表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

483/743

483:ネネルド村奇譚、魚のたまごと王子さま

「「「「これはとんだご無礼(ぶれい)を。お(ゆる)しくださいませ、イオノファラーさま!」」」」

 やっと(さかな)(たまご)さまを美の女神(いおのはら)認識(にんしき)した、タター一家(いっか)御神体(ごしんたい)へかしずいた。


「良いのぉよぉーん? そんなことよりさぁー、(もの)わぁ相談(そーだん)なんだけぇどぉさぁー()

 (おお)きな(つつ)みの(うえ)からタターたちを見下(みお)ろす、おいしげな御神体(いおのはら)

(なん)でしょうか?」

 タター(ちち)が組んだ手から、(はな)を持ち上げた。


(さかな)(たまご)ぉさまわぁー、いまの時期(じき)にぃー獲れる(・・・)のぉーかぁしぃらぁぁん()

 食い道楽(どうらく)(ため)存在(そんざい)する、この女神御神体(めがみごしんたい)さまが――

 言い出さないはずはないのだ。


「いえ、時期(じき)ではありませんが。なぁ村長(そんちょう)?」

「そうですなぁ……(さかな)(たまご)がよく獲れるのは、(さん)(げつ)ほど(まえ)ですじゃ」

 銀色(ぎんいろ)冒険者(ぼうけんしゃ)カードを取りだして、チラリと見る村長(そんちょう)

 冒険者(ぼうけんしゃ)カードの紋章(もんしょう)が書かれた(めん)には、現在時刻(げんざいじこく)簡単(かんたん)(こよみ)などが書かれているのだ。


 村長(そんちょう)現役(げんえき)冒険者(ぼうけんしゃ)らしいな。

 銀色ってことは、LV20から39(そこそこのてだれ)

 おれもレイダも銀色(ぎんいろ)のを持っている。


 リオレイニアやルリーロやエクレアやノヴァド。

 ここに来てる連中(れんちゅう)は、だいたいみんな金色(きんいろ)

 そういやタターは、どうしたんだったか。


 ふぉん♪

『>今現在、タターは冒険者登録済です』

 そうだった。学院(がくいん)通路(つうろ)(さき)

 おっちゃんが居たギルド出張所(しゅっちょうじょ)で、済ませたんだったな。


 才能(さいのう)はありそうだし、(ここ)登録(とうろく)してなかったのが、すこし気になるな。

 神々(かみがみ)使(つか)黒板(タブレット)青板(スマホ)とも(ちが)う、古代(こだい)魔導工学(まどうこうがく)により運用(うんよう)されている。

 女神像(めがみぞう)(かい)生成可能(せいせいかのう)な、唯一(ゆいいつ)現存(げんぞん)するアーティファクト。

 ってわけで、女神像(めがみぞう)の検索(スキャン)してくれ。


 ふぉん♪

『>位置情報は収得済ですが、巨木の幹の中心にあり詳細な座標を得ることが出来ません』

 よりにもよって神力(しんりょく)(うば)()に、埋もれてるのか。

 どうりで女神像(めがみぞう)狙って扉を繋いだ(・・・・・・・・)茅の姫(ホシガミー)が、巨木(きょぼく)中心側(なか)から姿(すがた)(あらわ)すわけだぜ。


「あら、そうわの? みんながあたくしさまを「おいしそう」と褒め(たた)えるものだから、こってり(・・・・)しましたわぁ。いまが(あぶら)が乗った(しゅん)なのかと(おも)いましたよぉーお()

 (たまご)(あぶら)は、乗らんだろうが。


「あー、えー、まー、水揚(みずあ)げは皆無(かいむ)ですが……この時期(じき)(まん)(いち)魚の卵(・・・)が獲れた場合(ばあい)――」

 む、タター(ちち)歯切(はぎ)れが、(わる)くね?


「――その(たまご)(あぶら)が乗っていて、とてもとてもそれはそれはぁお・い・し・い……らしいですよぉー?」

 タターがタター(ちち)言葉(ことば)を引き継いだが、食べたことは無いようだ。


 やはり自分(じぶん)冒険者(ぼうけんしゃ)カード(木製(もくせい)LV(レベル)1~19)を取りだして、(こよみ)確認(かくにん)している。


 ふぉん♪

『>話によるなら、ちょうど今が〝魚の卵〟に脂が乗る時期であるようですね』

 (たまご)なのに脂が乗る(・・・・)だとぉ?

 (さかな)(たまご)ってこたぁ、(さかな)(はら)に詰まってるわけで。


「ふぅんぅー? さすがわぁ異世界(いせかい)生態(せいたい)整合性(・・・)が感じられませんよぉおぉぉぉーん()

 じゅるるりっ――きたねぇな。よだれを垂らすな。

「そうだなぁ……(たまご)を産んじまうと、身に(あぶら)なんぞ(のこ)ってねぇだろ?」

 どうもおかしい。


(なに)はともあれ「(みず)あげが皆無(かいむ)」ということは、(いま)時期(じき)でもお(さかな)(たまご)を取りに漁に出ている(・・・・・・)のでしょう()

 (おお)きな(つつ)みの(うえ)から御神体(ごしんたい)さまを持ち上げる星神(ほしがみ)にして、おれの姉役茅(あねやくかや)(ひめ)


「そうだな、おれが強化服(シシガニャン)で水に飛びこ……めねぇんだった。じゃぁ、轟雷(ごうらい)(しず)んで水底(みなそこ)をさらえば、(さかな)一匹(いっぴき)くらい朝飯前(あさめしまえ)だろ」

 (こし)(かわ)ベルトに、(ゆび)を突っ込んで位置(いち)(なお)す。

 このベルトにネジ止めした収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)には、回収(かいしゅう)した強化服(きょうかふく)10号改(ごうかい)轟雷(ごうらい)格納済(かくのうずみ)だ。

 もう一度出(いちどだ)すだけで、(こわ)れた(ところ)はあらかた繕われる(・・・・)


是非(ぜひ)とも今晩(こんばん)のおかずに、(くわ)えたい(ところ)ですね……王族(おうぞく)方々(かたがた)もいらっしゃる手はずになっていますし……プークス()

 まてまて星神(ほしがみ)まて――(いま)なんて言った?


「カヤノヒメさま、いままなんと(おっしゃ)りましたか?」

 さすがに(いま)重大発言(じゅうだいはつげん)を、白眼鏡(リオレイニア)が聞き逃すはずはない。

是非(ぜひ)とも「「今晩(こんばん)のおかずに(くわ)えたい」」と()

 (さかな)(あたまご)……いや、ややこしいから根菜呼(こんさいよ)ばわりするが――


「やかましい根菜(こんさい)め! 王族(おうぞく)方々(・・)って言ったろ? 言ったよな?」

 姉役(カヤノヒメ)に詰めよる。

 王族(おうぞく)()って言うなら、いつものように〝ラプトル第一王女(だいいちおうじょ)殿下(でんか)〟が、お忍び(・・・)(かお)を出してくれただけのことで済む(・・)


「どうしたのよ(あわ)てちゃって。王族(おうぞく)ぅーって言っても、どうぜラプトル(ひめ)さ――方々(かたがた)()

 ふぉん♪

『イオノ>カヤノヒメちゃん、あたくしさまを持ち上げて、高らかに!』

 ちかくの椅子(いす)を引き、(くつ)を脱いで(のぼ)(かや)(ひめ)


「こほん♪ それわぁ大変(たいへん)ねぇぇぇぇー! ほら、お料理(りょうり)とかさぁ。その(くだん)(あぶら)がのった、お(さかな)のお(たまご)さまとかさぁ、お出ししないわけにわぁー、い・か・な・く・な・り・ま・し・た・よ・ねぇーん? じゅるりっ()

 してやったりの御神体(あたくしさま)

 たしかに、王族(おうぞく)複数来(ふくすうく)るってことは、正式(せいしき)視察訪問(しさつほうもん)で。

 気心(きごころ)が知れた辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)が、使用人(しようにん)故郷(こきょう)(たず)ねるのとは(わけ)(ちが)ってくる。


 名産中(めいさんちゅう)名産(めいさん)らしい魚の卵(そいつ)が獲れちまったら、出さないわけにはいかんだろう。


「はぁぁぁー、あのう?」

「はぁい? タターちゃぁん♪」

 ルリーロが、少女(しょうじょ)メイドをみやる。

(いま)水が深いから(・・・・・・)(たまご)は獲れるはずです」


「聞いたシガミー? それでお(あじ)は、お(あじ)(ほう)は!? どーなのぉんっ!?()

 がっつくな。それ、(かり)にも美を謳う奴(イオノファラー)言動(げんどう)じゃねーから。

「どーなの……ですか?」

 とタターに見つめられた、(むら)大人(おとな)たちが途端(とたん)閉口(へいこう)した。


「な、(なん)と言えば良いのか――のぅ?」

 苦悩(くのう)する村長(そんちょう)

「うまかったとしか――なぁ?」

(つた)えようがないわね?」

 タターの両親(りょうしん)たちも、同様(どうよう)様子(ようす)


(わたし)は食べたことがありませんが、むかし獲れたときには央都(おうじょう)献上(けんじょう)したと聞いています」

 とは村長(そんちょう)孫娘(まごむすめ)(だん)


 たしかに食べたが、言葉(ことば)にならない――だと?

 なんか引っかからんでもねぇな。

 言葉(ことば)にならない(もの)は、たしかに有る。

 あるが――


 どやどやどや、がやがやがやややっ♪

 (かんが)えごとをしてるときに、騒々(そうぞう)しい。

 まだ村人(むらびと)が、(あつ)まって来ちまったか。

 騒々(そうぞう)しさに振り向けば――


「なんですか、これまさか(もく)()ェーッ!? ひょっとして……馬鹿(ばか)みたいに(おお)きな木ぃ――!?」

 茅の姫(ホシガミ)が来たってことは、来ようと(おも)えばみんな来られるわけで。

 学者連中(がくしゃれんちゅう)先陣(せんじん)は――巻き(づの)の、頭突き女(・・・・)だった。

 ふぉん♪

『人物DB>モゼル・マトン

      魔術研究所兵站線課第一班所属』


「あらあら(わたくし)としたことが、「どうしてもついて来たい」と(おっしゃ)られた第一陣(だいいちじん)をお連れしたのを、すっかり(わす)れていましたわっプフーッ()

 惡神(わるがみ)(かや)(ひめ)め。神域惑星(しんいき)(つな)がる(にじ)(ぐち)を、開けたままにしやがったな。

 (はえ)(はえ)ぇぞ、(なん)用意(ようい)出来(でき)てねぇ!


「おやぁ、ティル見たまえ。タター(くん)(ちぢ)んでしまっているぞ、(なん)(あい)くるしい♡」

 学者方(がくしゃかた)に混じって、王子殿下(おうじでんか)も来ちまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ