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5:輪廻転生、死因判明

「こうみえて、あたしもヒマじゃないのよーむしゃり……もぐもぐもぐもぐ」

 めしをがっつくのに、それだけいそがしけりゃあなあ。


「もぎゅり……なんかいった?」

 肉のかたまりを葉やさいで巻いて、蒸した料理。

 うまそうなそいつを、大きめに切り分ける自称女神。


「おれの心のこえが――」

 ――聞こえてるのか?


「あら見た目よりは、あたまの回転がはやいのかしら?」

 手を止めて、()(また)一本箸(いっぽんばし)を突きだす。


 行儀がわりいな、神さんってのは。みためはタダのわかい女だし。


「いますぐ姿を消して、この世界……つまりあなたに、二っ度っと関わらないことも出来るんでっすけどぉー?」

 グサグサ、グサリ!

 つけあわせの根菜(こんさい)をつぎつぎと、(はし)に刺していく。


「そりゃ、(こま)る――」

 ――まじで(・・・)わるかった。

 たのむから、くわしい話を聞かせてくれ。


 ここはどこで、おれはどうしてここに居る。

 そして、あんたはそれに、どうかかわってんだ?


「大したはなしじゃないわぁー……もぐもぐ……この酒瓶で、すっ転んだあなたは死んじゃったんだけどぉー……おっぼえてるーぅ?」

 まる机に置かれたのは〝香味庵(こうみあん)〟と書かれた黒磁器(くろじき)の壺。

 持ちひもに、おれがくくりつけた猪口(ちょく)がぶらさがってる。

 ――まちがいなく、さっき落として割ったやつだ。 


 神を名のる、神出鬼没(しんしゅつきぼつ)の女だ。それくらいの芸当(げいとう)もできんだろ。


「まるで、おぼえちゃいねえが……そういうこともありえるか」

 よくみりゃこの酒瓶(さかびん)がでかいんじゃなくて、おれがちぢんでただけだな。


達観(たっかん)してるわね――――ぐびぐびり、っぷはぁー! さすがくさっても(・・・・・)生臭坊主(なまぐさぼうず)――ケタケタケタ♪」

 とぽとぽとぽ――空いた樽杯(たるさかづき)並々(なみなみ)と注がれる、澄み(とうめいな)酒。


「おい、それくらいにしておけ」

 ……おれのぶんが無くなる。いそいで酒瓶(さかびん)をとりかえした。


「なによう、女神(あたし)はお酒飲んじゃいけないってゆーのっ!?」

 じとり……あー、目が()わって来やがった。

 こいつ、酒を飲みなれてねえな。


「けどそろそろ給仕(きゅうじ)に戻らねえと、女将(おかみ)の大さじがいつ飛んでくるかわかんねーだろ?」

「だいじょうぶよーん。女神である、あたしの食事はもっとも(とうと)いモノとして設計(せっけい)したから。……この世界を――――ゴクゴクゴクゴクッ!」

 ぷはぁ――――タァン!

 勢いよく叩きつけられる、木で出来た杯。


「でぇーい。なんか聞き捨てならねえことを言われた気もするが――――とどのつまりはどういうこった!? 俺になんかさせたくて地獄(ここ)に呼びつけたのか?」

 しかたなく、酒を注いでやる。


「ここは地獄じゃないし(・・・・・・・)要求(ようきゅう)も一切ないわぁーん」

「なん……だとう?」

「しいていうならぁー、定期連絡(ていきれんらく)名目(めいもく)でぇ、あたしにぃーおいしーいごぉはぁんーをー食べさせてほしーなーってくらい?」

 なんかおれのことぁ、〝うまい飯を食いにきたついで〟って聞こえた気がするんだが。


「んふふぅー♪ あら、おいしー! ごきゅごきゅごきゅ――ぱくぱくぱくぱく――もぎゅもぎゅもぎゅり!」

 (そこ)のぬけた(おけ)みたいに飲み食いしやがって。

 ……肉を野菜で巻いたのは、相当うまいらしいな。


 くぎゅるるるるる~♪

 って、なんであんたの腹の虫が鳴ってんだよ?


「しあわせー♪ これあとで女将(おかみ)さんにレシピもらっといてくれない?」

霊刺秘(れしひ)ぃ……なんだぁそいつぁ?」


「うん? もぐもぐ……ごきゅり。ふはぁー、やっぱり時代錯誤(じだいさくご)がはなはだしいわね――――じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?」

 神を名乗るもんに、まじまじと見つめられると、(はら)(そこ)見透(みす)かされてるようでうまくねえ……じっさいに心を読まれてるしな。


「……んーっと天正(てんしょう)生まれ? いつだっけ天正(てんしょう)って……」

 いつっちゃどーいうこった?

 ことしは元和(げんな)元年(がんねん)だろうが。


「じゃー、あなたにINT(インテリジェンス)タレットを付けてあげる♡」

(いん)(てり)(げん)(すだれ)だぁ?」

 ……どこのどいつでぇ、そいつは。


 女神の背中にいくつもくっついてた太鼓(たいこ)が、くるくるとひっくり返った。

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