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496:ネネルド村奇譚、奇祭タコゥパ開催のはこび

折角(せっかく)のかき入れ(どき)……もとい、たこ焼きパーティーなので、助け船を(・・・・)出して上げますね、うふふふ()

 計算魔法具(けいさんまほうぐ)を手にジリジリと、にじり寄られた。


   §


「こむぎこぅ……込む義故(ぎこ)ぅとは、なんぞやぁ?」

 わからん。


 どっさどさどさ、どっさどさ♪

 厨房(いたば)(すみ)に詰まれていく、布袋(ぬのぶくろ)

 (こめ)みてぇなもんってのわぁ、(そと)からでもわかるがぁ。


「みゃにゃぎゃにゃぁー()

 黄緑色(きみどりいろ)猫の魔物(シシガニャン)

 その背中(せなか)(はこ)(おな)じく黄緑色(きみどりいろ)で、夏毛(なつげ)(おお)われている。

 そこへ手を乗せ、おれよりもほんの(すこ)(たか)(はな)を――

 ぴくぴくと、ひくつかせる(かや)(ひめ)


 どっさどさどさ、どっさどさ♪

 茅の姫(こいつ)収納魔法(しゅうのうまほう)を、普段(ふだん)から使(つか)ってるが――

 迅雷(ジンライ)みたいに大容量(だいようりょう)で、便利(べんり)(やつ)は持っていない。


「にゃぎゃぅー()

 なのでその(へん)をうろつく、強化服一号(おにぎり)(つか)まえてきては――

 こうして便利(べんり)使(つか)ってる。


 どっさどさどさ、どっさどさ♪

 どっさどさどさ、どっさどさ♪


「おい、その(へん)にしとけ。(くず)れたら死ぬ、おれが」

 (おも)さも嵩張(かさば)具合(ぐあい)も、おれ二人分(2シガミー)くらい。

 それが何十袋(なんじゅっぷくろ)も、積み上がった。


 ふぉん♪

『ヒント>小麦粉/小麦を粉に挽いた物。特に段階的に粉砕することで、表皮を厳密に取り除いたもの。饂飩粉』


「なんだぜ、饂飩粉(うどんこ)か。これで五百乃大角(いおのはら)がやりたがってた、奇祭(まつり)出来(でき)るんだな?」

 うどん……(たこ)のうどんか?

 うまそうではあるな。


「はい。本日使(ほんじつつか)(ぶん)として、これだけ(おろ)させて(いただ)きますわ、くーすくす()

 小商(こあきな)いのときのこの(かお)も、(いた)について来やがったなー。

 ふぉん♪

『シガミー>わかった。迅雷に書き付けといてくれ』


 神域惑星(しんいき)で採れた(もの)は、基本的(きほんてき)猪蟹屋(ししがにや)(もの)だ。

 それでもそれを(あつ)めたり、食えるようにしたりするのは――

 中々(なかなか)(ほね)が折れる。

 この饂飩粉(うどんこ)にかけた手間(てま)時間(じかん)は、たぶんおれが(おも)ってるより価値(かち)(たか)い。

 そういうわけで、その価値(しごと)迅雷(ジンライ)(つた)えて残しておくこと(・・・・・・・)になっている。

 おれがみてもわからねぇが、女神像(めがみぞう)(なか)にある小日記(かきつけ)は我が猪蟹屋(ししがにや)の〝(すべ)て〟だって(はなし)だ。


「それでは、この(わたくし)(あつ)めた小麦(こむぎ)……饂飩粉(うどんこ)(もと)になる実を、(こな)になるまで挽いて(・・・)いただけますか? うふふ()

 おれにさせるってことは、それが(こま)かくて丁寧(ていねい)で――

 とんでもなく、面倒(めんどう)仕事(しごと)って証拠(こと)だ。

 それでも、おれのスキルにかかれば、一瞬(いっしゅん)出来(でき)ちまうんだけどな。


「では、この饂飩粉(うどんこ)(もと)を――」

 ひと袋抱(ふくろかか)えて――ぐるるんっ――どっさりっ♪

小麦粉(こむぎこ)とやらに替えた(・・・)(もの)が、こちらで御座(ござ)いますわぜ?」

 厨房(いたば)に置かれた銀色(てつ)の……まるで(かがみ)みてぇな作業台(さぎょうだい)

 その(うえ)に置いた小麦粉一袋(こむぎこひとふくろ)を、ぽふんと(たた)く。


 ぼっふぁぁっ――――!!

 あー、迅雷(ジンライ)式隠(しきかく)(みの)きめ(・・)を、もっと(こま)かくしねぇと(こな)が吹き出すぞ?

 和紙(わし)みたいな、一番(いちばん)きめ(こま)かな布袋(ふくろ)にまるごと――ぼすんと入れる。

 そして目の(あら)布袋(ふくろ)を――すぽんと、収納魔法(しゅうのうまほう)仕舞(しま)った。


「はいこれで、たこ焼きパーティー(・・・・・・・・・)準備(じゅんび)()出来(でき)ましたわ、くすくすくす()

 いま「()」って言ったか?


「ってこたぁ(ほか)にも(なに)か、準備(じゅんび)が要るのかぁ?」

 (たこ)(した)ごしらえも済んだし、霊刺秘(レシピ)食材(しょくざい)(あつ)まっただろーが?


 ふぉふぉん♪

『>奇祭タコパに関するインフォメーションが、更新されました」

 五百乃大角(いおのはら)の持つ文献(ライブラリ)(あさ)っていた迅雷(ジンライ)が、ヴォヴォヴォォゥンと寄ってきた。

 解析指南(かいせきしなん)調子(ちょうし)(かんば)しくないから、もう一度(いちど)奇祭(タコゥパ)概要(あらまし)(あら)い出してもらっていたのだ。


 ふぉん♪

『>カヤノヒメによる妙齢の女性、その心の機微を算出、解析しました』

 おう、大体(だいたい)で良いぞ。

 さすがに何時間(なんじかん)も待たせるわけには、いかねぇからなぁ。


 きゃはははっははっ――♪

 ふふうふ、ニャァ♪

 がやがや、ざわざわ♪

 手伝(てつだ)いを買って出てくれた、いつもの連中(れんちゅう)料理自慢(りょうりじまん)村人(むらびと)学者方(がくしゃかた)たちが――

 集会所(となり)で待ち(かま)えているのだ。


言語(げンご)(かン)スるスキルヲ数種収得(すうしゅシゅうとく)シ、カつノヴァドに特殊(とクしゅ)(キり)刷毛(はケ)製作(せいサく)追加依頼(ついかイらい)スる必要(ひつヨう)がありマ()

 なんだぜ。(ちょう)めんどくせーじゃんか!


「はイ。煩雑(はんザつ)複雑(ふクざつ)経緯(けイい)存在(そんザい)すル以上(イじょう)、それを紐解(ひモと)くタめには――煩雑(はんざツ)複雑(フくざつ)手順(てじゅン)ガ、必要(ヒつよう)になりマ()

「わかった。それ全部(ぜんぶ)やってやろうじゃんかぁ!」

「ププークス()


   §


「やい、五百乃大角(いおのはら)! (むか)えに来たぞ!」

 落ちたら強化服(シシガニャン)でも、死にはぐるほどの(たか)さだが。

 鉄下駄(てつげた)で木の(みき)を、駆け上がったら――

 1(ぷん)もかからず到着(とうちゃく)した。


「もぐもぐもぐもぎゅぎゅりっ――ヒハヒーッ!?()

 馬鹿野郎(ばかやろう)折角(せっっかく)、お(まえ)さまのやりたがってた奇祭(タコゥパ)を、開催(かいさい)してやるってのに――


「ガムラン饅頭(まんじゅう)(はら)を、(ふく)らませてるんじゃねぇーよ!」

 おれはガシガシと(あたま)を掻く。


「わ――(わる)かったぜ。お(まえ)さまが、日の(もと)言葉(ことば)書くことが苦手(・・・・・・・)だなんて、(おも)いもよらなくてよぉ!」

 おれは轟雷(おれ)があけた、大穴(おおあな)(かべ)に――


『Состоится вечеринка”Такояки”.』

 たこ焼きパーティー、開催(かいさい)のお知らせ――がりがりがり、ごりごりごり♪

 そう小太刀(こだち)(きざ)みつけた。

『Дата и время проведения/』

 開催日時(かいさいにちじ)/――がりがりごがり♪

『с сегодняшнего дня!』

 本日(ほんじつ)これから!――がががりごごり♪


「お(まえ)さんの奇祭(タコゥパ)に掛ける心意気(こころいき)を、無下(むげ)にしちまって(わる)かったぜっ!」

 (あたま)を下げるも――五百乃大角(いおのはら)(もっぎゅ♪)は止まらない。


『Иди сюда, Ионо.』

 来てね、イオノちゃん♡――がががりーごごーり♪


坊主(ぼうず)……もぎゅもぎゅ、ひょうひほひはひほふ()

 お(まえ)いい加減(かげん)にせぇよ?

 おれは饅頭(まんじゅう)紙箱(はこ)を、取りかえした。


何言(なにい)ってるかわからん。とにかく行くぞ! ノヴァド特製(とくせい)

鋤鍋(すきなべ)使(つか)(かた)が、(だれ)にもわからなくて(・・・・・・)難儀(なんぎ)してんだっ!」

 (ふところ)根菜(イオノちゃん)をしまい、おれは大穴(おおあな)から飛びおりた。


「も、もぉーしょぉがないなぁ♪ タコヤキイオノちゃんのぉー、出番(でばん)ねぇー()

 ふぅ、どうにか機嫌(きげん)(なお)してくれたぜ。


   §


(ちが)う! これぇ、あたくしさまが知ってるタコヤキを焼く鉄板(・・・・・・・・・)とぉ、(ちが)ぁーうぅ()

 驚愕(きょうがく)根菜(こんさい)さま。


「バカ言っちゃいけねぇぜっ! こちとら注文通りに(・・・・・)、キッチリと仕上(しあ)げたぞ! 美ぃのぉ女神(めぇがぁみぃ)さぁーまぁー((わらい))よぉう!?」

 やべぇ、酔った工房長(ノヴァド)金槌(かなづち)を取りだした!


「そうだぜ!? 蛸の形の凹み(・・・・・・)(なら)んでて、ちゃんと一度(いちど)沢山焼(たくさんや)けるだろうよ――蛸が(・・)!」

 (なん)問題(もんだい)があるんだぜ!?


「タ、タコヤキをひっくり(かえ)鉄串(てつぐし)と、(あぶら)をひく丸刷毛(まるはけ)まで用意(ようい)してあるのに――な・ん・でぇ――タコヤキ鉄板(てっぱん)(かたち)がぁ、蛸なの(・・・)!?()

 ふぉん♪

『イオノ>バカなのっ? 死ぬの?』


「うるせぇ! 〝たこ焼き(・・・・)〟を焼く鉄板(かた)(たこ)(かたち)をしてて、(なに)(わる)ぃってんだっぜ!」

 ふぉん♪

『シガミー>蛸とか葱とか、投げるんじゃねぇ!』


 惡神(わるがみ)めっ!

 おれが手ずから、退治(たいじ)してやらぁっ!

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