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501/743

501:ネネルド村奇譚、守銭奴の矜持と人物DBについて

「シガミーさん。おにぎりさんが嘔吐(えず)いていますが?」

 茅野姫(ほしがみ)に手を引かれた、強化服一号(おにぎり)が――


「むにゃ、ごにゃ、みゃぎゃぁー()

 すぽん――ごとん、ごろろろん♪

 (くち)から(はこ)をテーブルの(うえ)に、吐き出した。


「にゃみゃーぁ、ぎゃぎやーぁ()

 (むね)を押さえ、(いき)をととのえる猫の魔物(おにぎり)

 (ひと)真似をする(・・・・・)のは、かまわんけど――

 おまえ呼吸(いき)する必要(ひつよう)なんて、ないだろうが。


「ごめんなさいね、おにぎり」

 黒頭巾(リオレイニア)は、猫の魔物(おにぎり)にも(やさ)しい。

 背中(せなか)を撫で、撫で(かえ)されている。


「あ、そうでしたわ、シガミーさん。(さき)ほどの虹色(にじいろ)魔石(ませき)無事手(ぶじて)に入れましたわ()

 さっき物議(ぶつぎ)(かも)していた、(おお)きな魔石(ませき)

 おにぎりが吐いた(はこ)(よこ)へ、ごとんと置かれたそれは――

 ギラギラと光彩(こうさい)(はな)つ、(まる)魔石(いし)


 ププークスクスと、それはそれは上機嫌(じょうきげん)様子(ようす)で――背後(はいご)を振りかえる星神(ほしがみ)

 その視線(しせん)(さき)では顧問氏(ミャッド)秘書(マルチヴィル)が、(うら)めしそうにこっちを見つめていた。

 (わる)いことをしたかもしれん。


「そりゃ、お手柄(てがら)だが結局(けっきょく)、いくらで買い取ったんだぜ?」

 この丸石(ませき)がどれほどの(もの)でも、女神像(めがみぞう)やおにぎりの代わりになる〝酢蛸(SDK)〟で無いのなら――

 それほど必要(ひつよう)ではない。


「10キロの串揚(くしあ)げセット入り収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)、それを30(ぽん)交換(こうかん)をさせて(いただ)きましたわぁ、クスクスプークス()

 なるほど。

 いきなり代金分(だいきんぶん)の300キロの串揚(くしあ)げを(わた)しても、食べきれず(くさ)らせてしまうだろう。

 ということで、アレの出番(・・・・・)ってわけだ。


 そう猪蟹屋(ししがにや)と言えば、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)だ。

 串揚(くしあ)げ盛り合わせを入れた収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)と、交換(こうかん)したらしい。

 しかも、この(ところ)ずっと、無人工房(むじんこうぼう)でひたすら作り置き(・・・・)していたから――


 収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)原価(もとで)は、すでに無いような(もの)だ。

 この(こま)やかな物々交換(ぶつぶつこうかん)への采配(さいはい)星神(カヤノヒメ)小商い精神(・・・・・)を、さらに満たせただろう。


 ふぉん♪

『>概算で67パケタ相当。日本円で約100万円になります』

 (やす)くはねぇ……小商(こあきな)いとしての矜持(きょうじ)も、(まも)ってるようだ。


「それでわぁー、クースクス()

「みゃにゃんやー()

 またおにぎりの手を引き、屋台(やたい)(もど)っていく茅野姫(かやのひめ)


(ねん)のため、あとでミャッドの御機嫌伺(ごきげんうかが)いにいくぞ」

 (くわ)しい(はなし)を聞いて、星神(ほしがみ)さまが守銭奴(しゅせんど)なやり(くち)でも使(つか)ったようなら――

 おれが手ずから退治(たいじ)……もとい説教(せっきょう)をくれてやらんとな。


「そうしまシょう《・》」

 迅雷(ジンライ)(おお)きな魔石(ませき)仕舞(しま)い、(はこ)がテーブルに(のこ)された。


「その(はこ)っていうか、腕時計(うでどけい)はリオにやる。あとで使(つか)ってみてくれ」


   §


「まえ使(つか)ってた白い眼鏡(・・・・)は、使(つか)心地(ごこち)はどうだった?」

 聞いてみる。


「はい、あの眼鏡型(めがねがた)のものは目立たなくて(・・・・・・)、とても快適(かいてき)でしたよ」

 うん。〝簡易型魔眼殺(かんいがたまがんごろ)し〟は、問題(もんだい)なく使(つか)えていたようだ。

 そのまえに使(つか)ってた〝(しろ)(とり)仮面(かめん)〟は、さすがに目立(めだ)ってたからなぁ。


 ふぉふぉん♪

『>全部で216枚の積層構造からなる本式の、

  〝白狐の面〟の解析は、既に終了しています』

 なら〝簡易(かんい)〟じゃない〝魅了の神眼(まがん)殺し(・・)(つく)るか。


 絵で板(エディタ)を、もう一度立(いちどた)ち上げる。

「ちょっと(くら)いな――作業(さぎょう)をするのに、良い場所(ばしょ)はねぇか?」

 (あか)るすぎず(くら)すぎない場所(ばしょ)が、絵で板(エディタ)使(つか)うのにちょうど良い。

 リオレイニアの仮面(かめん)相当細(そうとうこま)かいから、よーく見えるところで作業(さぎょう)をしたい。


 おれは黒頭巾姿のメイド(リオレイニア)の手を引き、集会所(しゅうかいじょ)から連れ出した。

「ふぅ、本当(ほんとう)なら卵の件を明らかに(・・・・・・・・)しないと、いけないのに」

 そんなことを言われてもな。


 〝火龍(ゲイル)巨大卵(きょだいたまご)を、ぶち当てた犯人(・・・・・・・)〟。

 それを(さが)しに来たんだから、そりゃ(たし)かに大事(だいじ)だぜ。

 けど猪蟹屋(うち)一番人気(いちばんにんき)見てくれも(・・・・・)大事(だいじ)なんだよ。


「お、この(へん)が良さそうだぜ」

 桟橋近(さんばしちか)くまで来ちまったが――

「あら良い(かぜ)、うふふ♪」

 あぶねぇ、自然(しぜん)にそんな(やさ)しい(こえ)を出されたら――

 いくらおれが(おんな)(わらし)でも、(しん)(ぞう)がバクバクいうだろうが!


 よかったぜ。今彼女(いまリオ)はどこからどう見ても――()からとおい(ところ)に居る。

 迅雷(ジンライ)式隠(しきかく)(みの)は、その電磁気的特性(でんじきてきとくせい)とかなんとかいうこと以前(いぜん)に――

 見てくれ(・・・・)が、死んでる(・・・・)

 さっきまでかぶってた頭陀袋(ずだぶくろ)(くら)べたら、相当(そうとう)マシだがそれでもだ。


 彼女(リオ)美しさ(・・・)(もっ)てしても、ここまで残念(ざんねん)なことになる頭陀袋(ずだぶくろ)黒頭(くろずきん)巾は――

 装備品(そうびひん)として(かんが)えたら――もはや〝呪い(・・)〟の(いき)(たっ)している。


 ふぉん♪

『>まるでフォチャカの呪いのローブのようです』

 そうだな。


 ふぉん♪

『人物DB>フォチャカ・モソモソ

      炎系魔術を行使する冒険者』


迅雷(ジンライ)、この人物DB(じんぶつデータベース)ですが――」

 黒頭巾(くろずきん)裏側(・・)には(そと)景色(けしき)(かさ)ねて――

 おれたち五百乃大角(いおのはら)(ぜい)みてる(・・・)――

 文字(・・)()映像(・・)が、(うつ)し出せるようになっている。


 人物(じんぶつ)DB(なんたら)表示(ひょうじ)が、黒頭巾(リオレイニア)にも見えちまったらしい。

 見られて(こま)(もの)でもないから(かま)いやしないが――どうも気を抜いてたぜ。


 おれやニゲルが日の(もと)から〝死後(・・)召喚された(・・・・・)〟と言うことは、あまり気持ちの良い(はなし)では無いから、秘密(ひみつ)にしてる。

 そっちがバレねぇように、気をつけよう。


(なニ)問題(もんダい)がありまスか()

「フォチャカさんは(たし)か〝深遠(しんえん)(ささや)き〟という冒険者(ぼうけんしゃ)パーティーに、所属(しょぞく)していたと(おも)うのですが。それを併記(へいき)することは、可能(かのう)ですか?」

 よく(おぼ)えてやがるな。


「なルほど、冒険者(ぼうけンしゃ)パーティーなドの情報(じょウほう)開示(かいジ)されてイる場合(ばアい)ニは、羅列(らレつ)しタ(ほウ)便利(べンり)でス()

 くるんと、ひっくり返る迅雷(ジンライ)

 この飛ぶ(ぼう)に、上下(じょうげ)向き(・・)は無い。


 ふぉん♪

『人物DB>フォチャカ・モソモソ

      炎系魔術を行使する冒険者

      B級冒険者パーティー:深遠の囁き』

 黒頭巾(リオ)意見(いけん)が取り入れられ、人名表示(おぼえがき)がより便利(べんり)になった。

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