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504:王城地下三階、容疑者はリオレイニア?

2023/11/27 10:41 魔導騎士団の描写を追加。

「うぉっほん♪ 規則(きそく)ですので正直(しょうじき)にーぃ、お(こた)(くだ)され。ええと……リオレ、イニア(じょう)?」

 やや横柄(おうへい)態度(たいど)男性(だんせい)が、訥々(とつとつ)言葉(ことば)(はっ)する。


「はい、もちろんです」

 背筋(せすじ)を伸ばし、はきはきと(こた)える(あや)しげなメイド。


 やや(おお)きめなガラス(まど)の向こうには男女(だんじょ)(めい)ずつ、フル装備(そうび)衛兵(えいへい)待機(たいき)している。


 ここは(・・・)央都(おうと)大女神像(だいめがみぞう)がある、王城(おうじょう)一画(いっかく)

 儀式(ぎしき)にも使用(しよう)される、地下祭儀室(ちかさいぎしつ)とやらだが――

 とても殺風景(さっぷうけい)で、おおよそ賓客(ひんきゃく)(とお)されるような場所(ばしょ)ではない。


「えっへぇん♪ アナタはぁ、コントゥル辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)ルリーロさまが飛翔中(ひしょうちゅう)空路(くうろ)へぇー、巨大焼夷弾(きょだいしょういだん)がぁー撃ちぃ込まぁれた(さい)、どちらにぃ、()られましたかなぁ?」

 ふっへへぇん♪

 やはり気のせいではない。相当(そうとう)横柄(おうへい)な、その態度(たいど)


 ヴォヴォゥン♪

 迅雷(ジンライ)(おく)ってくる、向こうの(・・・・)映像(けしき)が揺らめく。

 万能(ばんのう)空飛(そらと)(ぼう)今使(いまつか)わないで、いつ使(つか)うんだってことで――

 地下(むこう)様子(ようす)(さぐ)らせているのだ。


   §


「おい、あの衛兵(おっさん)わぁ、彼女(リオ)(だれ)だかわかってねぇんじゃぁねぇーのかぁ!?」

 コントゥル辺境伯(へんきょうはく)は、央都(おうと)最高権力者さいこうけんりょくしゃである王族(・・)(くら)べた場合(ばあい)

 さほどの優劣(ゆうれつ)は無い、と聞いている。

 ならば、コントゥル(その)(いえ)長年仕(ながねんつか)えてきた貴族家(きぞくけ)である、サキラテ家令嬢(・・・・・・・)に――

 あんな態度(たいど)一役人(いちやくにん)が、そうそう取れるものではないはずだ。


「お、お恥ずかしー(かぎ)りですららぁぁん!」

 大講堂(・・・)長机(ながつくえ)に突っ伏し、平伏(へいふく)する第一王女(だいいちおうじょ)殿下(でんか)

 いや、そもそも王様(おうさま)女王(じょうおう)さまに次いで、お(えら)いはずの王女さま(ラプトルさま)が――

「どぅしてぇ、這いつくばってるっんだぜぇ?」

 王女(おうじょ)さま直々(じきじき)に、この事態(・・・・)解決し(おさめ)てくれりゃぁすむだろうがっ!


 おれたちが居るのは、魔導騎士団(まどうきしだん)宿泊施設(ちいさなしろ)だ。

 一番大(いちばんおお)きな大講堂(だいこうどう)に、ほぼ全員(ぜんいん)が詰めていた。


「じ、(じつ)わぁー王家直轄(おうけちょっかつ)の〝召喚(しょうかん)(とう)〟が壊滅(かいめつ)して以来(いらい)、わが央都(おうと)官僚(かんりょう)(なか)に〝王政不要論(おうせいふようろん)〟を提唱(ていしょう)する(もの)たちが台頭(たいとう)しましてぇ――」

 よりにも寄って、(まつ)(ごと)かっ!

 そうなるとリオは、反対勢力(てき)手中(しゅちゅう)に落ちてると(かんが)えた方が良いか?


 「安全(あんぜん)のため」とネネルド(むら)へなだれ込んできた、見覚えの無い護衛(・・・・・・・・)たち。

 アイツらに(まか)せて置いたら、まさかのこんな事態(じたい)

 装備(そうび)からすると管轄(かんかつ)は、魔導騎士団(まどうきしだん)だろう。

 じろり(・・・)と、(にら)みつけてやったら――

 顧問氏(ミャッド)秘書(マルチヴィル)も、王女(ラプトル)(なら)んで這いつくばった。


 やや涙目(なみだめ)王女(かのじょ)を、まるで(かば)うように――「ひっひひひぃぃぃぃぃんっ――!?」

 どがぁん――王女(おうじょ)(すわ)長机(ながつくえ)体当(たいあ)たりし、身を乗り上げ「ひひひひひぃぃぃぃんっ!?」


「ぎゃっ――!」

 黄緑色(きみどりいろ)のでかい子馬(こうま)に――

「ギャミャァ――!」

 翻弄(ほんろう)される顧問氏(こもんし)や――

「キャアァァ――!」

 秘書(ひしょ)たち。


「ららぁぁん――!?」

「ふっるぅん――!?」

 そして王族(おうぞく)たちも、スパコーンと(はじ)き飛ばされた。

 あーぁ、あれ大丈夫(だいじょうぶ)か?


 ふぉん♪

『>問題は無いと思われ。彼の馬は他ならぬ、ラプトル第一王女が作成したゴーレムですので』

 うん、責任(せきにん)所在(しょざい)明確(めいかく)だな。

 放っとこうぜ、(いま)はソレどころじゃねぇ。


 こうして迅雷(ジンライ)はリオレイニアの(ちか)く(おそらく天井(てんじょう))に張りついていながら、こっちの様子(ようす)を知ることも出来(でき)る。

 万能(ばんのう)便利棒(べんりぼう)は、その名の(とお)りに便利(べんり)だった。

 なんせ高等魔術(こうとうまじゅつ)特殊(とくしゅ)魔法具(まほうぐ)使(つか)って(しの)び込んだら、向こうに居る魔術師(まじゅつし)一発(いっぱつ)でバレるらしいからな。


「こらっ! (いま)(あそ)んでる場合(ばあい)じゃないのよ!」

 そう気を吐くのは侍女(じじょ)リオレイニアの部下(ぶか)少女(しょうじょ)メイド・タターだ。

 普段(ふだん)子馬(こうま)尻尾(しっぽ)にカフスを引っかけられては、そのへんを引き(まわ)されている彼女(タター)だったが。


「リオレイニア元侍女長(もとじじょちょう)が、大変(たいへん)なことになっているんだからっ!」

 給仕(きゅうじ)家事(かじ)の師でもある彼女(リオ)一大事(いちだいじ)に、発憤(はっぷん)したのか――

「テンプーラゴウ、お(すわ)りぃぃぃぃぃぃぃ――っ!」

 天風羅睺(てんぷうらごう)! (あま)かける(かぜ)(ごと)く、日月(ひがつ)を喰らう天馬(てんま)

 そんな名前なまえだが――


 ふぉん♪

『人物DB/天ぷら号

      中央都市ラスクトール自治領第一王女

      ラプトル・ラスクトールの手による、

      自律型四足歩行駄馬』

 本当(ほんとう)は、猪蟹屋謹製(ししがにやきんせい)自律型(じりつがた)の〝おにぎり〟にちなんで名付(なづ)けられた、食い物の名前(・・・・・・)だったりする。


 天ぷら号(テンプーラゴウ)少女(しょうじょ)メイドに、引っかかった尻尾(しっぽ)吊り上げ(・・・・)られ――どずずぅん!

 軽々(かるがる)と召し捕られた。


 ふぉん♪

『シガミー>なんだ今の?』

 (てん)ぷら(ごう)は、王女殿下(ラプトル)魔導工学(からくり)がみっしりと詰まってるから、ソコソコ(おも)くて子供(タター)(ちから)じゃとても持ち上がらねぇはず。


 ふぉん♪

『イオノ>あー、タターちゃんを始め、ココに居るメイドちゃんたちにわぁ、〝猪蟹屋のメイド服〟に着替えてもらったからねぇん♪』

 なんだと!?

 ありゃ試運転(テスト)……試着(フィッtィング)がてらってんで、リオにしか(わた)してなかったんだぞ!?


「にゃっみゃぎゃにゃにゃぁー()

 (あそ)んでいるとでも(おも)ったのか――手近(てぢか)王子殿下サウルースをひょいと、つまみ上げる猫の魔物(おにぎり)

 おにぎりまで一緒(いっしょ)になって、王女(ラプトル)のまわりを(ころ)げまわりはじめた。


「らっらららぁん!?」

「ふっふふるるぅん!?」

 翻弄(ほんろう)される、王家(おうけ)(つら)なる(もの)たち。


馬鹿野郎(ばかやろう)(あぶ)ねぇだろうがっ!」

 あーぁ、あれは大丈夫(だいじょうぶ)じゃねぇやつだ!


 ふぉん♪

『人物DB/試作個体名おにぎり一号

      極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型

      ケットーシィなる猫の魔物に酷似』


 ふぉん♪

『>はい。猪蟹屋謹製の軽車両扱い。つまり猪蟹屋備品ですので、シガミーもしくはイオノファラーに』

 うん、責任(せきにん)所在(しょざい)明確(めいかく)だな。

 放っとくわけにはいかんな。(いま)はソレどころじゃねぇってのに!

 猫の魔物(おにぎり)から、王子殿下(おうじでんか)を引っぺがしてると――


「――猪蟹屋(ししがにや)……央都猪蟹屋(おうとししがにや)地下設備(ちかせつび)である、対魔王結界(たいまおうけっかい)(なか)に居ました――」

 容疑者(ようぎしゃ)リオレイニアの言葉(ことば)に、大講堂(だいこうどう)に居る全員(ぜんいん)がピタリと止まり――固唾(かたず)を呑む。


「――た、対魔王結界(たいまおうけっかい)!? それはぁ、自白(・・)(かんが)えてよろしいか!?――」

 大講堂(だいこうどう)黒板(こくばん)に張りつく、映像(えいぞう)(なか)

 馬鹿(ばか)を言い出す、横柄(おうへい)役人(やくにん)


「ああもう、この守護所勤(しゅごしょづと)めの、この衛兵(えいへい)め――!!」

 王子殿下(サウルース)(ゆか)に降ろし、おれは憤慨(ふんがい)した。


「ちょっと、シガミー(だま)ってて、向こうの様子(ようす)が聞こえないでしょ!」

 ばかやろう、もとはといやぁ、お前(レイダ)余計(よけい)なときに余計(よけい)なことを言いやがるからこんなややこしいこと(・・・・・・・・・・)になっちまったんじゃんか!


「あらら、これは――ものすごく(こま)ったことになるよ?」

 ビビビーの(かお)が真っ(しろ)だぜ。

 レーニアおばさんが、心配(しんぱい)なんだろうが。

「なんだぜ? (こま)ったことってのわぁ?」

 これ以上(いじょう)、どう(こま)るって言うんだぜ?


「だって、あのリオレイニアさん(・・・・・・・・・・)が、ルリーロさまを攻撃(こうげき)した容疑(つみ)で、お(しろ)軟禁(なんきん)されているんだよ?」

 ますます、顔面(がんめん)蒼白(そうはく)に。


「おう、大変(たいへん)だが伯爵(はくしゃく)さまも奥方(おくがた)さまも、「一時的(いっとき)措置(もん)で、すぐに釈放(しゃくほう)される」って言ってたじゃんか?」

 (たし)かにリオがかわいそうだが、どういう風に話がこじれようと――

 コントゥル辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)が、そう請け負った以上(いじょう)本気(ほんき)心配(しんぱい)する必要(いみ)は無い。

 あの小役人(おっさん)のせいで、長引(ながび)くことくらいはあるかもしれんが。


 (もど)ってきたら(なに)かうまい(もん)でも(つく)って、食わせてやろう。


「ふぅ――ぅむむむむぅ。間に合えば……良いんだけど?」

 ビビビーの心配(しんぱい)は、それでも止まらない。

「間に合えばだぁ? (なん)だかわからんが良く聞け。そもそもの(はなし)、リオは自分(じぶん)(つか)える奥方(おくがた)さまを(ねら)うような(やつ)には、見えんだろうが――」


 ヴュザザッ――質素(しっそ)(つくえ)

 両手(りょうて)(かわ)ベルトで(しば)られ、(つくえ)(つな)がれていた。

 その(かお)は、ルガ(ばち)(かお)瓜二(うりふた)つ。

 遠目(とおめ)で見ると、まるで魔神(まじん)のようだっだ。


「みえる――な」

 ルガ蜂の顔を持つ彼女(・・・・・・・・・・)なら、やりかねないと(おも)えなくもない。

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