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482/743

482:ネネルド村奇譚、躙り口とタター家

 女神像(めがみぞう)場所(ばしょ)を聞こうと、村長(そんちょう)(さが)してたら――ヴュゥゥゥゥンッ♪

 なんでか突然(とつぜん)絵で板(エディタ)空中(ちゅう)を〝切りわけるとき(・・・・・・・)みたいな格子(・・)〟が(あらわ)れた。


「「「ぎゃぁっ!?」」」

 格子(・・)(ちか)くに居た村人(むらびと)たちが、(あわ)てて逃げてくる。


 ふぉん♪

『>作成した住居と住居の間の壁が、空間矩形選択されています』

 だな。五百乃大角(いおのはら)がなんかしたか?

 振り(かえ)り、魚の卵(うまそうなの)(さが)す。

 いや(やつ)はムシュル(がい)を、つまみ食いするのに(いそが)しそうだぜ?


 チキッ――バッガァァン!

 (かべ)爆発(ばくはつ)し、木屑(きくず)(かぜ)(なが)される。

 (あらわ)れたのは、えらく(ちい)せぇが……(とびら)か?


 ゴドン――ガチャチャリ♪

 (それ)複雑(ふくざつ)に、こっちへ向かって(ひら)いた。


「あら、みなさまお(そろ)いで、くすくすす()

 (なか)から(あら)れたのは――おれそっくりな猫耳(ねこみみ)メイド。

 (とびら)さえ有るなら、どこへでも……いや、とうとう(とびら)がなかった(ところ)にまで(つら)を出しやがった。


 村人(むらびと)たちに一斉(いっせい)に見つめられても、(どう)じない胆力(たんりょく)は――

 さすがは、(かみ)なのかもしれないが。


「やい、いきなり爆発(ばくはつ)したら、(あぶ)ねぇだろうが?」

 (さき)格子で括った(・・・・・・)のは、〝人が居るかど(・・・・・・)うかを探った(・・・・・・)〟ってことなんだろう。

 けど(あぶ)ねぇことに、かわりはねぇ。


 猫耳メイド(かやのひめ)中腰(ちゅうごし)になり、じりじりとこちらへ出てきた。


「ネネルド(むら)(みな)さま。(おどろ)かせてしまって、ごめんなさい。(わたくし)はカヤノヒメ。そこに居るシガミーの縁者(えんじゃ)……家族(かぞく)ですわ。以後(いご)見知(みしり)りおきを、くすくすす()

 実際(じっさい)(からだ)はほとんど(おな)じだから、家族(かぞく)みたいなもんではある。

 (なに)よりそう言った方が、通りが良い(・・・・・)


 ふぉふぉん♪

『ホシガミー>なにやら楽しそうな予感がしたのでネネルド村近郊の、この女神像へ繋げたのですわ、プークス♪』


 ヴォォゥン♪

 一行表示(ティッカー)(つづ)いて(あらわ)れた小窓(こまど)は、おれや迅雷(ジンライ)五百乃大角(いおのはら)にしか見えないものだ。

 そこに表示(ひょうじ)されたのは、神域惑星(しんいき)にある御神体像(メガミぞう)

 その背中(せなか)に付いた、(ちい)さめの(とびら)

 アレ(あれ)をどこにでも(つな)いで、どこからでも出てくるようになっちまった。


 いやまて……よく見れば、(ぞう)両肘(りょうひじ)(あいだ)何か有るぞ(・・・・・)

 敬虔(けいけん)なイオノフ教信徒(きょうしんと)のように、組んだ手の(した)あたり。

 そこには(さら)(ちい)さな(とびら)が、増設されていた(・・・・・・・)


 ふぉん♪

『ホシガミー>ちょうど良いスペースがありましたので、もう一つ接続先を設定しましたわ♪』

 (とびら)だらけになっちまった五百乃大角(いおのはら)(ぞう)は――

 多少(たしょう)(あわ)れに(かんじ)じなくもない。


 背中(せなか)(とびら)は、央都(おうと)大講堂(だいこうどう)接続(せつぞく)されている。

 そして(むね)(あた)りに(つく)られた、それよりもさらに(ちい)さな――

 まるで草庵茶室(そうあんちゃしつ)の、(にじ)(ぐち)みたいな(とびら)

 それをこのネネルド(むら)(つな)いで、さっそく面白い様子(・・・・・)見物(けんぶつ)に来やがったってわけか。


 ふぉん♪

『ホシガミー>神域惑星の管理に際して、その全権を任されていますもの。見逃す手はないですわ、くすくす?』

 ぐっ、星神(こいつ)からしたら〝おれたちの面白(おもしろ)おかしい様子(ようす)見逃(みのが)さないこと〟と――

 神域惑星(しんいき)、つまりおれたち五百乃大角(いおのはら)一味(いちみ)全保有(ぜんほゆう)食材管理(しょくざいかんり)は――

 どっちも(たの)しくて、面白(おもしろ)おかしいってこと……らしいぜ。


「あれまぁ、どこから(あらわ)れたんだい?」

「シガミーちゃんに、そっくりだねぇー!」

「そうしたらシガミーちゃんの、お(ねえ)ちゃんかい?」

「こりゃまた姉妹(しまい)そろって、美人(びじん)さんだねぇ♪」

「「「「「うふふふふふふふっ、あははははははっ♪」」」」」

 だから(むら)女衆(おんなしゅう)がどんどん増えるのは、どいうわけだぜ?


 巨木(きょぼく)(みき)(がわ)から出てきた、〝女神(メガミ)料理番(りょうりばん)(あね)〟と言い張る小娘(こむすめ)

 そんな(あや)しげな(もの)を、ひとしきり(くび)をかしげて(わら)ったあとは――

 一切合切(いっさいがっさい)、呑み込んじまう――

 (きも)の据わりようったらねぇぞ?


 おい迅雷(ジンライ)。ネネルド(むら)(かん)して、調(しら)べられるだけ調(しら)べとけ。

 五百乃大角(いおのはら)がもつ〝この世界(せかい)(すべ)てが書かれた(とら)(まき)〟の一部(いちぶ)を、いまは見られるんだろぅ?

 ふぉん♪

『>希少食材や調理レシピ、装備クラフトレシピに限られますが?』

 たとえ(めし)装備作(そうびづく)りに(かん)する事柄(ことがら)に、限られていた(・・・・・・)としてもだ。

 ふぉん♪

『>了解しました』


「あらあらまぁまぁ、すいぶん沢山(たくさん)食材(しょくざい)ですねぇ、プークス()

 食材(しょくざい)(やま)をまえに、大鍋(おおなべ)をゴトリと置く。

「さぁ、では(なに)をお(つく)りいたしましょう? うふふふ()

 大鍋(おおなべ)にムシュル(がい)の剥き身や切った野菜(やさい)を、ぜんぶ入れちまう(おれ)(あね)

 あああもう全部入れちまったら(・・・・・・・・・)、よせ(なべ)くらいにしかならんだろうが。


「それにしても、村人(むらびと)さんがたくさん居ますねー、ププークス()

 茅の姫(ほしがみ)(まよ)いのない(なが)れるような手際(てぎわ)で、四角(しかく)小鉢(こばち)大量(たいりょう)(なら)べだした。

 これからますます(あつ)くなるって時分(じぶん)に……寄せ鍋(・・・)

 (あつ)いときの(なべ)も、おつ(・・)ではあるが?


 そして小鉢(こばち)をまえに、嬉々(きき)として計算魔法具(けいさんまほうぐ)(はじ)(はじ)めやがった。

 この小鉢(こばち)わぁ、冷てぇ菓子(・・・・・)を出すのに……使(つか)ってるやつだろ。


「この(むら)はタターの故郷(こきょう)だぞ? 間違(まちが)っても……守銭奴(しゅせんど)なまねはするなよ?」

 ぴくりと(からだ)(ふる)わせる、小商(こあきな)いが趣味(しゅみ)(かみ)

 大方(おおかた)熱々(あつあつ)(なべ)を食わせて、〝(つめ)てぇ菓子(かし)を売り込む魂胆(こんたん)〟だったんだろうな。


 ふぉん♪

『>そして、カヤノヒメ。アナタが〝接続〟したのは女神像ではありません。巨大な木の幹、その奥深くです』

 そうだぜ、うしろ見てみろや。お(まえ)さんが出てきたのは、すごく(ふと)くて(なげ)木だぞ(・・・)


「そんなはずは、プークス()

 振りかえる、星神茅(ほしがみかや)(ひめ)

 ふぉん♪

『シガミー>な? どこから見ても、木だろうが?』

 (くび)をかしげ合う、おれと瓜二(うりふた)つな(やつ)


 ふぉん♪

『>ですが、カヤノヒメの繋いだ神域惑星の扉は』

 ああ、超使(ちょうつか)える。正直(しょうじき)超助(ちょうたす)かる。

 また(かえ)りも馬車(ばしゃ)(かつ)いで、太鎖(ふとくさり)に引かれた日にゃ――

 央都(おうと)城壁(じょうへき)突き刺さる(・・・・・)に、決まってるからな。


   §


「どうも、(ちち)のルースターです」

「うふふ、(はは)のイフターです」

「えへへ、(いもうと)のジターだよ」

 タター一家(いっか:)をひきつれ、少女(しょうじょ)メイド・タターやレイダやおにぎりたちが(もど)ってきた。


「こんにちわぁん、ご無沙汰(ぶさた)してますわぁ――レーニアちゃぁん、(れい)(もの)おぉーお(わた)しぃーしーてーねぇーん♪」

 (おお)きな(つつ)みと(ちい)さな(つつ)みと、やたらと(なが)(つつ)みが長机(テーブル)に置かれた。


(はじ)めましてぇー。アナタの世界(せかい)のより(どころ)でぇーすーぅ。イオノファラーをしていますわぁ()

 (おお)きな(つつ)みの(うえ)颯爽(さっそう)と、ご登壇(とうだん)御神体(ごしんたい)


「やや、辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)さま!? なんと見事(みごと)(さかな)(たまご)か♪」

 興奮(こうふん)する、タター父(ルースター)

「あらあら、まぁまぁ。こんなにおいしそうなお(さかな)(たまご)は、見たことがないですよ♪」

 おなじく興奮(こうふん)する、タター母(イフター)


料理番(りょうりばん)の、シガミーだぜわよ」

INT(インテリジェンス)タレットノ、迅雷(ジンライ)()

 いちおう、おれたちも名乗(なの)ったが――

 それどころでは無いようだぞ?


「タター。今日(きょう)は、ご馳走(ちそう)ですよ♪」

「やったね、お(ねえ)ちゃん♪」

「えぇーっ!? みんな(ちが)うよ、それは魚の卵(ごちそう)じゃないよ? イオノファラーさまだよ!?」

 どうやら五百乃大角(いおのはら)は、この(あた)りでも(めず)しい食材(しょくざい)瓜二(うりふた)つらしいぜ。 


「おう、食えるもんなら、遠慮(えんりょ)なく食ってくれ!」

「こら、シガミー! 不敬(ふけい)ですよぉーん()

 ふぉふぉん♪

『イオノ>なんかさ、魚の卵さまさぁ。侮れなくね?」

 たしかに、ここまで(くち)(そろ)えて〝うまそう〟と言われると――

 おれも〝料理番(りょうりばん)〟の(はし)くれだし――多少気(たしょうき)になって来た。

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