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508/743

508:ギ術開発部研究所、魔導騎士団集結

 (かお)に巻かれた、迅雷(ジンライ)式隠(しきかく)蓑製(みのせい)頭巾(ずきん)

 まるで(くび)から(うえ)を、大怪我(おおけが)したようにも見える。

 そんな連中(れんちゅう)でひしめき合う大講堂(だいこうどう)は、かなり面妖(めんよう)だった。


 わいわわわいわわ、がやがやややがやや。

 騒々(そうぞう)しさも、ややくぐもって聞こえる。


「では我々(われわれ)は、ネネルド(むら)(ひと)たちへの綿密(めんみつ)な聞き込みをしつつ、もう一度(いちど)大陸間弾道(たいりくかんだんどう)果実(かじつ)発射地点(はっしゃちてん)を割り出そうと(おも)いますっ!」

 たまたま(ちか)くに居た学者(がくしゃ)が、ネネルド村村長(むらそんちょう)(つか)まえて――

 そんなことを言った。

 (こえ)を張ればこうして、普通(ふつう)(こえ)(とお)るんだが――ちぃとうるせぇ!


 その学者(がくしゃ)は、しゃらあしゃらした(ふく)を着ていた。

 (あたま)両端(りょうはし)小さな切り株みたいな(・・・・・・・・・・)もの(たぶん巻き(づの))も、張り出ている。

 頭巾越(ずきんご)しでも、それが(だれ)かわかった。

 モゼル……頭突き女(・・・・)だ。


 自然(しぜん)とおれたちは、距離(きょり)を取る。

 頭突き(とくいわざ)を食らわされては、大変(たいへん)だからな。


 白頭巾(しろずきん)簡易的(かんいてき)ながらも神々(かみがみ)叡知(えいち)が折り込まれた、立派(りっぱ)猪蟹屋装備(ししがにやそうび)だ。

 猪蟹屋(おれたち)使(つか)う、目のまえの画面(HUD)こそ見られないが――防御力(DEF)(すぐ)れている。

 〝厚布(あつぬの)(かお)に巻いても、布の向こう(・・・・・)が見える〟ことに(おどろ)いた学者方(がくしゃかた)何人(なんにん)かが、「研究用(けんきゅうよう)保存用(ほぞんよう)布教用(ふきょうよう)に」と何枚(なんまい)も買い込んでいて――

「あらあああら、まあまあああ()

 (こえ)をくぐもらせつつ大喜(おおよろこび)びの、星神茅野姫(ほしがみかやのひめ)


 到底(とうてい)串揚げ三本(3キーヌ)程度(ていど)で(日本円(かみがみのかね)(やく)450(えん))で手に入るような代物(しろもの)では無かったが――

 無人工房(むじんこうぼう)とおにぎりと(てん)ぷら(ごう)、そしておれと迅雷(ジンライ)尽力(じんりょく)で――

 それこそ、売るほどの在庫(ざいこ)がある。


「すこひ手狭(てぜま)ですわへ?」

 姫さん(リカルル)(こえ)(とく)()もってるのは、頭巾(ずきん)(うえ)から(きつね)(めん)を付けたからだ。


「では主力(しゅりょく)となる(きみ)たちに、魔導騎士団詰(まどうきしだんつ)(しょ)まで、ご足労願(そくろうねが)いたいのニ゛ャァ♪」

 (ねこ)獣人(じゅうじん)である顧問氏(ミャッド)は、頭巾(ずきん)頭上(ずじょう)(みみ)(ふさ)がれてた。

「それ、ちゃんと聞こえるのか?」


 まえに(つく)った〝ケモノ耳用(みみよう)鉢巻き(バンダナ)〟を、出してやろうかと(おも)ったら。

「ちゃんと聞こえるニ゛ャァ♪ 猪蟹屋(ししがにや)製品(せいひん)には、いちいち(おどろ)かされるニ゛ャァ~?」

 化け(ねこ)みたいなダミ(ごえ)

 くぐもる(こえ)に、技師(ぎし)としての(うら)めしさが(にじ)んでいる。


 学者方(がくしゃかた)とネネルド村村民(むらそんみん)は、大講堂(だいこうどう)(のこ)り――

 おれたちは央都(おうと)状況(じょうきょう)(さぐ)るべく、顧問氏(ミャッド)に連れられ魔導騎士団本部(まどうきしだんほんぶ)へ向かうことになった。


「にゃみゃぎゃぁー♪」

「ひっひひひぃぃぃん――?」

「まて、おまえらが巻いてどうする?」

 そんな夏毛(なつげ)(ざつ)図体(ずうたい)をしたヤツが、(なに)を巻いたところで――

 猪蟹屋(ししがにや)関係者(かんけいしゃ)だって、バレないわけがねぇだろが。


仲間(なかま)はずれなんて、かわいそーでしょ!」

 (こえ)から(さっ)するにレイダだ。

「そーだよね♪」

 (さっ)するにビビビー。

「ふむ、(ワレ)は気に入ったぞ。この(ヌノ)肌触(ハダザワ)りがとても良い♪」

 ゲイルまで白頭巾(しろあたま)に。


「あーもー、どうにでもしてくれ」

 そもそもが、一番(いちばん)のお偉方(えらがた)率先(そっせん)して(あば)れてやがるんだ。

 (すこ)しくらい目立(めだ)たねぇよう気をつけたところで、(たい)した意味(いみ)もねぇやな。


   §


魔導騎士団(まどうきしだん)全部隊(ぜんぶたい)(うご)かす――わけにもいかないからニャァ♪」

 魔導騎士団詰(まどうきしだんつ)(しょ)へ、おもむいたおれたち。


 ズザムズザム、ズザザザザザザザムザム!

 ドタンバゴン、ボゴロロロロロォンロン!

 集結(しゅうけつ)する、魔導騎士団(まどうきしだん)各部隊の隊長クラス(・・・・・・・・・)

 総勢(そうぜい)20名程度(めいていど)連中(れんちゅう)――


「ふははぁっ――――良く来たなっ! (われ)こそは魔導騎士団(まどうきしだん)第一師団(だいいちしだん)団長(だんちょう)魔術師(まじゅつし)ゲラァルゴ・ケッピン!」

 その(おそ)ろしく(なが)刀身(とうしん)まで真っ(しろ)な、(けん)のような長板(ながいた)

 魔石(ませき)が埋め込まれているところを見るに、たぶん魔法杖(まほうつえ)だ。

 それが抜き放たれ、「ぬぅうぅぅぅぉっっっりゃぁぁぁぁぁ――――!」


 ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリリィィィ――――ヴァッキューン!

 (かがや)白剣(はっけん)(てん)(のぼ)(いかづち)

 ありゃあ――白いの(リオ)が良くやる、生活魔法の神髄(・・・・・・・)に似てやがる。


 ゴッガンッ!

 どっと(つか)れた様子(ようす)白剣(はっけん)を地に突きたてる、第一師団長(だいいちしだんちょう)ケッピンとやら。

 黒騎士(エクレア)王子殿下(サウルース)と同じく、(かお)が良い若者(わかもの)だ。

 中身(なかみ)兵六玉(ひょうろくだま)……ニゲル青年(せいねん)(ちか)い気がするが。


 ガコォン♪

 それは長大(ちょうだい)な、ねじれ(えだ)

(おな)じく第二師団(だいにしだん)団長(だんちょう)のぉー、魔術師(まじゅつし)ニューヴ……ケッピン!」

 ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリリィィィ――――ヴァッキューン!

 (かか)げられた魔法杖(つえ)先端(さき)から、(てん)(のぼ)(いかづち)

 やたらと(せん)(ほそ)い、1年A組(おれたち)担任教師(たんにん)みたいな体格(たいかく)


「あっ、バカてめぇ! おれの名乗(なの)りに繋げやがって(・・・・・・)!」

 憤慨(ふんがい)するケッピン。

「えぇー、良いじゃんか。名乗り(・・・)のたびに、10パケタも使(つか)ってたら魔導騎士団(まどうきしだん)破産(はさん)しちゃうしさ」

 へらへらと口元(くちもと)をほころばせる(かれ)は、見た目も中身(なかみ)もニゲル寄りだ。


 そのあとキッチリ20名分(めいぶん)の〝名乗り(・・・)〟とやらを、聞かされおわった(ころ)には――

 頭上(ずじょう)青空(あおぞら)(ひら)けていた。


「へぇー、さっきまで(くも)(ぞら)だったのになぁ」

 〝白いの(リオ)〟……じゃなかった〝白いの(ルガ)〟の生活魔法の神髄(かみなり)も、コイツらの高等魔術(こうとうまじゅつ)らしい(いかづち)も――

 そう(ちが)いは無いように見えた。


「やるもんだぜ!」

 とは、鉄塊(てっかい)背負(せお)男性(だんせい)

「さすがは、魔導騎士団(まどうきしだん)団長(だんちょう)さまたちだねぇ?」

 とは、巨大(きょだい)木さじ(・・・)背負(せお)女性(じょせい)


 (なが)名乗り(・・・)(あいだ)に、ガムランの連中(れんちゅう)合流(ごうりゅう)した。

 姫さん(リカルル)青年(ニゲル)にくっ付いてきたのは、たぶん――

 女将(おかみ)さんと、ギュギュギュギュギュギュギュゥィィィィンッ!

 うるせぇ、ギルド長(レムゾー)か。


 もう一人(ひとり)(へん)に、ひょろ(なが)いやつは……白頭巾(ずきん)のせいで(だれ)だかわからんが。

 ガムランの冒険者(ぼうけんしゃ)が来てくれたなら、心強(こころづよ)いぜ。

 鬼娘(オルコトリア)が来ていないところを見ると、留守番(るすばん)を押しつけられたのかもしれないな。


「けど(なんで)全員(ぜんいん)が、ケッピンさんなの?」

 子供(れいだ)が、また余計(よけい)なことを。

 (まつ)(ごと)騎士団(きしだん)結束(けっそく)(かか)わる、重大な理由(おもいわけ)があったらどうするんだ!


(ささ)(けん)!」

 赤いの(リカルル)細身(ほそみ)豪奢(ごうしゃ)(けん)、『まがい物の聖剣【匠スペシャル】』を抜き(はな)ち、(そら)へと(かか)げた。

(ささ)(つえ)!」

 つづいて白いの(ルガレイニア)(ちい)さな魔法杖(つえ)を取りだし、(おな)じように(そら)へと向ける。


 ――――――――ガラララララララッドッシャァァァァァァン!!!

 (てん)へ向むかって、雷鳴(らいめい)(とどろ)いた。


 直後(ちょくご)、あまりの(ひかり)(つよ)さに――あたりが(くら)(かげ)をなした。

 ドッガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッンッ――――――――!!!!!!!!

 (てん)へ落ち、さらに折り(かえ)し落ちる雷光(らいこう)

 その場に居た師団長全員(しだんちょうぜんいん)を、ばったばたと横倒(よこだお)しにした。


   §


「「「「「「「「「「「「「「「「「せっ、聖剣切(せいけんぎ)りっ!? な、なんでこんな(ところ)にっ!? にぃげぇろぉおぉおぉおぉーうぅう!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」

 折り返しの(・・・・・)落雷(かみなり)を食らって、(たお)れていた師団長(しだんちょう)たちが――

 気づくなり脱兎(だっと)(ごと)く、(はじ)外聞(がいぶん)も無く逃げだした。


 (かろ)うじて(のこ)ったのは、たったの四名(よんめい)

 ご老体(ろうたい)(わらし)と、(ざつ)(かたち)鉄兜(かぶと)(あたま)に載せた――

 (かお)(なが)い、毛むくじゃら(・・・・・・)だった。

 こいつは、(なん)獣人(じゅうじん)なんだろう。


 そして最後(さいご)一人(ひとり)直撃(ちょくげき)を食らって(たお)れたままの、なんだっけ?


 ふぉん♪

『人物DB/ゲラァルゴ・ケッピン

      ラスクトール自治領王立魔導騎士団第一師団長』

 そうだぜ、欠品(ケッピン)だぜ。

 はぁ……もし(てき)になるとしても、コイツらが相手(あいて)ってことかー。


 ほとんど逃げちまったところを見ると、まず猪蟹屋(おれたち)やガムラン(ちょう)(てき)じゃねぇ。

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