォォォォゥン♪

 飛んでった迅雷(ジンライ)から、空飛(そらと)丸い球(・・・)がポトリと落ち――

 『(>△<)(カシャ♪)』『(>△<)(ひゃああ!)

 (かご)から飛び出してくる――(BOT)女神御神体(めがみごしんたい)


「クスクスクス、アナタは面白いことを(・・・・・・)(おっしゃ)られるのね?」

 がしがしり。浮かぶ(たま)と、それに乗った丸茸(まるきのこ)さまが――

 (ふたた)び、むんずと(わし)づかみにされ、(かご)へ入れられた。


「……おい、フッカ?」

 おれは出して(すわ)った長椅子(ながいす)の、(となり)(こえ)を掛ける。

「な、なぁに? シガミーちゃん?」

 (しず)かに(いき)を呑むフッカ(じょう)


「お(まえ)さんの母上(ははうえ)は、とても元気(げんき)でおれぁ大好(だいす)きだが――」

 母上殿(ははうえどの)は――「うふふふ♪」と(かご)を揺らしている。

「だ、大好(だいすき)きだが、なぁに?」

 フッカの目が、かすかに(およ)いだ。


「なんか(ざつ)じゃね?」

 分類的には(わけるなら)、木さじ食堂(しょくどう)女将(おかみ)さんや、ウチの丸茸(メガミ)(おな)(わく)だぜ。


 ふぉん♪

『>そうですね。類推するに動作や行動パターンに設けられた閾値が、際限なく〝低い〟のだと思われます』

 わからん、けど〝()〟ってことであってるか?


「もーっ、お(かあ)さんわっ! いっつも大雑把(おおざっぱ)なんだからっ! よーっく見てっ! そんな、〝(うた)って(おど)れる(きのこ)〟なんて居ないでしょっ!?」

 〝()〟ってことで良いらしいぜ。

 あと歌って踊れる茸(・・・・・・・)は、籠の中(そこ)に居るだろ。


「〽ツックッダーン、佃煮佃煮(つくだにつくだに)♪ お(あじ)ぃーが、染みてるてるるぅー♪」

 (かご)から聞こえてきたのは、素っ頓狂(とんきょう)歌声(うたごえ)

 なんだぜその、(きのこ)ソングわ。


 ふぉん♪

『>楽曲生成ライブラリ稼働率0%です』

 つまり?

 ふぉん♪

『>鼻歌です。内容から察するに、先ほどイオノファラーが提示した手書きのレシピを表現していると思われ』


「〽グッラッターン、グラタングラタン♪ ベーコンと、チーズがのってる♪」

 (かご)をのぞき込む、フッカ(はは)


「あらやーだ、この(きのこ)っ!?」

 大慌(おおあわ)てで取り出され、テーブルの(うえ)(ころ)がされた――美の女神御神体(めがみごしんたい)と浮かぶ(たま)


「ウケッ? ダンスはちょっと自信(じしん)ないわぁ――――()

 戸惑(とまど)いつつも大慌(おおあわ)てで、期待(きたい)(こた)えるべく何かの(・・・)準備(じゅんび)(はじ)める丸茸(まるきのこ)


「ふぅ。ところで御主人(ごしゅじん)。あの瓦礫(がれき)……じゃ無かった、玄関先(げんかんさき)看板(かんばん)(なん)でしょうか?」

 丸茸(まるきのこ)準備体操(じゅんびたいそう)から目をそらした、顧問秘書(こもんひしょ)(たず)ねた。


   §


 おれたちは玄関(げんかん)(おもむ)き、(あば)ら屋を振り(かえ)る。


『旧カピパラポテパケギウス領ザンクネリキキマギバネロベネグラムタタラディッシュ新町役場』

 一枚目(いちまいめ)は、町役場(まちやくば)看板(かんばん)


『旧カピパラポテパ領ザキキギバベグラムタタラデッシ新町ギルド支部出張所』

 二枚目(にまいめ)は、ギルド支部出張所(しぶしゅっちょうじょ)看板(かんばん)


『旧パラベラム冒険者専用訓練ダンジョンへようこそ』

 三枚目(さんまいめ)は、よくわからんがダンジョンの看板(かんばん)らしかった。


 トリュフ(はし)で見た、やたらと(なが)町名(ちょうめい)

 それと(おな)じ、看板(かんばん)たち。

 最後(さいご)(やつ)(なが)すぎて面倒(めんどう)になったのか――かなり(みじか)くされてた。


「ふぉっふぉっふぉっ♪ おれっちは、当町(とうちょう)(とう)ダンジョンの管理(かんり)(まか)されております。それが、な・に・か?」

 カールした(ひげ)をギュッと伸ばして放す――ヒビビョビョビビビョン♪

 スキルを使(つか)ってなくても、あんまり変わらんな。


「もっとも住人(じゅうにん)(わたくし)どもと使用人数名(しようにんすうめい)とー! 年間契約(ねんかんけいやく)してくださっている冒険者(ぼうけんしゃ)(かた)のー! (けい)(めい)ほどしかおりませんが――!?」

 母上殿(ははうえどの)のそんな大声(おおこえ)

 (とびら)(はず)れちまってるから、(こえ)がよく(とお)る。


「やーめーてー!」

 フッカのそんな(こえ)に、室内(なか)(もど)ると――


「この(きのこ)鳴き声(・・・)がうるさいですわね――絞めておきましょうか♪」

 持ち上げられた魔法杖(ハリセン)が、いまにも振り下ろされようとしていた。


「「やばいっ、超面白(ちょうおもしろ)いっ♪」」

興味深(キョウミブカ)い」「面白(おもしろ)な?」

「にゃぎゃー()」「ひひぃん?」

 みんな(たの)しそうだし、おれも丸茸(あのやろう)退治される所(・・・・・・)是非見(ぜひみ)たい。

 強化服(シシガニャン)十連(じゅうれん)続平手打(ぞくひらてう)ちに匹敵(ひってき)する高威力(こうATK)がなければ、女神御神体(いおのはら)(こわ)れない。

 当然(とうぜん)放置(ほうち)だぜ♪


 スッパァァァァァァァァァンッ♪

 すっげぇー(おと)

 ゴチン、ひっくり返る丸茸――じゃねぇ!?

 ありゃ浮かぶ(プロジェクション)(BOT)だぜ?


 てちり――。

 姿(すがた)を消した根菜(こんさい)が、(つくえ)(ふち)姿(すがた)をあらわした。

「〽ツックッダーン、グッラッターン♪ ベッエコーン、(つっくだ)()()ィ――イェアハァーッ()

 くるくるくるくるとあまり上手(じょうず)ではない足取(あしど)りで、(まわ)りだす佃煮(つくだ)……じゃねぇ、丸茸(まるきのこ)


 ふぉん♪

『>丸茸でもありません。美の女神イオノファラーです』


 スッパァァァァァァァァァンッ♪

 すっげぇー(おと)

 ゴチン、今度(こんど)こそ、ひっくり(かえ)る丸茸――じゃねぇ!?

 ありゃ魔法具箱(まほうぐばこ)か?

 LV100のおれでも、使(つか)えねぇガラクタの。


「〽お(あじ)ぃーが、のってる♪ チーズとぉグラッターァンッ()

 スッパァァァァァァァァァンッ♪

 うるせぇ。あんまり挑発(ちょうはつ)すんな!


 ゴチン、ガドン、ゴロロ、ガララッ♪

 あと、これ以上(いじょう)ガラクタを、ばら撒くんじゃねぇやい!

 (つくえ)(うえ)は、すぐに混雑(こんざつ)し――


「〽ごっはぁーんにもーぉ、合ーぅょねぇ――グラッタァーン、ごっはっ――――――――――――ぴゃぎっ!?()

 スッ――――パァァァァァァァァァンッ♪

 だから調子(ちょうし)に乗るなって言ったんだ。


 ひょいひょい、ぽいぽぽぽい――ガチャゴチャガッチャ!

 〝使(つか)(みち)のない魔法具箱(まほうぐばこ)〟や、(いま)まで見たことのない〝(てつ)野菜(やさい)のような(もの)〟。

 〝無事退治(ぶじたいじ)された丸茸(まるきのこ)〟や〝(たす)けに(はい)ろうとした空飛(そらと)(ぼう)〟までもが――

 次々(つぎつぎ)(かご)に入れられていく。


(おく)さま。本日(ほんじつ)(ばん)さんの食材(しょくざい)には、(なに)使(つか)いましょうか?」

 そう言って(かお)をだした年配(ねんぱい)使用人(しようにん)に、満杯(まんぱい)になった(かご)手渡(てわた)された。

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