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474/743

474:大陸間弾道卵の謎、ネネルド村直行便

「みんな居なくなっちまった……みてぇだが?」

 出かけるまえまで、あふれかえっていた学者方(がくしゃかた)がひとりもいねぇ。

 おれたちに飽きてくれたんなら、めでたいことだが。


「それが、奥方(おくがた)さまがネネルド(むら)まで飛んで、「この目でぇー見てきますわぁ♪」と言い出しまして――」

 コツコツコツ、キィー。

 壁際(かべぎわ)まで(ある)いていき、(まど)を開けるリオレイニア(メイドさん)

 おれと茅の姫(ほしがみ)も、(そと)を見た。


「――こうなった(・・・・・)わけか」

 ヴォヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥゥゥウン♪

 奥方さま(ルリーロ)魔法杖(つえ)が、いつまでも(うな)りを上げている。

 クルクルとねじれた山菜(さんさい)を、三本束(さんぼんたば)ねたような(かたち)

 その真ん中先端(なかせんたん)に付いた魔石(ませき)は、超女神像(ちょうめがみぞう)使用(しよう)した〝マナ宝石(ほうせき)〟に次いで巨大(きょだい)なもの。

 コントゥル家の家宝(かほう)にして、人類最大(じんるいさいだい)魔法攻撃力(MATK)(ゆう)している。


 そんな特大(とくだい)(つえ)黄緑色(きみどりいろ)魔物(まもの)四匹(・・)と、猫頭(びょうとう)顧問技師(ミャッド)その秘書(マルチヴィル)と――

 鉄塊(かなづち)(かつ)いだ小柄な男(ノヴァド)に、大盾(おおたて)背負(せお)った大柄な男(エクレア)と――

 (うま)(たかち)魔物(まもの)尻尾(しっぽ)にぶら下がる、少女メイド(ただのタター)


 わいわいわいわい、がやがやがやがや。

 それに学者(がくしゃ)たちが(むら)がり、(つえ)は浮かんだり(しず)んだりを繰りかえしている。


 魔法杖(まほうつえ)で跳ぶことに(かん)して、天才的(てんさいてき)才能(さいのう)を見せつけてきた辺境(ルリーロ・)(イナリィ)夫人(・コントゥル)

 その彼女(かのじょ)がそばに居て、浮かせているにもかかわらず――

 ガガガッガリガリガリィ――――!

 魔法杖(つえ)地面(じめん)に、めり込む始末(しまつ)


「ちょっとぉ、皆々(みなみな)さまがたぁー。これじゃ(わたくし)がぁ、乗ーれーなーいーでーしょーおぉーぅ?」

 かくいう妖狐(ようこ)ルリーロさまは、両手(りょうて)をだらりとぶら下げ――

 1シガミーほど空中(ちゅう)に浮き、自分の得物(ルードホルド)を……〝毛の(さき)ほども面白(おもしろ)くない見世物(みせもの)〟のように見つめている。


(つえ)も無しに、浮いてやがるぜ」

 妖狐(ようこ)といやぁ天狗(てんぐ)に負けず(おと)らず、〝跳ぶ(・・)〟生き(もの)(?)だと聞いちゃぁいたが。

 空中(そら)に浮く魔法(まほう)はある。

 リオレイニアが使(つか)う、重力軽減(ふわふわうかべ)の魔法(かるくなれ)がそれだ。

 けれども、あれはその場に止まっていられるわけじゃない。

 (とき)が経てば落ちていく。


 ふわっさぁぁぁぁぁっ――すいすいすぅぅうぅぃ。

 だが妖狐(ルリーロ)尻尾(しっぽ)を振り、山積みの連中(ルードホルド)(うえ)まで(およ)ぐように飛んでいく。


「それにしてもよう、リオレイニア?」

「どうかしましたか、シガミー?」

「この世……ガムランや央都(おうと)連中(れんちゅう)は、命知(いのちし)らずなのか(わる)ふざけが過ぎるのか――一体(いったい)どっちなんだぜ?」

 (かり)にも伯爵夫人(おくがたさま)に、この仕打(しう)ち。

 しかも相手(あいて)妖狐(ようこ)だぜ、()首落(くびお)とされても文句(もんく)は言えんだろ。


「ああ、それはですね――正当(せいとう)理由(りゆう)があるなら、奥方(おくがた)さまは怒らない(・・・・)からです。身分(みぶん)による礼節(れいせつ)はありますが、あくまで目的(もくてき)最優先(さいゆうせん)。この場における目的(もくてき)とは、なんですか?」

 おれの(しぶ)(かお)から、〝奥方(おくがた)さまとの距離感(きょりかん)〟についての説明(せつめい)をしてくれる。

 彼女(リオ)有能(ゆうのう)綺麗(きれい)で、指南役(しなんやく)としても完璧(かんぺき)だ。


目的(もくてき)だぁ?」

 そういや学者方(がくしゃかた)に追いかけられるのは、ミャッドの手前協力(てまえきょうりょく)しているだけで(べつ)仕事(しごと)じゃなかった。


「つい(さき)ほど決まったのですが――〝阿門戸粔籹(ヌガーバー)〟のスポット販売(はんばい)成功(せいこう)させ一過性(いっかせい)のブームに終わらせずかつ、(みな)さまの健康(けっこう)阻害(そがい)しないよう軽食(けいしょく)を出すお屋台(やたい)を出すことになりましたわっ()

 あー、それは目的(もくてき)じゃねぇ。


「ほら、やっぱり悪巧(わるだく)みをしていたではないですか」

 ふうと(いき)を吐く、美の権化(イオレイニア)

「いや、勝手(かって)に決めちまって(わり)ぃ。けど(かや)(ひめ)がどうしてもやりたいって言うから――」


「いえ(べつ)に、猪蟹屋(ししがにや)屋台(やたい)反対(はんたい)はしません。ぜひ(すす)めてください。それで、もう一度伺(いちどうかが)いますが、この場の目的(・・・・・・)とはなんでしょうか?」

 (しろ)眼鏡(めがね)が、(おな)(かお)おれたち二人(・・・・・・)を見つめる。


目的(もくてき)……あっ!?」

 入り(ぐち)に立てた看板(かんばん)が、(あたま)をよぎる。

(たまご)(ねら)いと出所(でどころ)把握(はあく)です()

 そう、そいつだったぜ。


「そうです。(つえ)(むら)がる(みな)は、その目的(もくてき)に向かって邁進(まいしん)しています。コントゥル家の家訓(かくん)合致(がっち)する以上(いじょう)(おこ)道理(どうり)がないと言うことです」

 (よど)みない解説(かいせつ)、伸びた背筋(せすじ)(すず)やかな(こえ)


「にしても……ありゃ」

 ガガガッガリガリガリィ――――!

 なおも魔法杖(まほうつえ)は、地面(じめん)にめり込む始末(しまつ)

 ふぉん♪

『>アーティファクトでも有る〝ルードホルドの魔法杖〟が、壊れることはありません』

 うん、(ひさ)しいな迅雷(ジンライ)

 強化服二号(レイダ)(みみ)一瞬(いっしゅん)、おれを見た。


「コントゥル家の家訓(かくん)は、もう(ひと)つあります」

 もうひとつ?


 メイド(ふく)(こし)(さぐ)るリオ。

 取り出されたのは、(ひら)たい小箱(こばこ)

 パカリと開けられたそれには――

 (なん)らかの呪符(じゅふ)(はり)(いと)包帯(ほうたい)、そして蘇生薬(エリクサー)

 そんな(もの)(おさ)められていた。


「〝なにがあっても、領民(りょうみん)は死なすな〟です」

 つまり魔王殲滅(まものせんめつ)全員生還(ぜんいんせいかん)が、魔物境界線(まものきょうかいせん)であるコントゥル(りょう)最優先(さいゆうせん)

 (いのち)(かる)いが、反魂(はんごん)(じゅつ)である蘇生薬(エリクサー)があると、(ひと)の世はこんな(ふう)になるんだな。

 本当(ほんとう)面白(おもしろ)い世の(なか)で、おれは五百乃大角(いおのはら)(ひろ)われたことを――

 (こころ)(そこ)から感謝(かんしゃ)し――


「こぉらぁ――――! そろそろいい加減(かげん)にしないとぉー、(おこ)りますわよぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅっ――――ココォォォォォンッ♪」

 (あたま)から生えた(きつね)(みみ)(ふる)え、遠吠(とおぼ)えが(とどろ)いた。


 ぼぼぼぼぼぼごごごごごごごぉぉぉぉぉぉぉぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――♪


 わきあがり、(つえ)(むら)がる連中(れんちゅう)(つつ)巨大(きょだい)(あお)火柱(ひばしら)

 燃やされても、(あつ)くはねぇが――怖気(おぞけ)がする狐火(きつねび)


 ああああ。面白(おもしれ)ぇが、こりゃいけねぇ。

 迅雷(ジンライ)、みんなを乗せて飛ぶ方法(ほうほう)(かんが)えてくれや。

 ふぉん♪

『>そうですね。ネネルド村近郊に一件の女神像検出。

  直接、人員を搬送することは可能ですが』


 うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 阿鼻叫喚(あびきょうかん)、ケッタケタケタケタケタッ――――♪

 (たの)しそうだぜ。


「か、家訓(かくん)も、(とき)場合(ばあい)機嫌(きげん)によりけりということですね――――奥方(おくがた)さまーっ!」

 自分(じぶん)(おお)きい(ほう)(つえ)を取りだして、(まど)からすっ飛んでいく元侍女長(リオレイニア)


 にげろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!

 散り散りに逃げていく、(つえ)(たか)っていた連中(れんちゅう)

 ヴォォオォゥン♪

 (つえ)高度(たかさ)を取りもどした。


 (ほのお)に巻かれても平気(へいき)黄緑色(シシガニャン)子馬(こうま)たち、そして大柄(おおがら)甲冑(かっちゅう)と――

「わわっ、きゃぁぁぁぁっ!? あれ、(あつ)くない? むしろ(さむ)い!?」

 子馬(こうま)の尾に(から)まり逃げられない、少女(しょうじょ)メイド・タターが(のこ)った。

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